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貴族の使命・人魔大戦

その後は軽く雑談をしてギールと別れた。

個室にはエリナとは2人きりになると、不意にエリナから先ほどの事聞かれる。


「アロイスは、貴族の真の秘密を知っているのですね?」


「エリナには隠しても意味ないよね。うん知ってるよ。ベルク家の仕事も」


「そうですか。その様子だと、ラズベル家の秘密も分かったのでは?」


「そうだね、ギールの話を聞いて分かったよ。ラズベル家は国の隠し財産ってところだね」


「正解です。ラズベル家にはこの国が危機に陥った時の為の国庫を担ってもらっています」


「やはりそうだよね。家が防壁の役割だものね」


「はい。ベルク家は魔法に特化していますので、国外勢力の要です。貴族の皆様には苦労をかけておりますが、再びあの悪夢を呼ばない為には必要な事です」


悲痛な顔をしながらも必死に耐えるエリナ。


悪夢。本で読んだがそんな生易しい物では無い気がする。



『人魔大戦』そう人が呼ぶ戦いがあった。戦いとは言い難い、魔物達による一方的な虐殺。

300年前この国の、いや、世界の危機が訪れた。

『魔王』皆がそう呼ぶ厄災。

この国から程近い山奥に突如として現れた。人の形をした人とは思えぬ存在、それは魔物を従え操り、強化していく、まさに人種にとっての厄災だった。

その当時この世界にはいくつもの国があった、今も存在する、人間の国メイガス王国、エイブラ帝国、獣人の国オルカス王国、エルフの国、ファラス王国、ドワーフの国ガルドス王国、この5カ国は当時から強国として君臨し続けていた。その他にも小国がいくつもあり、それぞれが自国を守る為に魔物に戦いを挑んでいた。しかし、普段なら何の力もない人種でも殺せるような魔物ですら人種は破れた。魔王による魔物達の強化、これはとんでもない力を引き出していた。小国は次々と魔物の餌食になっていき、ついには全て消えていった。それに危機を覚えた、今現在でも存在する人属、エルフ、ドワーフは手を取った、5カ国による同盟が可決される。魔法、武術、両方に覚えのある人属、精霊に力を借り強力な魔法を、使うエルフ、とんでもない力を発揮するドワーフ、身体強化を得意とし俊敏性を高め相手を翻弄する獣人。この4種属達による殲滅戦が発足される。こちらは4種あわせて一千万人、対する魔物はたったの三百万体、3倍の戦力差、明らかにこちらが有利であった。しかし苦戦を強いられる事になってしまう。魔物の達は今までは遊びだったかのように強さが増していった、人種は次々と散っていき一千万もあった軍勢が半分の五百万に減り士気も落ちていく。誰もが絶望を味わい、滅んでいく未来しか見えていない状況が50年続いた。それでも抗い続けた人種に一筋の希望が現れる。

『神の使い』使徒と呼ばれる存在が降臨した。使徒は1人で何万何百万もの魔物達を葬り去り人々に希望を与えた。それを見た人種の軍勢に士気が戻り、使徒と共に魔物を倒していく。遂に魔王にたどり着いた人種は、魔王討伐を果たそうとしたが、使徒に止められる。自分達は戦力にならない、そう言われる、最初はそれに激怒しかけたがすぐに思い悩む、今まで散々魔物にいいようにあしらわれていた自分達が、魔王に叶うはずがない。そう思い、全てを使徒に委ねる事にする。

使徒と魔王の戦いは苛烈を極めた。実力はほぼ互角、それを見て、人種はやはり自分達の力は邪魔になるだけだと思い直す。

使徒と魔王の戦いは何年も続いた。両者共に相手を倒せないでいたが、使徒には奥の手があった、それは『神力』、力を何倍にも引き上げる。本来なら人が扱う事の出来ない、神に体を強化してもらっている使徒でさえ扱う事の出来ない神のみに扱える力、しかし、自らの命と引き換えにすれば発動出来る様に与えられた。出来れば使わずに倒したかった使徒は悩んだが、この世界を救う為に決断する。使徒が光り輝いた瞬間決着がついた。しかしそこには何も無かった、魔王の残骸も使徒の存在も。両者が跡形もなく消え去っていた。

今回の戦いの最功労者である使徒が消え人々は素直に喜べないでいた。そんな中、各国の王達が使徒を称え感謝の意を込めて世界祭を計画した。世界祭は数十年に一度の割合で開催される、全ての人種が集まり使徒を称え感謝をし、供養する、そんなお祭りであった。

そして、魔王が消えそれぞれが復興に勤しむが魔物達による破壊行動は各国に大打撃を与えていた。家は壊され力のない人々は殺され、全てを失う者が続出する。大量な物資が必要なのだがいかんせん人手が足りない、金品もない、食料もない、魔王による障害は何年も続くかと思われたが、ここでもやはり各国の同盟により協力し合い何とか復興を成し遂げる事が出来た。

この厄災に対し各国の貴族達はある使命が与えられる事になった。

それが、国の危機の為の、国庫の備え、食料の備蓄、戦力強化、防壁、輸出の運搬、などである。


確かこんな内容だったはず。


「僕も内容は理解してるし納得もしている。人属の寿命は短いから実際の出来事を知っている人はいない。だからあまり現実味は無いかもしれないけれど人属以外の、獣人、エルフ、ドワーフの中には未だ魔王の恐怖を鮮明に覚えている人もいるはず、そんな人たちの為にもなにがあってもいいように備えは必要だよね」


「アロイスの言う通りです。私達は何があっても、たとえまた魔王が現れても抗う事の出来る力を持たなければいけないのです」


エリナの様子が変だ、王族だからしっかりと語り継がれているのは分かる、だけど実際に見た様な怯え方をしている気がする。


「エリナ、君は『人魔大戦』を見た事があるのかい?」


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