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第4話 出会い

 生い茂る木々の隙間から洩れる太陽の光が眩しくて、その者は目を覚ました。



「ここは…」


 立ち上がり、周りを見渡したが広大な森が広がるだけで何も無かった。

 少し歩くと開いた場所があり、その中心部には大きな石があった。

 文字が彫られているが、石に這い蹲るように成長した苔が邪魔で読めない。

 その時、ガサッと音を立てて木々が揺れた。茂みから出てきたのは背の高い女性だった。



「君、君、こんな場所で何をしているのかな?」


 物腰は柔らかいが、何を考えているのか分からない笑顔の女性である。

 嘘は吐かない方が良いと判断し、自分の身に起こっている出来事を素直に伝え、今居るこの場所について聞いた。



「ここは私達、軍の治める地かな」


「ちょっと待って下さい。軍って何ですか!?」


 きょとんとする女性から顔を背けて思考を巡らせたが、頭の中に霧がかかっているような感覚に襲われた。その者はこの場に辿り着く前の記憶を失っていた。

 小さく唸っている間も自分の事は何も思い出せない。



「今は情勢が安定していないから昼間とは言え、子供一人で出歩くのは感心しないかな」


「…そうですか。分かりました。ご忠告ありがとうございます。これで失礼します」


 頭を下げ、背を向けることなく後ずさり始めた姿を見て、余りの引き際の良さに女性は関心しつつも少し意地悪をしたくなった。



「それとも、私の首でも取りに来たのかな?」


 これまでの笑みが消え失せ、鋭い眼差しがその者へ向けられた。



「違うと思います。それなら僕は気付かれる事なく、貴女の首を刎ねているでしょう」


「へぇ。随分と強気な発言かな」


 何故、自分がこんなにも自信満々に言い返したのか分からなかったが、自然と言葉が口から出ていた。

 気を緩めた瞬間、女性はその者を目掛けて走り出した。

 自分に向かう女性を敵と認識した上で、ゆっくりと構える。

 勢いを付けて殴りかかろうとする女性の拳を華麗に避けたその者は女性の右腕を掴み、捻り上げた。



「ッ!?」


 先程までと同一人物とは思えない程の軽やかな身のこなしと、久しく感じた事のなかった屈服感に女性は歓喜した。

 そんな事はつゆ知らず、反射的に女性の腕をへし折ろうとしているその者は我に返った。

 掴んでいた女性の腕を離し、謝罪しながら一歩下がる。

 何故、自分にこのような力があるのか。

 身体が勝手に動いたにも関わらず、この感覚に覚えがあるような気がしてならない。

 女性は右肩を庇いながら、その者に近付いた。



「強い!気に入ったかな!君、名前は?」


 女性からの問いかけに答える為に必死に思い出そうとしたが、すんなりと名前が出てこない。

 女性は不思議に思いながらも返答を待った。



「…蓮。名前はレンだ!」


 ようやく自分の名前を思い出したその者は意図せず大きな声を発し、自分でも驚いた。



(蓮…。これが運命ってやつかな)


 女性は嬉しそうに手を差し出した。



「ようこそ!私は君を歓迎するかな。行く宛が無いなら、我が城に来れば良いかな!」


 その者は悩んだが、実際に行く宛はない。

 この女性について行き、自分に不都合があれば逃げれば良いと考えて女性の手を取った。

 


 連れ添って森を抜けた二人は町に着いた。町を我が物のように自慢しながら堂々と歩く女性に手を引かれるその者は町人からの視線を受け、非常に居心地が悪かった。

 苦笑いを返し、先程から握られている手をなんとか解こうとするが、女性は離してくれない。



「私と手を繋ぐのは嫌かな?」


「嫌ではないですが、恥ずかしいです。皆が見てますよ」


 視線を周囲に向けて自分達の置かれている状況を必死に伝えようとしたが、それは取り越し苦労だった。



「町人が私を見るのは当然の事かな。それに自分達の王が見知らぬ人物を連れて来たらびっくりするのも当然の事かな」


 飄々とした態度で繰り出される言葉に驚愕するその者は女性の手を振り解く為の抵抗を止めた。


 町の最奥には大きな門が構えられており、屈強な二人の門番が守護している。

 構わずに歩き続ける女性に頭を下げた門番が大門を開いた。

 ここでの門番の振るまいを見て、自分の手を握る女性が本当に王なのだと理解した。

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