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S.6コクナの変化

やばい、とてもやばい。コクナを書いてるととても楽しいです。

 ダンジョンを出たユノは、半ば倒れかけたが何とか耐えて、1度川が流れていない岩の上にコクナを降ろした。

 ユノは、回復魔法の下の上が使える。これで何とか、手首の止血ぐらいはできる。3分かけてやっとコクナの手首から血が止まった。

 回復魔法の下は基本、止血か痛みを和らげる事ができ、骨が完全に折れてはいない骨折なら骨を何とか繋げられる。

 だが、痛みを和らげる時間は魔法をかけた倍の時間のみで、止血は軽い衝撃でまたすぐに出血する。それに、どちらか一方の効果しかかけることができず、骨折も治したはいいが軽い衝撃でまた折れてしまうなんて事は多々あるのだ。

 その為、使い勝手が悪い。だから、基本的に回復魔法は中を使えないとあまり役に立たない。

 止血した後は、骨折を出来るだけ治していった。治し終わると、ユノはコクナを抱き、幽谷の底を進み始めた。10分で来た道を慎重に歩き30分ぐらいかけて、幽谷の中間へと戻って来た。だが、ここからどうするか…コクナは今動けるか?いや無理だ…。なら、どうする?


「うぅぅ」


 コクナは悪い夢でも見ているのだろうか。魘されている。

 たとえ今、コクナが目覚めたとしても、この幽谷の崖は登れないだろう。コクナがいくら勇者であろうと、この崖を登ればまた骨折した場所が折れるだろうし出血する。

 幸いこの幽谷の底は、モンスターの気配がない。だが、コクナを放置する訳にも行かない。


  ——さぁ、どうするか?——


 ユノは約3分熟考して1つの結論を出した。それは、上に登れば馬車があるはずだ。そこまで行けばひとまず帰る事が出来るはず。ならば、ここでうだうだしているよりも速く崖を登って、王国に帰った方がコクナはまだ助かる。なら、と…。

 コクナをもう1度地面に降ろしたユノは、自分の懐からマジックアイテムを出し、その中から使っていない服を出し破く。それをコクナの手首にしっかりと強く縛り、回復魔法をかけた後でもう一度抱き抱えた。

 そして、ユノは幽谷の崖を慎重にだが素早く登って行く。そう、ユノは出血が前提で…また骨が折れる事が前提でコクナを抱き一緒に登る。

 手首には、痛みを和らげるための回復魔法を2分ぐらいかけた。そうなれば、約4分でこの崖を登らなければならない。

 登り始めて2分。ちょうど真ん中辺りだが、コクナの手首がまた出血し始めた。だが、それを気にしていてもコクナが苦しくなるだけだ。このまま行けば間に合うはずである。

 だから、と…。ユノは何とか力を振り絞り、心の中で叫びながら登って行く。どうやら体はとうに限界だったらしい。

 全身が痛み出し、体全体が悲鳴をあげている。だが、ここで諦めれば2人仲良く幽谷の底に落ち、ただの死体になるだけだ。まだ、コクナが助かるのなら、そんな事に絶対なりたくないのだ。だから、だから、と…。

 やがて太陽の光が強くなる。ああ、やっとだ。

 ユノは死に物狂いでロープから地面に手を伸ばし、最後の力を入れて幽谷の崖っぷちを蹴り、登りきった。

 その後、ユノはコクナを地面に寝かせ手首に回復魔法をかけて、止血する。服で縛ったおかげであまり酷くはないが、次はおそらく危ないだろう。

 止血の次に、骨折を治そうとしてユノの視界が霞んでくる。

 それはそうだ。体はすでに限界で、悲鳴をあげていた。だが、それでも酷使したからだろう。だんだんと力が抜けていき、体が重力に負けユノの意識は真っ暗闇に染まり途絶えた…。



