第11話 囚われた妹と護衛の兄
於軍は一蓮達の活躍によって撃退されたが、それは動乱の始まりに過ぎなかった。
きっかけは宇軍大将による単独な宣戦布告だったが、圧倒的な兵力を持つ於軍を持て余した為、『良からぬ動きをしている』と適当な理由を付けて、遂には各軍を集結させて於軍を討つという話に膨れ上がった。
宇軍大将は阿軍、伊軍、宇軍、そして江軍の四つの軍を一時的に束ねる立場になった。
時を同じくして宇軍の使者が来訪し、一蓮達にとって吉報を知らせた。それは軟禁している兄妹を解放するので、より一層励めという内容だった。
一蓮達は九人姉弟であり、うち四人は宇軍に人質として捕られている。
「これからも前線で動いて貰う事になりますが、特に力を隠す必要はありません」
軍議中、五虎は蓮の話を始めた。
蓮の戦い方は良い意味でも、悪い意味でも異様に目立つ。当然、蓮が武功を上げれば宇軍大将の元へ報告がなされるだろう。五虎はそれすらも利用しようと考えていた。
数日後、一群が町に到着し、凱旋パレードのようなお祭り騒ぎとなっていた。
その中央には一人の少女が居て、屈強な兵士達に囲われながら城へと向かって行く。
「一姉様!四姉様!五姉様!」
城門の前で今か今かと待ち侘びていた姉達の姿を見つけ、全力でその腕の中に飛び込んだ少女は瞳に涙を浮かべていた。歳の頃は蓮と同じで、クリクリとした目が印象的だった。
無粋な真似はしないように影に隠れている蓮は近場にいた兵士に声をかけた。
「あの人が一蓮さん達の妹さんですか?」
兵士はギョッと目を見開いた。これまでこの軍において一蓮の名を呼べるのは姉妹達だけだった。
しかし、それが蓮だと分かり、兵士は胸を撫で下ろした。
「天来人様でしたか。そうです。あの方がお館様の妹君にあらせられます。その名は私の口からは…」
蓮の隣に立つ男は一つの部隊を任せられている程の人材だが、それでも一蓮の名を呼ぶ事は叶わない。
会話のしにくさを感じつつも蓮はその少女を遠目から眺めた後に、部外者の自分がこの場に居る必要性もないだろうと自室へと引き上げた。
「一姉様、噂の天の国の住人とはどのような人物でしょうか?」
蓮を紹介するつもりだったが、既にその姿はなかった。
「どこから来たかなんて関係ねぇ。そいつは信用して良いのかよ」
一蓮よりも更に背の高い男が訝しげに一蓮達に問いかけた。
「今まで行動を共にして怪しい点は無かったわよ。そこそこ優秀だと保証するわ」
普段つんけんした態度の四蘭だが、意外にも蓮の評価は高かった。当の本人はそんな事は知らず、自室に引きこもっている。
男は五虎の方を向いたが、上目遣いの妹は頷くだけだった。
「二猫も勝てないかな。この前の戦もほとんどあの子の手柄かな。ちなみに私は二度負けているかな」
自分の敗戦をこんなにも嬉々として語る姉を初めて見た二猫は、挨拶にすら来ない優秀だが無礼者の天の住人に興味を持った。
「さて!部隊の再編成をしたら、すぐに出発するかな。五虎、あの自由人を呼んで来て欲しいかな」
移動を開始し、駐留地に到着すると一蓮は軍の代表者として会議に赴いた。
共同戦線だと聞かされていたが、各軍の部隊を展開し於軍を各個撃破していく方針に変更され、一蓮達は更に移動する事となった。
本来の目的を達する為にもこの異世界で起こるイベントをこなして行く。ただその為だけに一蓮達と共に居るのだと自分に言い聞かせながら、蓮は行軍を開始したのだった。




