入学式・怒り
テストが終わり一週間が経つ。
「今日は入学式とテストの結果発表だったな、回答に間違えは無かったから満点を取れてるだろう」
学園に到着し、入学式をするホールに行く。
何処に座ろうか迷っていると、声が聞こえてきた。
「アロイス、こちらが空いてますのでどうぞ」
声の主はエリナだった。この国王女から直々に声がかかった事に周りが騒つく。
「王女殿下、お久しぶりです」
「ついこの間あったばかりですよ?」
「あまり頻繁に顔を合わせていると思われると、何を言われるか分からないので」
「そうですか。でもこれから一緒に通うのですから気にしてはいけません」
一瞬悲しい顔をするがすぐに表情を戻す。
「それはそうですけど…」
なんと言ったら良いか分からない。適当に話を合わせるか。
「そうですね。これからよろしくお願いします」
「はい!」
元気よく返された。可愛いな。
周りは、誰だあいつはとか、殿下と仲が良いのね、羨ましいわなど、色々聞こえてくるが全て無視する。
そして式が始まる。
「新入生代表、エリナ=ヴァン=メイガス」
「はい‼︎」
エリナが壇上に上がって行く。
代表挨拶は位の高い人がするのが恒例らしい。
もし主席挨拶だったら、間違っても主席にならない様にしていただろう。
「今日この晴れた日に、国立ヴェルズ学園に入学出来たこと大変嬉しく思うとともに、今日まで育て支えていただいた皆様に深く感謝いたします。この学園は身分に関係なく皆が平等に勉学に励み、知識を蓄えられる為に創設されました。私もこれに倣い平民、貴族、王族関係なく共に切磋琢磨しあえる関係になりたいと思います。私達はまだ子供です、間違えも起きるでしょう。その時は先生方、先輩方、ご指導の程をよろしくお願いします。
新入生代表、エリナ=ヴァン=メイガス」
ホール全体が揺れているかと思うほどの拍手が鳴り響く。
良い挨拶だったな。と言うかこの学園てヴェルズって言うんだ、知らなかった。
「ふぅ〜。緊張しました。私の挨拶はどうでしたか?」
壇上から戻ってきたエリナを笑顔で迎える。
「とても素晴らしいと思います。流石は王女殿下ですね」
「ありがとうございます」
顔を赤くしたエリナを見て周りの生徒達から刺さる様な視線が送られた。主に男子から。
「国王陛下よりご挨拶があります。皆さま心して御拝聴して下さい」
「陛下の挨拶って毎回あるのですか?」
「いえ、私も今日まで知りませんでした」
「新入生諸君入学おめでとう。この学園では我が娘エリナが言っていたように身分による差別は全くない、もしも身分を笠に切る様な事をすれば罰則が与えられるので注意するように。今回我がここに来たのは皆に1つ言っておかなければならない事がある。今年の新入生の中に子供とは思えぬ知識と魔法技術を持った者がおるので、もし困ったことがあったら其奴に頼むと良いぞ。以上だ」
明らかにこっちを見ながら言わないで欲しい。僕の周りがうるさい。
「国王陛下、ありがとうございました。これにて入学式を終了とします。新入生の皆さまはご自分のクラス表を確認の上、各クラスに移動して下さい」
やっと終わった。さてとクラス表を見に行くか。
「アロイス、一緒に見に行きませんか?」
「喜んで」
エリナを伴いクラス表が張り出されている掲示板に向かう。エリナが王女殿下故に隣にいる僕にも視線がくる、エリナとは視線の種類が違うのか何となく痛い。
「ありました。2人ともAクラスですね、良かったです。これからもよろしくお願いしますね」
「あ、本当だ、こちらこそ宜しくお願いします」
「それにしても、流石アロイスですね。あのテストを満点だなんて」
「そうですか?しっかりと勉強すれば誰でも満点だと思いますけど」
「それはあり得ません。最後の問題は誰も知り得ない事なのですから」
「?そんな問題ありましたか?」
「はい、ありました。なので私は満点ではありません」
そんなに難しい問題は無かったと思うんだけどな?もしかして僕は見逃していたのかもしれない。
「きっとその問題は今回のテストの点数には関係ない問題ですよ。誰にも分からない問題が僕に解けるはずありませんから、きっと僕は見逃してしまったのですよ」
「そんな事…いえなんでもありません。そうかもしれませんね。…はぁやっぱりアロイスはどこか抜けてるとこがあるのですね」
「そうですか?まぁとりあえず、教室に向かいましょう」
最後なんと言ったか聞こえなかったが大した事ではないだろう。それよりも教室に向かわなきゃ。
「そうですね、教室に向かいましょう」
そう言って歩き出そうとしたら。
とんだおばk…勇者が現れた。
「おい、貴様!」
喧嘩か?他所でやって欲しいな。
「おい!無視するな」
誰だよ、さっさと反応してやれよ。
「いい加減にしろ‼︎」
怒りながら肩を掴まれる。
「え?僕?」
「惚けやがって‼︎馬鹿にしているのか!」
「別にそんな事ないよ、本当に気づかなかったんだ。ごめんね。王女殿下、どうやら彼は僕に用事みたいなので先に教室に向かって下さい」
「いえ、待っています。一緒に行きたいですから」
顔を赤くして言わないで。僕への視線がどんどん強くなるから。
「分かりました。では少々お待ち下さい。それで何か用かな?」
「貴様〜!俺様が誰か知らないのか‼︎」
「え?うん、知らないよ?有名人?」
誰だろ?見たことないしな。なんでこんなに怒っているのかな?僕何かしたっけ?