 ♠♣️




「ゔぅ…。ここは?」


 コクナは1度目を開けたが、太陽の光が強く、また目を閉じる。

 体全体が痛く、思うように動かせない。少しでも動けばどこからともなく激痛が襲い、体全体に響くのだ。

 それに加え、右手首の感覚が完全になく、少し肘に近づくと、何かに締め付けられている感覚がある。

 それから少し落ち着いて、コクナはゆっくりと目を開けた。

 どうやら、首だけを動かすのは痛いには痛いが、体を起こそうとするよりは何倍も楽だ。コクナは、右、左と辺りを確認する。

 右は、幽谷の崖があった。ユノがここまで運んでくれたのだろう。だが、ここで自分は置いて行かれたのだろうか?という不安が襲って来た。

 このまま右に転がれば、この崖に落ちて楽になれるだろうか?何故だろうか、そんな考えが頭の中にこだまして、だんだんと死にたくなってくる。

 だが、ここで待っていればユノが来てくれるかもしれない。そう思い、何とか踏みとどまる。

 そして、コクナは左に首を向けた。するとそこには、ユノが倒れていた。その姿を見た途端に、何故だろうか…どこかで頭でも打ってしまい、おかしくなったのだろうか。目から涙が零れた。

 ユノがいて安心したからか、それとも自分をここまで気にかけてくれるのが嬉しいのか、それとも…。コクナは無意識のうちに、左手でユノの頬を触っていた。こうしていると痛みが無くなる。そして、コクナはユノに向けて


「ユ…ノ。ふふ…どう…や…らな…わた…し…は……」


 だがコクナは、言葉を最後まで言えなかった。まあ、無理もないだろう。痛みを感じていないだけで体は限界だ。骨がところどころ折れ、右手首欠損で貧血状態。コクナは唐突に意識が飛んだ。



 ★



 ユノが目覚めたのは夕方だった。辺りがオレンジ色に染まっており、コクナはまだ意識が戻っていないらしかった。

 痛む体を起こして辺りを見渡す。モンスターの気配も人の気配もない。ユノは、コクナに視線を戻す。すると、ある事に気がつく。


「雨…いや、違うか」


 コクナの目の辺りが少しだけ濡れていた。だが、今はそれを気にしている余裕はない。

 コクナの骨折を治し、コクナを抱き抱え馬車を探す。

 崖から2分ぐらいのところに馬車があった。だが、馬車だけだ。馬がいない。と思ったら、崖に近いところにいた。が、どうやら居心地が悪そうにじたばたと、ロープで繋がれている木の周りを回っていた。

 そこでユノはふいに、モンスターはダンジョンの近くを嫌うという噂を昔、ユイから聞いたことを思い出した。


 馬も厳密に言えばモンスターで、馬以外も牛や豚は王国にいるが、それは人間が調教して今は育てているだけで、昔は冒険者にとっては高く買い取って貰える、いい獲物だったらしい。

 だが、そのせいで不正に高い金で買い取れ、高く売りさばき儲ける貴族なんかがたくさん存在して、乱獲などで、それぞれ数が激減。

 その為、各王国がそれぞれに管理することとなり、少しでも繁殖しやすいように出来るだけ多く生け捕りにして、繁殖させて増やしていったのだとか…。それぞれの王国の中で…。

 だが、それが決定打となり今や野生で見ることが出来ないのだ。それが今から250年ぐらい前のお話。


 まあ、それはさておき。おそらく、モンスターがダンジョンに近かないというのは本当だろう。

 ユノは、馬車にコクナを乗せると馬車を動かし、馬よりも崖に近い場所に移動させて、もう1つのコクナ達が乗って来た馬車から、馬の餌と水を取り出した後、馬に餌と水を与えてユノもコクナと同じ馬車の中に入った。

 そして、半ばというかほぼ気絶する様に意識が暗転した。

サボらず投稿しました。次でこの勇者のお話は一区切りで、本編に戻ります。というか戻します。なので次は少し多くなるかも…?まあ、そんな感じです。で、コクナはまた出します。書くのがとても楽しいので!では、また3日後

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