ギールの不満・貴族の秘密
「そう言うわけでは無いよ?」
そうだよね、親子仲は悪く無いよね、分かった風出してすみませんでした。
「上手くいってないのは、お金の運用の事だけなんだ」
「お金の運用?」
散財癖でもあるのかな?
「実はねうちの家は、代々お金に対して凄くうるさいんだ。何代も前の御当主が騙されて沢山の借金を負わせられてから、何があっても良いように無駄使いしないで、お金を貯める事になってるんだ」
散財癖ではなく貯蓄癖?
「うん?貯蓄は大切だと思うよ?それに何が不満なの?」
「僕も貯蓄する事に不満があるわけでは無いんだよ、贅沢をしたいわけでも無いんだ。ただ、度が過ぎるというか、加減を知らないというか、とにかくお金を使わなさ過ぎて困ってるんだ。例えば、食事は平民と同じ質素なもの、これに対しては別に気にしないんだけど、祝いの時でも食事が変わる事が無い、お客様が来た時以外貴族らしい食事は一切無いんだ。お小遣いは貰えないから好きな物も買えないし」
あー、お金を貯めるのは間違っては無い、間違っては無いんだけど、やり過ぎは良く無いよね。せめて祝いの時は美味しいもの食べたいよね。
「なるほど、確かにたまには美味しいもの食べたいよね」
「そうなんだよ、だからそれを言ったら怒られちゃって、それ以来お金の事は話さなくなったんだ」
「そっか、ギールも大変なんだね。僕で良かったらいくらでも力になるよ」
「ありがとう、何か困ったら、相談させてもらうね」
「うん、いつでも。それにしてもよく、領主がお金使わないで経済が回るね」
「それはそうさ、この国の金属、鉱石の加工は全てラズベル家の領民だからね。それに他国にも輸出してるし」
ん?ベルク領にも鍛治屋なんかもあったぞ?王都にもあるし。
「家の領地にも鍛治師いるよ?もちろん王都にも」
「うん、そうだろうね。ラズベル家が派遣してるからどの街にも鍛治師はいるよ」
派遣?でも、それだとラズベル家以外の貴族領から弟子を取ったらそんな事出来なくなるのでは?
「弟子を取ったらどうなるの?」
「その場合はその弟子はラズベル家の領民になるね」
それって良いのか?他の領地から人をとってるって事にならないか?
「それを良く他の貴族は何も言ってこないね」
「昔は色々イザコザがあったみたいだけど、今は全ての貴族が納得している事だよ、それにラズベル家だけがやっているわけでは無いからね」
「そうなの?知らなかったな」
今まで色んな本を読んできたけど、領地とか、貴族の経営に関する本は読まなかった。領地を経営する気が一切なかったから読む必要性がなかったし。でもこれからはしっかり勉強しよ。
「あら?アロイスに知らない事があったのですね」
「それはそうだよ、エリナ。むしろ知らない事の方が多いよ」
「昔から本ばかり読んでいたと聞いていたのでなんでも知ってると思っていました」
「確かに本は沢山読んだけれど、貴族関連は一切読んでなかったから知らない事ばかりだよ」
「まぁ、それはいけませんよ。アロイスは貴族なのですから、しっかり勉強しなくては」
「うん、これからはしっかり勉強するよ」
「はい、頑張って下さい」
「それで、他の貴族もしているって本当なの?」
「ええ、そうですよ。ラズベル家が鍛治師を派遣しているように、他の貴族も色んな領地に人を派遣していますよ。むしろ、人を派遣している事が貴族のステータスの一種になっているのです。領民達にとっても技術が有ればどこに行っても歓迎して貰えるのもあって率先して技術を身につけようとしていたりと、活気付いていますよ」
へぇー、そうなんだ。両者にとって一番良好状態ではあるか。
「貴族と平民が、協力しあって今の国になっているんだね」
「僕も今の状態は良い関係だと思ってる。だからこそ、ラズベル家はもっと街に貢献した方が良いとも思う。でも、それを言ってしまうと怒られるんだよね。僕が贅沢をしたいと思われるみたいで」
「子供の我が儘だと思われる訳か。難しいね、僕達がもっと大人になれば真剣に考えてくれるとは思うけど、領地が貧困としているならなんとかしないといけないけど、そうでないならあまり変わらないだろうね」
「うん、僕もそう思う。どうすれば良いかな?」
「1番簡単なのは、ギールが伯爵を継いでから変える事だけど、それは嫌なんだよね?」
「うん、出来れば父の代から変えて欲しいと思ってる」
