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第7話 突然の知らせ

 数日間で簡単な読み書きが可能となった蓮は部隊調練にも何度か参加し、軍での居場所を確立していった。

 机を向かう五虎へ労いの言葉を掛けて、茶と茶菓子を置く。秘書の真似事も日常になりつつあった。

 窓から差し込む光は暖かく、現実世界よりも空気はカラッとしており、肌のベタつきが少ない。実に過ごしやすい環境だった。



「ありがとうございます、蓮さん」


 手を止めて礼を述べた後、伸びをした五虎も蓮と同様に窓越しに空を見上げた。

 何故、五虎がこんなにも忙しいのか。それは一蓮の仕事も請け負っているからである。姉の負担を少しでも軽くする為の配慮だった。



 彼女達にとっては忙しい時期だが、蓮は暇を持て余している。今の蓮に彼女達を手伝える事はない。

 しかし、仮に手伝えたとしても蓮はそうしないだろう。ここは彼女達の世界であり、自分の世界は現実世界だけだ。

 この世界の秩序を乱すわけにはいかない。だからこそ、蓮は彼女達と馴れ合うつもりはなかった。

 そんな事を考えていると、部屋にノック音が響いた。

 五虎が入室を許可すると勢い良く扉が開き、一人の文官が駆け込んだ。受け取った書簡を読む五虎の隣から蓮も覗き込む。



「ッ!?蓮さん、申し訳ありませんが、姉さん達を連れて来て下さい」


 五虎の指示を受け、蓮は部屋を飛び出した。

 一蓮の行く宛には心当たりがある。

 裏庭の中心に置かれた机と椅子。そこに一蓮の姿があった。机に突っ伏した一蓮に耳打ちする。

 ガバッと起き上がった一蓮の頭部を避けつつ、蓮は走り出した一蓮を見送った。

 続いて訓練所に向かった蓮は兵達に指南中だった四蘭にも同様に耳打ちした。



 四蘭と共に玉座の間に向かうとすでに一蓮と五虎が話し合っていた。

 届いた書簡の差出人は宇軍の大将で内容は於軍討伐の知らせだった。

 誰も知らない所で宇軍は単独で於軍へ宣戦布告し、戦を始めていたのだ。

 そんな宇軍からの援軍要請なのだが、一蓮達からすると面白くない話である。自分達が勝手に始めた戦に巻き込まないで欲しいものだ。

 これがこの軍の立場だった。

 宇軍からの目がある以上、表立って動く事は許されず、水面下での汚れ仕事を任される。そんな使われ方に一蓮達姉妹は嫌気が差していた。



「仕方ないかな。恩着せがましく行こうじゃないかな。勿論、蓮も出陣するかな」


 一蓮の語尾は分かりにくいが、それはお願いではなく命令だった。

 拒否するつもりのない蓮は黙って頷く。



「方針は決まりました。四蘭姉さん、すぐに出陣の準備を。輜重隊の準備もお願いします」


「分かってるわよ。すぐに出られるようにするわよ」


 何故、こんなにも焦っていたのかと言うと、その援軍要請は数日後の話ではなく、今すぐに来いというものだったからだ。

 早々に軍議を終了し、それぞれが役割を果たす為に城のあちこちに散って行った。

 取り残された蓮と一蓮は顔を見合わせた。



「まぁ、大体いつもこんな感じかな」


 お手上げのポーズを取っているが、これっぽっちも困っていない表情だった。



 蓮も自室へ戻り、戦闘用の服に着替えた。

 これも一蓮から貰った物で赤を基調として袖や襟は金色で縁取られていた。

 ド派手な服装であり、蓮の趣味ではなかったが、左腰に得物を携えると印象が変わった。

 鞭刀の柄には煌びやかな装飾が施されており、派手な服装の腰にさす方がしっくりきている。



「折角の豪華な衣装を血で汚す訳にはいかないな」


 予定通りの時間に出立した江軍は宇軍の増援という形で始まりの戦場に足を踏み入れた。

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