表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

76/191

第30話 瑪瑙との出会い

 日が落ちる前に町へ辿り着き、宿を探す事にした蓮の前方から歩いてくる一人の女性。

 紫の髪を揺らす女性は蓮にとっては目立っていたが、そう思う人は少ないのだろうか。

 町人が彼女を気にする様子はなく、女性は蓮の隣を通り過ぎようとしていた。



「綺麗な目だね」


 すれ違い様、蓮だけに聞こえる程の小さな声で囁かれ、咄嗟に振り向いたがそこに女性の姿を無かった。

 狐にでも化かされたか、などと訝しげに道を眺める蓮は早めの夕食を摂る事にした。



「あっ」


 蓮の視線の先には先程の女性が座っている。

 互いの視線がぶつかり合うと女性は立ち上がり、蓮の隣に移動して来た。



「何か?」


「少しお話ししたいなって。ダメかな、凰花 蓮くん」


 警戒心を悟られないように努めていたが、それは無理な話だった。



「初めましてだね、蓮くん。私は瑪瑙メノウ。よろしくね」


 挨拶は返したが、納得のいかない表情は隠せなかった。

 そして、そんな蓮を見て瑪瑙と名乗る女性は笑うのだった。



「何故、僕の名前を知っているのですか?」


「ん~。知ってるからかな。それにしても凄い警戒だね」


 答えになっていない返答を述べる瑪瑙を見据え、感情を抑えるように息を吐いた。



「君はあの子よりも怖いね」


 その言葉で蓮の指がピクリと動いた。



「それは…ッ」


 蓮の唇に瑪瑙の人差し指が優しく触れる。



「君はしっかりしている様に見えるけど、もう少し大人になるべきだね。普通にお話をしようよ。私はあの子を良く知ってるよ」


「…分かりました。あの人について教えて下さい」


 快く了承した瑪瑙は机に肘をつき、蓮に挑発的な目配せを送った。



「何故、凰花 椿は女になれるのですか?」


「それは私も知らないなー。あの子はここに来た時から女の子になれたからね。強かったでしょ?」


 瑪瑙は何故か自慢気だった。



「男の時よりも強かったのは間違いありません。でも、あれは凰花流とは違う」


「あの子は君よりも苦労したからね。純粋な凰花流は使えないけど、君に手傷を負わせた」


「そうだ。僕の大切な血を流した」


「優しいね。私はね、あの子と同じくらい君に興味があるの。さっきの質問だけど"何故、女になれるのか?"それは君にも言えることでしょ」


「僕は男ですよ」


「腹の探り合いは止めにしようよ。私は全部知ってるよ」


 目の前の女性は只者ではない、信用するなと心が警戒音を鳴らしているのが聞こえるようだった。

 瑪瑙はジッと蓮を見つめて話を続ける。



「君は確かに強い。あの子よりも基礎が出来ているし、経験も豊富だ。でもね、あの子はこの世界を救っているし、自分の中に潜む"魔物"を我が物としているよ」


 蓮の視界が歪んだ。



「君は内に眠る者をまだ知らない。だから、あの子と対等にはなれていない。いくらやっても勝てないよ」


「僕はあの人を連れて帰らないといけない!拒否するなら倒してでも、引き摺ってでも帰る!」


 机を叩く音が響き、一瞬で店内は静まりかえった。



「あまり大きな声を出しちゃダメだよ。もう一度言うね。蓮くんは椿姫ちゃんには勝てないよ」


 言いたい事を全て吐き出した瑪瑙は代金を置いて立ち去り、一人残された蓮は力なく椅子に座り直して一気に水を飲み干した。



 凰花流に関して基本的な事は自分の方が上だと自信を持って言える。

 しかし、凰花 椿の使用する凰花流合気柔術は何かが違う。

 そして眼を持つ者と持たぬ者という差もあった。

 今までは"乙女解放"と鞭刀『玉簾』だけで対処出来たが、これからの相手は凰花家の人間であり、これまでのように一筋縄ではいかないだろう。

 早く自分の眼を手に入れなければならない。

 そんな自分自身への憤りと焦りを隠しきれなかった。



 翌朝、阿軍領へと向けて出発した蓮は昨日の事が脳裏に焼き付いて離れなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