臨時収入・魔道具完成と失敗
「とりあえず解体はするが、素材はどうするんだ?」
「全部売却でお願いします」
「分かった。今から査定するから、酒場で待ってな」
そう言えば、ギルドには酒場も併設されてたな。
「分かりました」
「では私はその間に、依頼完了の手続きをしています。素材のお金と合わせて依頼料をお支払いします」
あー、いくらか見ないで受けたから値段知らないや。
「了解です」
それから数十分後、キャロに呼ばれて受付に行く。
「アロイス様お待たせしました。まず今回のイビルタイガー討伐の料金が金貨1枚、素材売却料が金貨10枚になりますので、合計で金貨11枚になります」
おっ、結構貰えるな。
「はい、確かに」
「本日はありがとうございました」
「こちらこそ」
そのままギルドを出る。臨時収入を得たので、エリナに案内してもらった商店街に向かう。
「確かこの辺りに、あった、あった」
王都に来て一番最初に入った魔道具のお店に来た。
「すいませーん」
「はい、いらっしゃいませ。おや、貴方は」
「覚えていますか?5年前に一度だけ伺って以来ですが」
「はい、覚えておりますよ。快適温度の魔道具を見た後に、軽衝撃吸収のイヤリングを購入頂いたお客様ですよね?」
詳細に覚えてるな。
「そうです!覚えて頂き光栄です」
「こちらこそ、またお越しいただきありがとうございます。本日はどのようなご用件でしょうか」
「今日は買うものを決めて来た訳では無いのですが、何か面白そうな物があれば買おうかなと思い来ました」
「なるほど。面白い物ですか、……例えばこれはどうですかね?これには光の付与と台座に回転が付与されておりまして、台座を覆うようにカバーをすると」
おぉー、綺麗だな。色んなカバーを作れば飽きる事もなさそうだな。エリナにプレゼントしようかな。
「良いですね。回転させても、させなくても綺麗に灯してくれそうです。買います、いくらですか?」
「ありがとうございます。こちら銀貨3枚になります」
安いな。まぁ作りが簡単だから魔道具としての価値は低いか。
他には無いかな?
「分かりました。他に何かありますか?」
「そうですね、んー、これといって面白いと思えるような物は無いですかね」
「分かりました、ありがとうございます。では回転灯だけでお願いします」
銀貨3枚を店主に渡して品物を受け取り、店を出る。
王都にあるベルク伯爵家の屋敷に帰り、早速今日王都に到着した事を手紙に書き、魔道具屋で買った物を王城に送る。
後日、エリナから手紙が届き読んでみると、時間のある時に、王城に来て欲しい事が書かれていた。なんでも魔道具師のカイルが呼んでるらしい。
なので今日は王城に行く。予め行く日を手紙に書いてあったせいか門の前でカイルが待っていた。
「アロイス殿、お待ちしておりました」
「カイル様、お久しぶりです」
「そうでしたね、あれからもう5年経つのですね。魔道具を作っていると時間感覚が分からなくなる時があるので、アロイス殿との出会いがそんな昔に感じませんな」
笑いながらそう言っているが、それはよろしくないと思います。
「それでどのようなご用件でしょうか?」
「まずは、私の研究室にお越し下さい。そこで詳しくお話しします」
おっと、まだ門から移動してなかったな。
そのまま、カイルに連れられ研究室に入る。
なんか研究者っぽい部屋だな。僕の前世の研究室を思い出すな。
「アロイス殿どうかしましたか?」
懐かしそうに見ていたら、そんな質問をされた。
「いえ、興味が惹かれるものが沢山あったので」
適当に誤魔化しておく。面白そうな物もあるので強ち嘘とも言えないか。
「そうですか、アロイス殿ならいつでもこちらに来ていただいて大丈夫ですよ」
「ありがとうございます。もし、時間がありましたらお伺いさせて頂きます」
素直に嬉しいな。他人の研究資料は為になるからな。
「はい。それで今日来ていただいた理由なのですが。
まず、保存の魔道具、これは素晴らしいです‼︎」
急にテンションが、上がったな。
「と言う事は、完成したのですね」
「はい、保存期間が10倍にまで延びました。これが普及したら、今まで鮮度を理由に持って来れなかった物が売られるようになり、経済が良く回ります。…まぁ経済に関しては正直どうでも良いのですが」
最後のは聞かなかったことにしよう。
「やはりアロイス様は素晴らしいお方だ、私達では考え付かなかった物を、わずか5歳で思いついてしまわれたのですから」
「僕の場合は、先入観など無かったので、何が出来て何が出来ないのか分からないから、ではないでしょうか?」
「なるほど、私達は頭が固まってしまっているかもしれませんね。もっと柔らかい思考で考えてみようかと思います」
いや、5歳の考えを取り入れている時点で十分頭は柔らかいと思う。僕は、ただ前世の知識を出しただけだから、あまり誇れるようなことではない。
「頑張って下さい。保存の魔道具が出来たということは、自動車の方も出来たのですか?」
「それなんですが……ダメでした」
あれ?真空状態にするとかよりも簡単だと思うんだけどな。既存の魔道具を繋げるだけだし。
「何がダメだったのでしょうか?」
「いえ、荷を乗せてもしっかりと動きますし、止まることも、曲がる事も支障は無いのです」
ん?それなら何がダメなんだ?」
「少し言いづらいのですが…」
「僕としてはハッキリと言っていただいた方が嬉しいので、教えて下さい」
「そうですか、…では、言いますね。乗り心地が非常に悪いです。試しに乗った方全員が馬車酔いをしました」
あっ…。そうか速度が上がる分、衝撃が強くなるのか。しまったなサスペンションを忘れてた。
「申し訳ございません。完全に僕の落ち度ですね」
「いえ、決してそう言う訳では無いのです。ただこのままでは誰も乗りたがらないだけでして、アロイス殿のお考えは素晴らしいと思います」
慰められた。余計に心苦しい。
「そう言っていただけるのはありがたい事なのですが、今回は完全に僕が悪いのです。僕は乗り心地が悪くなる事も分かっておりましたので、その改善策もありました。しかし、伝える事を忘れてしまっただけですので…」
「そ、そうですか。人は誰しも失敗をしますので、そんなに気を落とさなくても大丈夫ですよ。アロイス殿が伝え忘れたのを知っているのは私だけですので、話を聞いてから改善策を思いついたことにすれば良いのです」
ああ、なんて良い人なんだ。この人と知り合えて良かった。




