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第33話 豹麟の手紙

 椿は間に合わなかった。

 伊軍との戦を終え、早々に帰還したが豹麟は既に生き絶えていた。

 今回の戦において椿が何故本陣を強襲するような強行手段を取ったのか。

 それは危険を冒してでも伊軍の指揮官を叩き、早く戦を終える必要があったからだ。



 椿は豹麟から預かったという文を明峰から受け取った。この手紙は瑞竜と篝水仙の修復、改修を依頼した時に預かったと言う事だった。

 しかし、椿に渡すのは自分が死んだ時と指定されていた。



―――――


まさかぬしが男であり、女であるとは思いもしなかった。そうと分かっていれば瑞竜をもっと軽量化したというのに…。

以前、少しだけわっちの話をしたと思うが、ある事をきっかけにわっちは怒り、悲しみ、憎しみを剣に向かって発散するようになった。

その結果がこの町にある噂でありんす。

行き着く先は闇。わっちは一度"堕ちた"。

わっちの剣は"名刀"から"妖刀"へ変わりんした。でも、安心せい。篝水仙は名刀として鍛え直した。

最期にぬしの剣を打てて良かった。

わっちの事は良い。全てを忘れ、ぬしの心に従うと約束してくりゃれ。


―――――



 文を握り締める椿の唇は揺れていた。自分はどうすれば良いのか。



 豹麟を無実の罪で連れ去られた"怒り"。

 自分に関わった人を失う"悲しみ"。

 命令を下した九条 幾斗への"憎しみ"。



 それらの感情を押し殺し、葛藤を続ける椿はギリギリの所で墜ちずに耐えていた。

 恐らく、この手紙が無ければ椿は墜ちていただろう。



 椿はまだ知らない。今回の豹麟連行事件に九条 幾斗が一切関わっていない事を。

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