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18.噂話 その2

幽谷と書いて「ゆうこく」と読みます。奥深い静かな谷という意味です。

これって人生で何回使うんでしょうね。

「何故かはしらねーがな、隣の王国の勇者と一緒に行くらしい」

「勇者は2人だけなのか?」

「いや、勇者2人と実力がある奴ら4~5人も一緒らしが、全員隣の王国から来るらしいぞ」

「普通だったら半分半分ぐらいなのに、珍しいな。それに、人数が少なすぎないか」

「そうなんだよ、いつもの3割もいねーからな。まあ、それはいいとして、いつもは海を調査したり森を調査したりしているだろ。けど、今回は違うらしい」

「海でも森でもないなら、どこを調査するんだ?」

「それはな、幽谷らしい」




 今も昔も王国と王国を行き来できる道は、1本しかなく隣の王国としか繋がっていない。王国には、巨大な魔法を発動させ、モンスターが侵入してくるのを防いでいる。だが王国を繋ぐ道には、魔法が発動していないので、けっこうな頻度で商人なんかが襲われる。それを防ぐため、護衛として冒険者がつくのだ。

 ある時、ある王国と王国を繋いでいる、道のすぐ近くの川が氾濫した。それを面白半分で見に行った商人が足を滑らせその川に落ちた。それを見ていた護衛の冒険者たちは、商人が死ねば金が貰えないので、商人が落ちた川へと冒険者全員が飛び込んで、商人を助けようとした。

 だが、川の流れは凄まじいもので何とか川に流されている商人を見つけはしたが、流されて上手く商人のところへはいけない。そして、どんどん流されて行った。気が付くと、もう辺りは全く知らない景色に…。どうすることもできない冒険者と商人。何分経ったのか、はたまた何時間経ったのか分からないが流れがだんだんと穏やかになってきた。その時これは、チャンスだと思った冒険者の1人が、商人をなんとか捕まえて陸に上がろうと思い辺りを見渡すと、そこは川ではなく湖だった。もうさっきのような急な流れではなく、穏やかな流れになっておりすぐに陸へと上がれた。

 陸に上がった冒険者たちと商人は全員何とか生きており皆無事だった。そしてふと商人が


「なぜここにはモンスターがいないのだ?」


 商人は、ただ思ったことを口に出しただけだったが、冒険者たちは今まで商人を助けるのに必死で忘れていたが、モンスターが今、後ろから襲いかかってもおかしくない状況であると…。それに、もしかしたら今、前に広がっている湖にもモンスターが無数にいるかもしれないと…。だが商人は湖によっぽど興味があるのか覗いていた。冒険者たちは、万が一があればまずいと思い、止めようと近づくと商人が


「この湖には、モンスターがいないのではないか?」


 と言い出し湖に飛び込んで、バタバタしだした。それを見て、流石にまずすぎると思った冒険者たちは、湖に飛び込み商人を取り押さえた。冒険者たちは、さっさともといた馬車があるところまで帰ろうと思い、商人を連れてとりあえず湖から出た。だが、商人がまた


「だから、湖にモンスターはいないだろ。何の反応もないんだから」


 半ギレの商人はまた湖に飛び込んで、バタバタしだしたのだ。これはもう諦めるしかないと思った冒険者たちは、商人を眺める。でも、確かに湖に反応はないのだ。が、しかしそれは湖にはいないだけである。

 森からモンスターが出てきたのだ。数は2匹と少ない方だ。それに気が付いた冒険者たちは、すぐに戦闘体勢にはいる。だが、ここで冒険者たちは重要なことに気が付いた。それは、全員が武器を持ってないのだ。武器は皆、馬車に置いていて攻撃できない。魔法も皆、下の上までしか使えず仕留める事は困難だ。この状況でどうするかその答えはただ1つ。戦略的撤退。要は、逃げるしかない。

 冒険者の1人を囮にして、商人を無理やり湖から引きずり出して逃げだし川の流れとは反対の方に走って逃げた。

 しばらくして冒険者達と商人は、運良く馬車のところまで帰ってこれた。囮にした冒険者も運良くモンスターの急所に魔法が当たった為何とか生きて帰ってきた。

 そして、この話がやがて広まり面白がってその湖に行く冒険者やなんと勇者まで出てきたが、皆が皆口々に、湖にモンスターはいなかったと言った為、冒険者の間では有名になっていったのだ。やがて、王国の王の耳にもその話が入り本格的な調査が始まった。その結果、全ての川と湖には、モンスターがいないことが分かったのである。

 その数十年後、川と湖にモンスターがいないのならば海にもいないのでは、ということになり最近になって海にもモンスターがいないことが分かったのである。

 で、商人がバタバタしていた湖の少し離れたところに、幽谷がありそこを勇者たちが調査するらしいのだ…。


「へー、けどそんなところ調査して何か得でもあるのか?」

「さー、それは分からないがあそこの幽谷にはな、モンスターが近づかなかったらしいぞ。だから、もしかしたらダンジョンがあるかもな」

「ダンジョンかー、あってほしいな。けど、どうしてダンジョンにモンスターは近づかないんだろうな」

「さーな。それは俺にも分からねーな」


 エリックは、頼んだ唐揚げと焼き鳥を全て食べ終えたが、もう少しここで面白い話を聞くことにしたのだった。

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