「俺様はガイナリー侯爵家の嫡男グッカス様だ」
「そうなんだ。僕はアロイス、ベルク伯爵家の次男だよ」
「伯爵家の人間が俺様に対する口の聞き方がなっていないぞ‼︎」
「え?だってここは学園だよ?身分は関係ないんだからおかしくないと思うんだけど」
「あら、アロイス。ならいつまで私に敬語なのですか?」
「いえ、それは…」
これ以上親しい間柄だと思われると周りの目が怖いから、なんて言えない。
「今、自分で身分は関係がないと言ったのですから、いつも通りの話し方でお願いします」
んー、どうしたものか。
あっれーなんかエリナから母上と同じ有無を言わせない笑顔が出てる。
くっ!これはダメだ、諦めよう。
「分かったよ、エリナ。これでいいかい?」
「はい!今後ともそれで宜しくお願いします」
「うん、よろしくね」
「俺様を無視するな‼︎だいたい貴様は誰の許しを得てエリナ様に話しかけている!」
「え?もちろんエリナだけど?」
何を当たり前の事を言っているんだ?
「エリナ様を呼び捨てにした挙句、エリナ様の婚約者の許しをなしに話しかけやがって」
婚約者?それは僕だけど?この子大丈夫かなぁ?
「婚約者?誰の事?」
僕と彼女の家族以外は婚約の事は秘密だから惚けなきゃね。
「俺様だ‼︎」
え?そんな話し聞いた事ないけど?
「エリナ、そうなの?」
「いえ、そんな事実はありません。キッパリとお断りしました」
あ〜彼の妄想か。
「え、エリナ様?何故ですか?おれ、私は父上にも婚約者は私だと言われております」
ん?親子揃って妄想癖があるのか?
「エリナもこう言ってるし、君の勘違いなんぢゃないかな?」
「貴様は黙っていろ。エリナ様よく思い出して下さい」
そう言いながらグッカスがエリナに近づこうとするので、止めに入る。
「これ以上エリナの近くには行かせられないよ」
「邪魔だどけー‼︎俺様の邪魔をするのならそれ相応の覚悟をするんだな‼︎貴様の家族もろとも消してやる」
プチっ頭の何かが切れた音がして体に魔力が駆け巡る。
「僕の家族をなんだって?」
手を強化しながら、グッカスの腕を握る。
「ギャー‼︎痛い痛い痛い‼︎放せー‼︎」
「じゃあ今後エリナに近づく事も僕の前に現れる事もしないと誓うかい?それなら離してあげる」
「こ、こんなことしてタダで済むと思うなよ‼︎」
「僕の言ってる意味が分からないのかい?もう僕らに関わるのは止めろと言っているんだよ」
さらに力を加える。
「ぎやー⁉︎だ、誰か‼︎え、エリナ様お助けを」
「アロイス、カッコイイ……はっ!アロイスその辺にしてください」
何を言ってるのかな?エリナさんや。お陰でどうでもよくなってしまったよ。
「エリナがそう言うなら分かったよ」
「エリナ様、ありがとうございます。見たか、エリナ様は俺様の味方なんだ」
「いえ、決して貴方の為に言ったわけではありません。アロイスの為です」
「僕の?」
「ええ、周りを見て下さい。皆怯えています」
しまった怒りで周りを見てなかった。




