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気遣いできる男を書けるのに、なぜ実践できないのか

気遣いできる男を書けるのに、なぜ実践できないのか。


こんにちは。雨日です。


花粉の時期になると、我が家の朝はたいへん騒がしい。


家族は鼻をかみ、くしゃみをし、

雨日は小説を書きながら、啜り泣いている。


早朝のリビングには、なんともいえない生活感が満ちている。


家族のために、雨日は花粉症に良いと言われるハーブをいくつかブレンドし、毎朝飲ませている。


この日も、ポットにお湯を注いだ。


……のだが、その瞬間にはもう、頭の中は小説の続きでいっぱいだった。


本当なら朝食も弁当も放り出して、頭の中に次々浮かぶ続きをそのまま書いていたい。


けれど、そんなことをすれば仕事も家庭も崩壊する。


だから現実の雨日は、視線を宙にさまよわせ、夢うつつでフライパンを振る。


そしてそのあいだ、ポットの存在は、きれいさっぱり忘れていた。


二十分後。


家族が水筒にハーブティーを注ぎながら、顔をしかめた。


「ぬるい。熱々が好きなのに」


そこで雨日は、ようやく思い出した。


あ。ハーブティー。


すっかり放置していた。


悪かったな、とは思う。


でも雨日は猫舌なので、ぬるくても別にいいではないか、という気持ちも少しある。


すると家族が、しみじみと言った。


「雨日よ。書いている小説には、ものすごく気が利く青年がいるじゃないか」


――ああ、イーライか。


すぐにその名が浮かんだ。


雨日が書いている小説には、とても気の利く青年がいる。


何も言われなくても先回りして整え、

相手が言い出しにくいことまで察して処理し、

感情はあまり見せないのに、状況だけは完璧に整えていく。


武力はない。


だが、気の配り方と配慮がずば抜けていて、異例の出世を果たしている。


しかも、お茶を淹れるのがうまい。


その日の気温や湿度、相手の体調まで考えて、さりげなく最適なお茶を出す。


ミルクを少し多めにしたり、砂糖を加減したり、

落ち込んでいる相手にはカモミールを選んだりする。


家族は言う。


「そんな気が利く青年を生み出したのは、雨日ではないか」


「ああ、そうだね。そんな青年が身近にいたら助かるね」


この年齢になると、恋愛対象というより、

勤務先にいてほしいとか、娘の婿に来てくれないかなとか、そういう方向の願望になる。


だが家族は、そこで終わらなかった。


「そのキャラクターを作り出した雨日は、なぜハーブティーを放置するのだ」


え。

そこに着地する?


呆然とする雨日に、家族はさらに言う。


「キャラクターを生き生きと動かしているのは、

書き手にその素地があるからだ。生み出した本人が、なぜできない」


いや、書き手のみなさんならわかってくれると思う。


キャラクターと書き手は、別人格である。


気が利く人物を書けるからといって、本人が気が利くとは限らない。


むしろ自分にないものだからこそ、憧れて書くことだってある。


そう反論したのだが、家族はあまり納得していなかった。


それほどまでに、イーライは気が利く。


そして雨日は、気が利かない。


自分にないものだからこそ、あんな人物を書いてしまうのだろう。


なので、せめて花粉症の時期だけでも、雨日はイーライを見習おうと思う。


まずは、熱々のハーブティーをちゃんと出すところから始めたい。


……忘れなければ。


気が利くイーライが登場する連載、気づけば60万文字になっていました。


ここまで読んでくださる皆さまには、イーライのように完璧にはいきませんが、せめてハーブティーくらいはお出ししたい気分です。


もしよろしければ、連載のほうも覗いていただけたら嬉しいです。

イーライは相変わらず、気を利かせすぎています。


両親を殺した国王の妾になりました 〜復讐を誓う私と、乳母子との許されぬ恋〜 (秘密を抱えた政略結婚)


https://ncode.syosetu.com/n9067la/



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― 新着の感想 ―
女の子にモテモテな主人公を書くラブコメ作家が、現実でモテモテなわけではないのですよ(真顔)
お茶淹れた後、別のことしててお茶の存在を忘れるのあるあるですよね 自分も頻繁にやるんで共感しかないです
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