第15話 理由
戦を終えて、穏やかな日々が戻ったが、一蓮達は事後処理に奔走していた。
その間も蓮は暇を持て余しており、城の掃除などの雑務を積極的に手伝った。
ようやく一蓮の仕事が落ち着き、二人は一蓮の自室で向かい合い座っている。
戦の最中、一蓮は蓮に探し人に会って来いと言った。実は阿軍に自分の求める人物が居ると知っていたのではないかという疑問を晴らす為に時間を作って貰った。
「この国には天の国の住人が四人居るかな。うちには君が、阿軍には男女一人ずつが、伊軍には男が居ると噂になっているかな」
この噂はもっと後に広がる筈だったが於軍討伐が大事になり、蓮や椿姫の活躍が目立った為、早くも浸透してしまったのだ。
「だから、君の探している人物が居るとしたら、そのどちらかの軍ってわけかな」
他軍の天の住人を実際に見た事はないと語った一蓮は茶を啜った。
蓮は更に追求したが、それ以上の情報を得る事は出来なかった。
「次は私の番かな。君が探している凰花 椿はどんな人かな?」
「面識がないので顔は分かりません。性別は男。年齢は十七~十八程度。それ以外は知りません」
蓮の持つ情報の少なさに一蓮は呆れた。
蓮自身もこの状態での探索は容易ではないと分かっているつもりだ。
「そっか。じゃあ、何故、その子を探しているのかな?面識もない人間を君はどうするのかな?」
沈黙が続き、決心したように蓮はゆっくりと言葉を紡いだ。
「凰花 椿の母親は凰花家の現当主を務めています。当主は僕の師でもあり、その人から息子である凰花 椿について聞きました。凰花家は僕のような特例を除いて男子禁制です。だから凰花 椿も本家には居ませんでした」
一蓮は黙って話を聞きながら、目の前の人物を舐め回すように眺めていた。
嘘を言っていないか探る為によくやってしまう癖である。
「現当主が失踪した凰花 椿を探しています。だから、この世界から僕達の居るべき世界へ連れ戻します。その時に抵抗するようであれば、気絶させてでも連れて帰ります」
話を書き終えた一蓮は更に呆れた。
「聞いて損したかな。他人の家の事に口出しするもんじゃないかな」
「…ついでに僕の身の上話を聞いて下さい。僕には両親がいません。今は保護者が居ますが、それは特殊な関係で純粋な親子ではありません。だから、羨ましさと苛立ちを抑えきれなかったんです」
この話は無駄だ。
一蓮に身の上話をしたところで何も解決しない、救われるわけでもないと分かっているが、どうしても止まらなかった。
俯きながら話していた蓮が自嘲気味に笑い、顔を上げると一蓮と目があった。
その瞳は先程までの詮索を目的としたものではなく、ただひたすらに慈愛に満ちていた。
「君には親が必要だった。でも、きっと君を産んでくれた母上は君の幸せを願っているかな。それは凰花 椿の母も、私達の母も同じかな。形は違っても思いは同じ筈…かな」
「僕もそう信じています。その事を凰花 椿に伝えたいんです」
「そっか、そっか。君も結構、無茶苦茶かな。人の事は言えないかな」
ほくそ笑む蓮は礼を述べ、一蓮の部屋を後にした。
夜空を見上げ、次のイベントでは凰花 椿と接触できる事を願い、自室に戻って行った。




