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第48話 玉石混交の兆し

 宴が終わっても尚、各所で飲み続けている者も居る中、蓮は自室へと向かった。

 扉を開き、一歩足を踏み入れた瞬間、目を開けていられない程の眩しい光に包まれた。



 薄く目を開けるとそこは見慣れた自室ではなく、辺り一面が真っ白な空間だった。



「久しぶりだね、蓮ちゃん」


「ッ!?」


「気付いた?ここは君の旅が始まった場所だよ」


 蓮は思い出した。

 異世界に行く直前、この場所で鳳凰眼について聞き、鞭刀『玉簾』を受け取ったのだ。



「紅爛鳳凰眼を手に入れたみたいだね。感想は?」


「後悔しています。この能力チカラは僕には過ぎます」


 誰にも言えなかった素直な気持ちを女性へと漏らしたが、気持ちは晴れなかった。

 目の前の女性は敬愛する凰花さくらと瓜二つだが、さくら本人ではない。

 蓮の心を癒せるのは現時点でさくらしかいないのだ。



「そっか、後悔か。それはボクのせいだ。ごめんね。鳳凰眼については後でゆっくりと話すよ」


「僕はもう、この"眼"を使いたくありません」


 蓮はいつもの癖で左瞼の上をさすりながら、目を伏せた。



「それを決めるのはまだ早いんじゃないかな?」


「でもッ!僕は無意識に紅爛鳳凰眼を使った。いつ発動するかも分からない能力チカラなんて…」


 蓮の言葉を遮り、覆い被せるように女性は言葉を紡いだ。



「それは違うよ。あれは君が使ったんだ。思い当たる節があるはずだよ。蓮ちゃんはあの時、"怒り"を感じた筈だよ」


 図星だった。

 そうではないかと薄々気付いていた。

 しかし、その推測を振り払うように努めていた。



「君は刀へと手が届かず、鳳凰眼を使うという選択をした自分自身へ"怒り"を向けたんだ。別に凰花流でも良かったのに、君は鳳凰眼に頼った」


 受け入れたくなかった真実を突きつけられ、蓮は膝から崩れ落ちた。



「鳳凰眼は六つしかない。三つは善の心を持つ者が所有する。三つは悪の心を持つ者が所有する。でもね…」


 女性は蓮の頭に手を置き、優しく撫でた。

 力強く反発しながらもするりと指を通す、そんな蓮の髪を撫でながら女性は囁いた。



「蓮ちゃんは"善の心"も持っているかもしれない」


 蓮は小さく息を漏らし、顔を上げた。



「紅爛鳳凰眼の前所有者は相手の未来を消す事に対して、疑問も違和感も後悔も恐怖も感じなかったよ。でも、君は違う」


 蓮の腕を支え、立ち上がらせる。



「"終わらぬ懺悔"紅爛鳳凰眼。懺悔することが前提の鳳凰眼なんだから、蓮ちゃんが正常なのかもね」


 立ち上がった蓮は縋る想いで問いかけた。



「今の話、どういう事ですか?」


「君はまだ可能性を残している。普通は"眼"が開き、"根源"に至り、鳳凰眼を"解放"する。そして初めて"開眼"するんだよ。蓮ちゃんは全てにおいて"逆"なんだ」


 蓮は椿と異なり、怒りを根源とする鳳凰眼の所有者だと言われていた。

 何の説明も受けず、ありのままを受け入れた上で適応した椿とは全て真逆の成長を辿っていた。



「…凰花の眼が鍵になる」


「そう。蓮ちゃんの"眼"が開けば、鳳凰眼の幅が広がると思うよ」


 以前、椿姫によって幻術を見せられ、戦の真相を知った事を思い出した。



「その時の為に私の"愛"を渡しておくね」


 女性は蓮の両手を広げ、そっと自分の手を重ねた。

 "愛"の能力チカラが青白く光り、蓮の手の中に消えていく。



「蓮ちゃんの"眼"と"紅爛鳳凰眼"とウチの"愛"が合わされば、きっと紅爛鳳凰眼は蓮ちゃんの望む能力チカラを貸してくれるよ」


 蓮には女性の言葉が理解できなかった。



「善の眼は与え、造る力。悪の眼は奪い、壊す力。蓮ちゃんの紅爛鳳凰眼は唯一、二つを同時に行うことが出来る可能性を秘めているとあーしは思っているんだ。前所有者はそこまで至らなかったけど、蓮ちゃんならもしかしたら…ね」


 ニコッと笑う女性は手を離して、蓮から一歩離れた。



「どうすれば自分の"眼"が開くんですか!?」


「それはその子次第だよ。それに開かない可能性だってある。これは賭けだ。でも賭けに負けても、紅爛鳳凰眼が君のものだという事に変わりはないわけさ」


 やるせなさが募り、ギリっと奥歯を噛み締めた。



「さぁ、そろそろ戻る時間だよ。蓮ちゃんは能力チカラに翻弄されている。いずれは能力チカラを制御出来るようにならないといけないね。ウチはここで応援しているよ」


 蓮の身体が浮き、足が床から離れた。



「それから、あまり"根源"に拘らない方が良いよ。君は他の子達とは違う。自分と向き合ってあげて」


 背中を引っ張られ、強制的に辺り一面真っ白な空間から異世界へと移された蓮は一歩踏み出した状態で硬直していたのか、ガクッと体が揺れた。



「…自分と向き合う」


 蓮は呟き、寝台へと飛び込んだ。



                  ◇


 辺り一面真っ白な空間で一人になった女性は右手を天に掲げた。



「『絶輪』を使っても、雛罌粟ちゃんのようにはならなかったか~。やっぱり君の力も必要になるみたいだね~」


 虚空に掲げた手で握っては開いてを繰り返しても何も掴めない。



「凰花 椿、凰花 蓮。似ているようで似ていない、運命に翻弄された哀れな男の子。君達がこの忌まわしい運命を断ち切るんだ」

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