「それは何故か聞いても良いかな?」
「…領民達は特に不満がある訳ではないらしいんだ。圧政を敷いてる訳では無いからね、むしろ好かれてる。貴族なのに自分達と同じ生活をしてる事に親近感が湧くみたい。でも一方で、他の貴族達からは凄く馬鹿にされてる。貴族の癖に平民と同じ生活をしてる事にプライドは無いのか、と。僕達、ラズベル家が馬鹿にされるのは気にしない、領民達はラズベル家の為に頑張ってくれているし、ラズベル家の領民に誇りを持っているみたいなんだ。それなのに、ラズベル家の領民ってだけで馬鹿にされている、それがどうしても許せなくて」
なるほどね、自分達の為に頑張ってくれているのに、自分達のせいで馬鹿にされているから、そんなに悔しそうなのか。
「ギールは領民、皆んなが好きなんだね」
「それはそうだよ。皆凄い良い人たちだし、馬鹿にされてる事を知っていてもまったく気にしないで、むしろ僕達の心配をしてくれる。こんな良い人たちに僕は何もしてあげられない。父も領民も皆同じことを言うんだ。言わせたい奴には好きなだけ言わせれば良いって。僕は何でそんなに前向きでいられるのか分からない。けれど、だからこそ領民達が色々言われているのが嫌なんだ」
ふむ、ギールだけの話しか聞いていないから、本当のところはわからないけれど、ギールは知らない何か他の理由があるのかもしれないな。そうなると、あの事だろうな。
「ギール、僕には君の父上の事を知らない。けれど、何か別の、それこそ馬鹿にされている事も気にならないほどの理由があるんじゃないかな?そんなに領民から好かれている領主が、領民を馬鹿にされて怒らないとは思えない。きっとまだギールには教えられない事があるんじゃない?」
「理由?伯爵家を継ぐ僕に言えない理由って何?そんなのがあるのなら、言ってくれれば良いじゃないか!」
「ギール、アロイスに怒っても仕方が無いと思いますよ」
「あ、ごめん…」
「ううん、気にしないで。ギールが悔しい思いをしているのは分かっているから」
「ありがとう、でもやっぱり納得は出来ない。僕に言えない理由があるのなら知りたい」
「これは僕の憶測でしか無いのだけど、聞くかい?」
「アロイスは何か分かるの?」
「確実では無いよ、思い当たる節がある程度かな?」
「もし間違っていても気にしない、今納得出来る理由が欲しい」
「分かった。多分だけど、まだ学園を卒業していないからだと思うよ」
「?どういう事?学園を卒業していないと話せないっておかしく無いか?」
「いや、そうでも無いよ。この学園はどんな事を学ぶか知っているかい?」
「勿論知っているよ、1年次は一般教養を主に他には魔法と武術が少しあるくらい、2年次からは選択科目増えて、自分の知りたい事、伸ばしたい事を習っていくんだろ?貴族には絶対に受けなければいけない授業もあったりする」
「うん、きっとその貴族にとって必須科目の内容を理解しないと教えられないんじゃ無いかな?」
「それは今の僕では教えても意味がないって事?」
「意味が無いのではなく教えてはいけないんだと思うよ」
「教えてはいけない?何で」
「これはベルク家にもある事なのだけど、領主と次期領主しか知られてはいけない何かがあるんだ」
「どうして、そんな事を知っているの?」
「僕の家には、今現在は父上しか入ってはいけない部屋があるんだ。その事を聞いたら、教えてくれた。僕には兄がいるけれど、その兄にも学園を卒業するまでは入れられないんだって。僕はベルク家を継がないから、入る機会は一生ないって」
「そういえば、家にも一部屋だけ、入ってはいけない部屋がある。そういう事か、納得したよ。でもそれなら、今は教えられないって言ってくれれば良いのに」
「いや、それすら本当は言ってはいけないんだと思うよ。学園で習って初めて教えられるんだと思う」
「でもアロイスは教えてくれたんでしょ?」
「僕の場合は、また違うんだ」
僕は前世の記憶があるから言っても理解出来るし、むしろ言っておかないといけない事みたいだったな。だから当然部屋の中も入った事がある。内容も知っている。
「何か言ってはいけない理由ってあるんだね」
「うーん、どらかと言うと、言いたくないかな?ごめんね」
「そっか、分かった。気にしなくて良いよ、納得出来る理由が分かっただけでもありがたいから」
「ありがとう、そう言ってくれると助かるよ」




