箱庭の住人
今日も天使は絶賛寝床を脱走中だ。
『み゜~み♪ぴゅんー』
「何言ってっかわかんねーよ」
よくわからない音を漏らしながら、俺の手に乗っかってくる。
仕方なく指でぐりぐり押して構ってやると、頭?らしき部位を摺り寄せてくる。
ははは、かわいいやつ。時々手を溶かしてくるけど。
「……お前の本当の飼い主は、もっとまともな奴なんだろうな」
『み゜っ』
「飼い主」と聞いた途端に、指にがっしりしがみついてきた。
俺じゃねえよ。
「お前、まさか前の飼い主もう忘れたとか言わねーよな?」
伝令役の名が泣くぞ。
『む゜~ぅ?』
首をかしげてやがる。
「……俺はずっとポンコツのままだ。この国に時の流れはないからな」
『ぷ?』
「俺たちはどこにも行けない。お前も変わんねーし、お前の飼い主も、みんなだ」
『み゜!』
だから俺じゃねえって。
しがみついてくる天使をつまみ上げて、出窓に置いた聖水瓶に連れていく。
ぽつんと鎮座する瓶はうっすら発光している。俺にとってはまさに目に毒なシロモノだ。
「時間は夜と昼の間に流れる。ここにはないんだよ」
『???』
「……お前を帰す方法があるといいんだけどな」
あらゆる出来事が予定調和する世界。それなら、こいつがここにいるのも誰かが決めたことなのだろう。
理解していない様子の天使を、瓶に押し込む。
むぎゅ。と詰まった。
「……やっぱお前、太ったよな?」
『き゜ゅっ!!』
「いってえ!!」




