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第43話 四蘭、五虎との交流

 まず最初に訪れた場所は訓練場だった。

 いつもそこには、ある人物が居る。

 つんけんしているようで心優しい弓使い。

 七杏の護衛として人質に名乗りを上げたニ猫の代わりに、一時的に部隊を纏めていた四蘭である。



 訓練場に近づくと的を射る矢の音が大きくなり、その者が如何に揺るぎない精神力を持っているのか伝わってきた。

 蓮は邪魔しないように静かに後ろに立ち、矢の軌道を眺めていた。



「何の用?」


「音が聞こえたので」


 四蘭は振り向かずに次の矢を掴んだ。



「一姉から聞いたわよ。叔母さんを連れてうちを抜けたって。どの面、下げて戻って来たのよ」


 またしても矢は見事に的の中心を射抜いた。



「一姉に呼び戻されたから?生活できなくなったから?それとも恋しくなった?」


 弓を下ろした四蘭は肩越しに蓮を見つめ、目を細めた。



「一諾さんを守る為にはこうするしかありませんでした」


 絞り出された声は四蘭に届き、その嫌味な顔を綻ばせた。



「あんた不器用なのよ。もっと人を頼るって事を学ぶべきだと思うわよ」


 蓮に向き直った四蘭は仰々しく溜め息をついた。



「…頼る」


「もしかしたら、もっと早くにあんたも叔母さんもここに戻れたかも…。って言うか、軍を抜けずに済んだんじゃない?ま、これは結果論だけどね。良い経験になったと思えば良いんじゃないの」


 蓮が顔を上げると見たこともない暖かな微笑を浮かべた四蘭がそこに居た。



「あんた、一姉に気に入られてるんだから、もっと自信持てば?私もあんた嫌いじゃないし」


 身体を半身に戻し、弓を構えた四蘭は矢を放った。

 心地よく響いた音と四蘭の言葉は蓮の心の中に優しく浸透するのだった。



                  ◇


 続いて、蓮は五虎の部屋へと向かった。

 一番の常識人だと認識している人物で、姉妹の中でも突出した頭脳を持つ才女だ。

 蓮の部屋を訪れる人の中で唯一ノックをする人物でもある。



「お待ちしていました」


 脇に抱えた本を開き、五虎の対面に座った。

 蓮は五虎から読み書きを学び、今では日常会話や文の執筆は問題ないレベルまで達している。

 この勉強会も今日で終わるだろう。



「よく頑張りました。一時はどうなるかと思いましたよ」


 取り出した菓子を蓮に渡した五虎はどことなく、怒っているようにも見え、蓮は申し訳なく謝罪した。



「もう勝手に居なくなってはいけませんよ」


 五虎の手が伸びて、蓮の頭上に置かれる。

 ぽんぽんと何度か優しく小突かれるのを蓮は黙って受け入れた。



「それから、これを」


 懐にしまっておいた紙切れを蓮に差し出す。

 そこには四つの横文字が並んでいた。



「折角、考えたのに一度も使われないのかと思いました」


 それは蓮が五虎に依頼したものだった。

 この紙切れこそが蓮の技を完成させる最後のピースなのだ。



「凄く良いです。気に入りました。ありがとうございます


 互いに清々しい気持ちとなり、蓮は五虎の部屋を後にした。

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