第18話 決戦前夜
本陣へ帰還すると手当を終えた空璃と鏡華が椿姫達を迎え入れた。
既に報告がなされており、鏡華は於軍の武将に我夏葉との話を共有した結果、今回の戦について於軍の兵達も詳細は聞かされていない事が判明した。
最後の関門も突破した連合軍は皇帝の住う王宮が見える位置に陣取っていた。
ここが決戦の地であり、阿軍は皇帝を於軍から救い出さなければならない。混戦になる事は承知の上だが、他軍の助力が見込めない以上、自軍だけでやり遂げるしかない。
鏡華は最後の軍議を開き、隊の配置を言い渡した。軍議を終えようとした時、慌しく伝令兵が天幕内に入ってきた。
連合軍の総大将が阿軍を後方へ配置する意向を固めたという内容だった。
先日、鏡華が提言した事が今更に承認されたのだ。鏡華は珍しく、忌々しく舌打ちした。
作戦を変えざるを得なくなった阿軍は軍議を仕切り直し、最終確認したのだった。
最終決戦時の前線は宇軍と江軍、その後ろに伊軍、そして阿軍という配置になる。本当は一番乗りしたいが、そう簡単に事を進めさせて貰えないようだ。
我夏葉から聞いた話では、皇帝は黒い衣服を纏う集団に囲われているという。
実際には直属の守り手がいるが、さらにそれらを覆うように護衛しているようだ。
その黒い衣服を纏う集団というのが、於軍から派遣された連中だと言う。まるで、監視しているかのような疑心が募った。
そんな懸念を持つ椿は、敵を倒して我夏葉との約束を守るつもりだ。
しかし、鏡華の考えは違う。
皇帝陛下を救い出す事が出来れば大きな貸しになる。例え、於軍の討伐に失敗したとしても、皇帝軍と関係を持てるのであれば、大きな収穫だ。
覇道を歩む鏡華にとっては、全てが足がかりなのだ。
椿は天幕の中でフード付きロングコートを脱ぎ、一息ついていた。
この数日で凰花流を連発している椿の身体は悲鳴を上げていた。少しでも休むように指示を受け、素直に従っている。
気になる事は沢山あるが、今は自分の"眼"について考える事にした。
凰花家のごく一部の女子は神経を覗く眼を持つ。いつ得られるのか。何故、得られるのか。どの条件下で得られるのか。椿を含めて、今の凰花家の人間でその理由を知る者はほとんど居ない。
更に椿はその眼の先に足を踏み入れた。澪標。
その能力は相手の神経系を通して、記憶などの情報を盗み視るもの。正確には、対象者の過去を読み解くものである。
能力は知っているが、どう扱うのか椿は理解出来ていない。
これからの戦いにおいて、その能力を知る事になるのだが、これは偶然手に入れた能力ではない。
凰花 椿に与えられた宿命なのだ。それに気付くのはまだまだ先の話である。




