殿下次第・瞳の秘密
「何かしら?アロイス、私おかしな事を言ったかしら?」
「いえ、べつにおかしな事は言っては無いのですが」
「なら良いじゃない、王女殿下の命令を聞くのも責務よ」
それは分かっているのだが、人に言われると何となく嫌だ、けど何も言い返せない。
「分かりました。王女殿下、わたしに何でも仰って下さい。出来る限りの事はしてみせますので」
「え?あ、ありがとうございます、アロイス」
さっきから命令がどうのとか色々呟いていたが僕の言葉に我に返って、嬉しそうに返事をする。
「はぁ〜、アロイス本当にどうしたら王女殿下をここまでに出来るのよ」
「僕が何かした覚えが無いのですよ。ただ思った事を言ってしまっただけで」
「そう。なら本当にアロイスの所為ではなさそうね、王女殿下ご本人の気持ちの所為ね」
やっぱりそうか。何となくそうだろうとは思っていたけど。所詮まだ5歳だ、気持ちなんてすぐに変わる可能性もあるから、今は好きにさせてあげよう。
「では王女殿下、この後はどうなさいますか?直ぐに宿でお休みになられますか?」
「そうですね、元気があればアロイスと町に行きたいのですが、流石に疲れてしまいましたので先に休ませていただきます」
「かしこまりました、それではお休みなさいませ」
そりゃそうだよな、怖い目にも遭ったし。エリナが宿に入るのを見送ってから、僕達も宿へと入っていく。
「アロイスもすみにおけないね」
ニコニコしている父上にいきなり言われた。
「父上、別に僕が何かをしたわけでは無いのですよ?」
「それでも、あれは完全にアロイスに恋してるよね」
直球で言わないでいただきたい。
「王女殿下も僕もまだ5歳です、これから何があるのか分からないのであまり下手な事は言わないで下さい」
「アロイスは冷めているのか、ただ王女殿下に興味が無いのか分かんないな」
正直、エリナは凄く可愛いと思う、出来る事ならと、思ってもいる。けど相手は王女様だお互いがお互いに好意を持っていたとしてもそんな簡単にいく話では無いと思う、身分的にも微妙だし。僕は所詮次男だ、伯爵家を継ぐわけではない、それを考えると無理な気がする。
「王女殿下次第とだけ今は言っておきます」
「どういう事だい?」
「もし王女殿下が心の底から望むのであれば、僕もそれ相応の努力をさせて頂きます。ただ今の段階では王女殿下ご自身でさえ今の気持ちが本物であるか分かってはいないと思いますので」
「アロイス、どういうことかしら?貴方に何故そんな事が言えるの?」
「実は馬車の中で少しだけ殿下の周りの方についての愚痴と言いますか不満を言われましたので」
「それが、王女殿下の気持ちと何の関係があるのかしら?」
「殿下の周りの男性は下心しかない様な人しかいないそうです。その中で、そんな心を持たない僕が現れたのです。唯一と言って良い下心のない男の子が現れたら疲れ果てている女性は、話しやすく、心地の良い雰囲気を恋をしていると思っても不思議ではないと思っています。ましてやまだ5歳の女の子、恋だな愛だのと良く分からないお年頃ですよ?」
「んー?そうね、一概にそうとも言えないけれど間違ってもいない様な気もするわ。なるほど、だから王女殿下次第なのね」
「はい、これから学園にも通い色々な人に出会った時に自分の気持ちが本物だったのか、勘違いだったのかと分かると思いますので、その時まで待っていようと思います。殿下の視野を狭める事もしたくは無いので」
「5歳児の考えでは無いのだけど、分かりました。アロイスの意見を尊重します。ただし王女殿下がその気ならしっかりと責任を取りなさい」
「はい、それは勿論です」
「よろしい、ならこの話はここまでにしましょ」
その後は何事もなく次の日を迎える。
「おはようございます、皆さま」
「「「「おはようございます」」」」
朝、宿の前でエリナを待っていると王女様というより5歳児の女の子の様な顔でこちらに挨拶をしてくる。
「それでは王女殿下、王都へ向かいましょ」
「宜しくお願いします」
父上が出発を促し、エリナが同意したのを確認して家の馬車に乗り込もうとしたら。
「アロイス、今日はこちらの馬車に来ていただけないのですか?」
とても悲しそうな顔で言われてしまった。
「「アロイス、行きなさい」」
父上と母上に行くように言われたので、エリナの乗る馬車に移動する。
「殿下がよろしいのでしたら、是非ご一緒させて下さい」
「勿論です。是非一緒に行きましょう」
パッーと明るくなる顔を見て、何となくこちらも嬉しくなる。
「はい、殿下」
「アロイス、もう2人きりなのだからエリナと呼んで」
「分かったよ、エリナ」
「はい」
王都への道は昨日のように気まずい雰囲気にはならずに穏やかに進んでいく。そこで気になった事を聞いてみる事にした。
「エリナに聞きたい事があるのだけど良いかな?」
「な、何ですか?答えられる事なら答えますよ」
にわかに体を硬直させて返事を返される。
「もし言いたくなかったり、聞かれたく無かったらすぐに辞めるから教えて」
「大丈夫です、アロイスが相手なら」
「そ、そっか」
物凄い信頼を寄せられるとなんだか申し訳ないなく思ってしまう。
「それで何ですか?」
「エリナの瞳の事を聞きたいと思って」
「な、何だそちらですか」
他にどちらがあったんだ?と思っているとエリナが小さい声で「アロイスは鈍感さんです」と気付かないくらいの大きさで頬を膨らませていた。
そっちかー。その事を直接尋ねる勇気は僕にはありませんので、勘弁して下さい。心の中で謝ろう。
「この瞳ですか…」
冷静になったエリナが言いにくそうにしているので。
「言いたくなければ言わなくて良いから気にしないで」
「いえ、アロイスになら話しても大丈夫です」
「僕になら?それって本当は話てはいけないことなんじゃ?」
「それを含めてアロイスには話しても大丈夫だと確信していますので」
信頼が重いこれで僕が、エリナの思っているような人物じゃなかったら危ういぞ。
「そこまで信頼してくれるのは嬉しいけど、あんまり信用し過ぎるのも駄目だよ」
「ちゃんと信用出来ると言えるだけの根拠もありますから、大丈夫ですよ」
「根拠?まだ出会って2日もう経っていないのに何故そこまで信用出来ると、言い切れるの?」
「そこにもこの瞳が関係するのです。簡単に言ってしまうとこの瞳は、嘘が分かるのです」




