初めての友達・ラズベル伯爵家
「それで、ギール君はどうして話しかけて来たの?」
「ん?それは勿論君と仲良くなりたいからだよ」
「僕と?僕は伯爵家の次男だから、仲良くなってもあまり意味ないよ?」
彼の真意を聞いておきたい。
「違う、違う。僕はベルク家と仲良くなりたいわけではないよ。まぁ仲良くなるに越した事はないけど、そんな理由で話しかけたわけではないから、間違えないで」
ベルク家ではなく、僕自身だったのか。なんだか悪いこと聞いたな。
「ごめんね、勘違いしちゃった」
「気にしなくていいよ。さっきの話聞いたら誰でもそう思うだろうから」
「そっか、ありがとう。それで、僕と仲良くなりたい理由を聞いても良いかな?」
ないとは思うけど、アッチ系だったら全力で逃げる。
「クラス表の前での出来事を僕も見ていたんだけど、凄くカッコイイなって思ってさ。王女殿下を守る為、家族に危害を加えさせない為に、自分よりも高い地位の人でも怯えずに立ち向かう姿が、心に突き刺さってさ。出来れば僕も同じ事が出来る様になりたいんだ」
カッコいいって言われた瞬間、ビクッ!ってなったけど、どうもそんな感じでは無さそうだな。
「あの俺様カス君とのやり取り見ていたんだ恥ずかしいな」
「アロイス、カスではなくグッカスですよ」
カスみたいな行動を取られたから間違えて覚えちゃった。デブロン侯爵の時と違って名前の通りの男だったな。
「グッカス君か今度は間違えないで覚えておこう。ありがとう、エリナ。確かに、守る為に立ち向かったけど。あれは、僕が切れちゃったのと、此処が学園だからってのもあるよ。もしも学園でもなく、僕がもう少し大人な対応をとれていたら、あんな暴力的な行動は取らなかったから、あまり褒められた行動ではないよ」
あの出来事は結構恥ずかしいんだよね。
「そんな事ないよ、確かに暴力はいけないかも知れない。けれど、身分の上の人に立ち向かった事が凄いんだよ」
んー、なんだかギール君からは身に覚えのある様に聞こえるな。
「何かあったの?僕で良かったら力になるよ」
「ありがとう、でもここだと、言いづらいかな」
それはそうか、周りにはまだクラスメイトがいるもんな。
「じゃあ、何処か別の場所に移動しようか。エリナも良いかな?」
「ええ、彼は信用出来そうな方なのでお話を聞いてあげてください」
「ありがとう、2人とも」
そして、僕達は寮への道を歩いた。その道中は他愛もない話をした。言いたくなかった、僕とエリナの出会いもエリナによって暴露された。
「では、最初は王女殿下の一目惚れだったのですね」
「そうです。それと私の事はエリナで良いですよ、あと敬語もなくて大丈夫です」
「いえ、そう言うわけには…」
ギールから戸惑いの視線を向けられる。
「ギール君、出来ればエリナの言う通りにしてくれないかな?エリナは自分の立場もあってか、そこまで親しい間柄の人が少ないんだ」
本当の理由を言うわけにはいかないので、エリナの力のことを言わずにギールに告げる。
「そっか、王族も大変なんだね。分かった、名前を呼び捨てにする勇気は無いし、アロイス君に怒られそうだからエリナ様と呼ぶね」
「アロイスはそんな事では怒りませんが、それで構いません」
うん、ギールが呼び捨てにしても怒りはしない。俺様君が言ったらぶっ飛ばす。
「うん、ギール君なら別に怒らないよ」
「そんな気はしていたけど、やはり立場は弁えないといけないと思ってね。後僕の事はギールで良いよ、僕もアロイスって呼ぶから」
「分かった、これからよろしくね、ギール」
そして、僕は初めて友達が出来た。10年間生きていて初めての友達、何だか寂しい子供だな。ギールの事は大切にしよう。
「こちらこそ宜しく」
そして寮に着くと、寮監の人に寮についての説明をしてもらった。同じ建物でも男子と女子で階が分かれていたので、男女共有スペースの個室に入っていく。
「学園の寮って凄いね、掃除と洗濯はやってもらえるし、食堂で無料のご飯も食べられるし、何不自由なさそうだね」
「アロイス、それは基本的に貴族の方だけですよ。平民の皆さんは自分で掃除と洗濯をするらしいですよ」
貴族の子息に掃除、洗濯をさせられないからか。
「それだと何だか差別みたいでなんかやだね」
「いえ、その代わりとは少し違いますが、貴族には寄付が求められます。その寄付があるから、身分関係なく無料でご飯が食べられるのですよ」
なるほど、平民の対応はそこまで優遇される訳では無いけれど、ご飯はただ。貴族、王族は寄付する代わりに優遇される訳か。
「なら、平民でも貴族と同じ額を出せば、同じ対応になるの?」
「そうみたいですよ。貴族と同じ額を出せるのは、国有数の商家だけでしょうけど」
普通では払えないような額なのかな?
「そうなんだ、ちなみにいくらか知ってる?」
「最低でも白金貨以上だそうです」
おぉ、白金貨以上なんだ、ヤバイなそれは。それだと、いくら貴族でも出せない人いるんじゃないか?
「貴族、全員がその額を出してるのかな?経済的に無理な家もありそうだけど」
「アロイスの言う通りだよ。出せない貴族もいる。その貴族には、平民と同じ待遇だよ」
「へぇ、そうなんだ。よく知ってたね」
「僕がそうだからさ…」
え?ギールって伯爵家だよね?そんなに貧乏だったのか?
「ギールさんはラズベル伯爵家でしたよね?ラズベル家が財政難とは聞いた事がないのですが」
「エリナ様の言う通りラズベル家は決してお金が無いわけではないんだ。ただ…」
ん?お金があるのに、寄付が払えない?矛盾しているな。何か訳があるのか?心なしかギールの顔が悔しそうだ。
「ギール、もしかしてそれは教室での話に関係あるの?」
「うん、僕の家、ラズベル伯爵家は代々金属や鉱石の加工を生業にしているだ」
金属と鉱石の加工なら落ちぶれる事はなさそうだな、商売が上手く行かないなんてことも無さそうだし。何が原因なんだろう。
「僕はラズベルの嫡男だから、このままいけば当主になる。だけど、父とあまり上手くいってなくてね」
父親との折り合いが悪いからお金を出して貰えないってことなのかな?それで自分より上の立場の人に立ち向かう勇気が欲しいから僕と仲良くなりたいって事か。
「なるほど、親子仲が悪いんのか、そのせいで寄付をして貰えない。そう言う事かな?」




