ファレント公国の内情
「メ、メイガス⁉︎しかも、あのベルク家だと⁉︎」
流石ベルクの名前は有名だな。
「我が家をご存知でしたか」
「あ、当たり前だ。どうやってここまで…いや、ベルク家ならできぬ芸当ではないと言うことか?しかしどう見たって10歳そこらの子供ではないか。まさか、ベルク家の神童⁉︎」
まさか、僕の事まで知っていたのか。
「神童かどうかはあまり分かりませんが、そう言う噂のあるのは僕のようです」
「そ、そうか。それで何の用だ?こんなところに無断で入って来たんだそれ相応の覚悟はあるんだろうな?」
密入国に城への不法侵入、まぁ国家問題だよね。
「それについては大変申し訳なく思っております。ただ、やむを得ないと事情もありますので。…それで本題なのですが、何故いきなり戦争を仕掛ける事になっているのですか?」
「ふむ、謝罪で済むような事ではないが、今は置いておこう。戦争の事を知っていると言う事は国からの依頼なのだろう。10歳の子供に言ってどうなるものでもないが、神童と言われる様な子供だ、もしかしたら戦争以外の道を思いつくかも知れんな」
期待が重いな。いや、もう子供だろうとも縋るしか無い所まで追い詰められているのか?
「僕に何が出来るのかは分かりませんが、もし宜しければ詳しくお教え下さい」
「うむ。実はな、この国はもう何年も作物の育ちが悪いのだ、いや年々悪くなっていっている。あと2.3年もすれば土地が死んでしまうだろう」
そんなに前から⁉︎
「何故その時に周りに相談しなかったのですか?帝国にこの話をすれば何かしら対策をしてくれたかも知れないのに、もちろんメイガス王国だって力になります」
「力になってくれるのはありがたい、実は一度帝国にこの話をした事があるのだ。その時は土地の栄養が足りていないから一度休ませてから土地の回復を図った方が良いと助言を貰ったのだが、意味は無かった」
意味が無かった?土地が回復しなかったのか?
それにしても土地がダメになるのが早すぎる。
「確かこの国は未開の地を開拓して出来たのですよね?土地というのはそんなに早くダメになるものなのですか?」
「いや、たかが50数年でダメになるなど聞いた事が無い、栄養を一切与えずに使い続けたのなら話は別だが、そんな愚かなマネをする農家などいないだろう。困るのは自分達なのだから」
それはそうだ、作物が育たなかったら食べるものが無くなるんだから。
「そうですよね。それでどうしようもなく、我が国から土地を奪おうと考えたわけですか?」
「その様だな。私達国の中枢にいるもの達でなんとか考え直す様言っていたのだが、陛下はこの国を存続させるにはもう戦争しか無いと考えている様で話を聞いてくれなかった」
随分と短慮な考えだな、確かに作物が育てられないなら国としては深刻な問題だけど、それを勝つか負けるか分からない戦争でどうにかしようと考えるなんて。というかさっき軍の様子を見たけど、明らかに負けるつもりだったよね。さっきの国王とこの人の会話も負ける事が決まったみたいな言い方だったし。
「何故陛下は戦争をしようと思ったのですか?」
「それが全くわからないのだ、聞いても教えて頂けない。陛下なりの考えがある様なのだが、何も答えてはくれぬ」
あー、これは陛下にも直接聞かないと駄目そうだな。
「分かりました。私はメイガス国王に戦争を止めてくれと依頼を受けておりますので、ファレント国王にもお話を聞いて参りますので、この辺で失礼します」
「ああ、気をつけてくれ…いやいや、何当たり前みたいに出ていこうとしているんだ。そんな事許されるわけないだろ」
あ、やっぱりダメか、さも当然の様な出ていけば何も言われないと思ったのに。
「だめ、ですか?」
「10歳の男の子が上目遣いで可愛くしても、私には意味ないからな⁉︎そんな趣味も無ければ可愛いとも思わんぞ⁉︎」
ちっ、ダメか。いや、当たり前か。
「はぁ〜、ならどうすれば良いのですか⁉︎」
「逆ギレしてもダメだからな⁉︎むしろこの状況で良く逆ギレ出来たな⁉︎」
この作戦もダメか。仕方ないここは恥を捨てて土下座だ。
「この通りです、どうかお願いします」
「土下座してもダメなものはダメだ。そんな簡単に国王に会えるわけないだろ」
「えーじゃどうすれば良いのさ」
「不貞腐れた!え?君神童とか言われてるよね⁉︎何でそんな子供みたいなの⁉︎」
「いや、僕子供ですし?神童って周りが勝手に言ってるだけですし?何をそんな期待してるんですか?」
この人ノリいいな。話し方まで変わっちゃったし。
「確かに子供だったね。そうだよね、大人が勝ってに言ってるだけだもんね、あまり期待し過ぎたら迷惑かけてだよね、ごめんね」
「いえ、分かってもらえればそれで良いです。それでは」
「ありがとう、気をつけてとわならんからな」
ダメだった。
「まぁ、確かに貴方の立場からしたら僕をそう簡単に国王の下に行かせるのは出来ないでしょう。しかし、今戦争を止められる可能性があるのは僕だけです。陛下に話を聞いて何か打開策が打てれば貴方もこの国の国民達も救われるのですよ?」
「それはそうだが、君は他国の人間だ。ここにいる事自体がおかしいんだ。それは分かるな?」
「勿論それは分かっています。しかし、戦争をする前に最後の足掻きとして僕に任せていただけないでしょうか!」
「まぁ今最後の段階にいることは確かだ、足掻きとして君に任せるのも良いかも知れないと思う」
「では…」
「しかし、何故それを最初に言わない?最初から私を説得すれば良かったではないか」
「それは…」
「それは?」
「こういう流れを一度やってみたかったので」
「子供か‼︎」
「え?はい、子供です」
「いや、それは知っているが…はぁ、もういい。早く行きたまえ」
「あ、はい。それでは失礼します」
「ああ……頼んだ」
僕が部屋から出て行く寸前に小さな声でそう言った。




