第013話:温泉街の再興と、女神への写像送信
「うお〜! アキラ様! このドワーフ風ローストビーフ、お肉が分厚くて、地酒のソースが最高に合いますわ!」
お風呂上がり、宿の広間で用意された宴席で、フィリアはジョッキを片手に大はしゃぎしていた。
温泉が復活したことで、街の機能は一瞬で元に戻り、宿『金槌と湯煙亭』の主人からは「命の恩人をもてなせ!」と、テーブルから溢れんばかりのご馳走が提供されていた。
「アキラ、あーん」
エルナはお風呂上がりの涼しげな薄手のローブ姿で、アキラのすぐ隣に座り、お肉をフォークで彼の口元へと差し出している。
アキラが素直にぱくりと食べると、エルナは「ふふ、おいしい?」と嬉しそうに目を細めた。
「うん、美味しいですね。温泉の後の肉料理は格別です」
「よかった。アキラがいっぱい食べてくれると、エルナも嬉しい」
アキラは冷たい地酒を喉に流し込み、ドワーフたちの楽しげな歌声が響く宴会の空気をお気楽に満喫した。
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翌朝。
バルカンの街は、朝早くから温泉宿へ向かう観光客や冒険者たちの活気で満ちあふれていた。どこの宿からも白い湯煙が立ち上り、ドワーフの職人たちが元気よく槌を振るう音が街に響いている。
「よし、それじゃあ、今回の観光マップを納品しようか」
アキラは展望台から、活気を取り戻した温泉街の全景と、その手前で並んで笑顔を見せるフィリアとエルナの姿を『写像水晶』でパシャリと撮影した。
お風呂上がりのみずみずしい肌の二人と、青空にたなびく温泉の白い煙。観光ガイドの表紙にできそうな見事な写像だ。
【写像:『再興したバルカン温泉郷』を保存しました】
【女神リアへ送信しますか? [はい]】
送信ボタンをタップすると、すかさずリアからの通信ホログラムが目の前に飛び出してきた。
『リア:アキラさん! 温泉! 露天風呂! しかも美少女二人と混浴ですか!? 許せません! 今すぐ神界の仕事をボイコットして、私もその乳白色のお湯にダイブします!』
「ボイコットは社会人としてどうかと思いますよ……。あと、ドワーフのビールとローストビーフも美味しかったですよ」
『ビールとローストビーフ!? ああっ、もう私のライフはゼロです! アキラさんの意地悪! 有給! 有給をください教皇様ーーーっ!』
頭を抱えて神卓の上で転げ回る駄女神の姿を、アキラは「有給申請、通るといいですね」とだけ言って、ぷつりと通信を切った。
「アキラ、つぎは、どこにいくの?」
エルナがアキラの服の裾をぎゅっと握りながら、上目遣いで聞いてくる。
アキラはデバッグマップを起動し、南の方角を指差した。
「次は南の『商業・海洋国家マリーナ』だね。海が綺麗な港町だから、美味しいシーフードが食べられるはずだよ」
「マリーナ! 海の精霊たちも『美味しい魚がたくさんあるよ』と歌っていましたわ! 楽しみです!」
フィリアも荷物を背負い直して目を輝かせる。
アキラたちはバルカンの人々に見送られながら、潮の香りが漂う南の海へと向けて、のんびりと歩き出した。




