アロイスと母の攻防
「は、母上それはいくらなんでも酷いのではないですか」
「酷くありません。先程はあえてキツイ言い方をしましたが、そもそも貴方はまだ5歳なのよ?そんな幼い息子を1人で練習させる方がおかしいでしょ」
そう言われるとそうだ、僕はまだ5歳だった。
うん、普通の家庭なら5歳児に危ない事をさせる訳がないな。だが諦めない、ここはなんとしても譲れない事案だ。
「母上の仰る事は分かります。確かにただの5歳児には危険な事ですね」
「そうよ、わかったのなら約束を守りなさい」
「しかし母上、ぼく、いえ私はお披露目会の時にデブロン侯爵様に言われました。幼いからといって失敗が許されるわけではない、親に恥をかかせるなと、なのでこの魔法を極めしベルク伯爵家に生まれたのにも関わらず、中途半端な魔法使いにはなってはいけないと思います」
「それは確かにそうね、中途半端な魔法使いになってはベルク伯爵家の汚点になってしまうのもまた事実。でもねアロイス、貴方の兄は私との約束をしっかりと守っていても立派な魔法使いになれるだけの技量を見せているわ」
「母上、私の魔法適性をお忘れですか?私は全てに適性があり尚且つ、空間属性なる未知の属性まであるのですよ?今から人一倍努力しなくてはただの器用貧乏になりこのベルク伯爵家の汚点に繋がるかと思います」
大人顔負けの演説もといそれらしい言い訳をこの一瞬で考えた自分を誉めてやりたい。
「……はぁ〜、貴方の言い分は分かったわ。器用貧乏になるのは良くないわ、でもねそれならそうなる前にどれか一つに絞れば良いのでは無いのかしら?」
ぐっ、痛いところを突かれた。その通りなのだ、器用貧乏になるくらいなら始めからどれかに絞れば良いだけのこと、だがそんな事で諦めるわけにはいかない。僕は全ての魔法を極める。
「なるほど、確かに母上の仰る通りだとは思います。しかし宜しいのですか?まだ日にちは聞いておりませんが、国王陛下に謁見しステータスを見せることになっている筈です。したがって国王陛下には私の魔法適性を知られてしまいます、にも関わらず使えない魔法がある事が露見します。そうなると困るのはベルク伯爵家ではないのですか?」
「くっ、貴方本当に5歳なのかしら?ちょっと信じられないわ。はぁ〜、分かったわ」
5歳児か疑われたが、そのうちバレる事なのであまり気にしない。
それにしても、良くやった僕。思わず自画自賛してしまうほどの成果だ。
「ただし、これから出すテストに合格したらね」
なぬっ!ぬか喜びさせてくれよって母上め。
「テストですか?僕はまだ本格的に勉強してる訳では無いので合格出来るとは思いませんが…」
「あらそう、自信がないのなら受けなくて良いわ。その代わり約束どうり1人での魔法の行使は禁止です」
勝ち誇った顔の母上に若干のイラつきを覚えながら、それを必死に隠す。
「そこまで仰るのでしたら臨むところです。どんな問題が出題されようが合格して見せます」
「良く言ったわね。言質は取ったわよ、あとで後悔しても知らないからね、フフフっ」
しまった、売り言葉に買い言葉だ。自分で自分の首を絞めてしまった。
「じゃあ、ちょっと準備してくるから待っててね」
満面の笑みで出て行く母を見送りながら後悔していた。




