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第17話 抗えない未来

 凰花 椿は自室に篭り、次に何が起こる可能性があるのか考えていた。

 以前の世界なら次は皇帝軍を取り込んだ於軍との戦いだ。

 椿は鏡華達と異なり記憶を有しているが、それも完全なものではなかった。



 無事に瑠捺を仲間に引き入れた椿は警邏部隊としての仕事も順調にこなした。

 しかし、既視感が強く、以前よりも楽しくない。

 淡々と紡がれる言葉、淡々と進む仕事。それらは椿にとって作業になっていた。

 そんな苦痛を誰も察する事は出来ず、以前よりも阿軍の者達と椿との心の距離は縮まっていなかった。



 そして、もう一つの悩みは凰花家の男の行動を把握出来ないという事だ。

 居場所は江軍で間違いないが、あの一蓮が囲っている事が厄介だった。一蓮は大胆だが、慎重過ぎる程に敵を警戒する面も持ち合わせている。

 更に椿は初めて一蓮と出会うまで江軍がどのような行動を起こし、活躍をしていたのか知らない。



 貴重な紙に時系列を記載し、今の状況を照らし合わせていく。

 しかし、何かに拒まれるように思考が纏まらない。

 苛立ちから髪を無造作に掻き乱していた時、扉の先から明峰の声が聞こえた。

 連れ去って玉座の間に向かうと、聞きたくなかった言葉を鏡華から聞かされた。



「皇帝軍が攻めてくるわ。私達は連合軍を結成して対抗する事になりそうよ」


「なんでだッ!?」


 机を叩き、立ち上がった椿を見上げ、武将達はどよめいた。

 椿はこんなにも感情的な奴だっただろうか、と疑問が浮かぶ。椿についてあまり知らない鏡華達は戸惑った。

 それでも鏡華は参加を表明し、当然誰からも異論の声は出なかった。

 始終、上の空で何かをブツブツと呟く椿を置き去りにして話は纏まってしまった。



「大丈夫か?最近のお前は働き過ぎだ。於軍の残党狩り、城下の区画整理、調練。どれもそんなに急ぐ事は無いのだぞ」


 海璃からの優しい言葉は椿の心を落ち着かせた。



「俺がやらないといけないんだ。俺が皇帝を救うんだ」


 ハッと顔を上げた椿は海璃の肩を掴み、叫んだ。



「そうだ!そうだよ、海璃!皇帝を救うんだ。あいつが…我夏葉が来る。確か一つ目、いや二つ目の関所で我夏葉が俺達の本陣に来るんだ。そこで皇帝を救出する為に協力する。それから…助けて……伊だ!九条 幾斗の所に預けるんだよ!」


 まだ玉座に座る鏡華を見上げると、その表情は呆れや哀れみを含んだものだった。



「落ち着きなさい、椿。何故、皇帝を救う事になるのかしら?私達は国から目をつけられ、攻められる立場なのよ。それとも誰か裏で操っている人物が居るとでも言うのかしら?」


 頬杖をつく鏡華の声は子供に言い聞かせるような声色だった。



「…操る。そうか、あの女か!俺と同じ眼を持つ女が居る。そいつが黒幕に違いない」


 溜め息を一つ零した鏡華は椿の進言を聞き入れたが、内心穏やかではなかった。



「椿の話を信じるのですか?」


 鏡華は目を閉じて黙っていたが、ゆっくりと目を開いた。



「そうね。於軍大将の居場所、瑠捺の仕官。そして皇帝軍との戦い。天の住人とは言え、未来が読めるとは思いたくないわね」


 鏡華は欲しいものは自分で手に入れるべきであり、他者からの施しは不要という考えを持っている人物だ。

 当然、未来が決まっているという事も信じたくはなかった。



「それとも…知っている…か」


「知っている?」


 その時、鏡華を激しい頭痛が襲った。

 まるで何かを思い出す事を拒むように頭の中に霧がかかったような感覚だった。



「瑠捺に監視させますか?」


「…止めなさい。あの二人は良い関係を築いている。好きにさせましょう」


 この頭痛の正体は分からないが、何者かの能力チカラが働いている事は明白だった。

 於軍討伐以前の記憶は曖昧であり、知り合って間もない椿に対しては何故か安心感や信頼感がある。

 このままではいけないとは分かっているが、どうすれば良いのか分からない。

 まずは目の前の敵を退ける事を優先とした。

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