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第19話 協力

 分厚い門が開き、大量の敵兵が連合軍を討ち滅ぼさんとして雪崩れ込んで来る。

 連合軍としても籠城戦をするつもりはなく、真正面から迎え撃つ形となった。

 


 斥候からの情報を集めて纏める五虎は部下に的確な指示を出して、戦況を少しでも有利なものへ変える手段を模索していた。

 一蓮や四蘭の仕事はまだ先である。これは盤上での戦。所謂、頭脳戦だ。

 そして、最後のピースが綺麗に嵌った時、五虎は目を輝かせた。



「出陣します」


 たった一言だけの進言で一蓮は速やかに行動を開始した。

 姉妹だからこその連携なのだろう。更に驚くべきは誰もが一蓮や五虎の指示に意を唱えないという点だ。

 命令違反や命令無視は以ての外だが、それでも少ない言葉では不安になる事も多い筈だ。

 しかし、この江軍は一矢乱れぬ陣形で前線の伊軍を目指した。



「それで、あの人への言い訳は?」


「伊軍への援軍。敵は多く、伊軍だけでは絶対に抑え切れません」


 本当にそうなのかと疑問が浮かぶ。

 妹の頭脳を信じていない訳ではない。しかし余りにもそれだと呆気ない。

 軍議で大見得を切った九条 幾斗の実力はこの程度なのか。何か別の狙いがあるのか。

 暫し考えたが、一蓮は思考を放棄した。

 自分の仕事は考える事ではない。それは信頼する妹に任せれば良いのだ。

 自分は兵を鼓舞し、敵を殲滅する。

 その為にここに居るのだ。



「我が軍は皇帝軍を側面より叩く!間違って伊軍の兵を斬るな!」


 いつもの語尾を消した王の姿がそこにはあった。

 その圧倒的なカリスマ性を目の当たりにした蓮はビキビキと全身の震えを感じていた。

 一蓮を筆頭に前線へ赴いた江軍は蓮に頼る事なく戦いを進めた。

 伊軍の武将も順調に敵将を切り捨てており、勝利は目前だった。



                  ◇


 後方では阿軍の鏡華と椿が伝令兵からの情報を聞き、異なる反応を示していた。



「ふぅん。伊軍の天の住人は思ったよりもやるわね」


 腕を組みながら称賛する鏡華の隣で椿は苦虫を噛み潰したような表情だった。

 以前の異世界では伊軍は敵将を捕縛するだけで命を奪わなかった筈だ。

 何故、今回は殺したのか。月皓の独断か。九条 幾斗の命令か。それとも操られているのか。

 様々な疑惑が浮かんでは消えていく。

 椿はこの戦場において、一人だけ別の事柄で混乱していた。

 


                  ◇


「江軍の王様、ご助力ありがとうございました」


 素直に頭を下げる伊軍大将に対して、一蓮は悪い印象を受けなかった。



「王様、一つご相談があります。ここで同盟を結んでおきませんか?俺達には共通の敵が居る筈ですよ」


 一蓮はチラリと五虎を見下ろした。五虎も一蓮を見上げており、視線が交差する。

 確かに鏡華率いる阿軍の規模は大きく、天の住人である"悪魔"と"天使"が居る。

 更に鏡華は天下統一を目指していると噂がある。いずれは自分達の領土へと攻めて来る可能性は非常に高い。

 互いの利益の為に手を組んでおく事も悪くないと思えた。

 しかし、一蓮は九条 幾斗の提案を聞き入れなかった。



「同盟の話は断らせて貰う。今回限りの協力というのであればお受けしましょう」


 九条 幾斗はあっさりと二つ返事し、一礼して自陣へと戻って行った。

 別れ際、九条 幾斗が蓮の方を見て不敵に笑ったのが気になる。

 蓮は不審に思いながらも五虎と共に一蓮の後ろを歩いた。



「君、君。あの少年には要注意かな」


「私も同意見です。協力はしても、同盟関係は控えるべきと判断しました」


「九条 幾斗。僕と同じ世界から来たのは間違いないと思いますが…」


 先を見据えての協力体制だが、この選択が正しかったのか、それは誰にも分からない。

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