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第1話 鍵と道

 椿姫と蓮は辺り一面真っ白な空間へ侵入し、凰花 嶺と再会を果たした。



「…本当に来たのか!?」


「何の説明も受けていないから苦労したわ。ねぇ、蓮」


「そうですよ。まさか、ここまで想定内だとは思ってもみませんでした」



―――


 蓮が凰花 躑躅つつじと凰花 雛芥子ひなげしの未来を消した事で艶揶鳳凰眼が消滅し、椿姫には死の事実が、蓮には性別と名前が返還される筈だった。

 しかし、椿姫は梦幻鳳凰眼と過去に作用していた潤邏鳳凰眼を利用し、過去の自分の魂と現在の自分の魂を繋いでいた為、死亡する事は無かった。

 蓮は内に潜む者――リサが既に消滅している為、何も返還させず元の蓮菊という少女の姿に戻る事は無かった。



 二人は嶺と接触する為に辺り一面真っ白な空間を探し続けた。

 数年を費やしたが、悠久の時間を生きる二人にとってはたったの数年だった。



 嶺の創造した空間を見つける"鍵"は椿姫自身だった。

 椿姫は愛の鳳凰眼により条件付きで少女を与えられ、不老不死にもなっている。

 更に創造を司る能力により唯一、凰花流合気柔術をオリジナル技へ創り替える力を持つ。

 これこそが"鍵"だった。



 ある日、家の鍵を忘れた椿姫が玄関を開く為にオリジナル技――百花風鍵ヒャッカフウケンを発動した際、別の扉を開けてしまったのだ。

 その扉と言うのが辺り一面真っ白な空間への入り口だった。



 辺り一面真っ白な空間へ足を踏み入れた椿姫と蓮だが嶺に逢う事は出来ず、途方暮れた。

 蓮はどこまでも続く天を仰ぎ、光る何かを見つけたが上に行く手段は無いように思えた。



「階段でもあれば良いのにね」


 何気ない椿姫の呟きを聞き、蓮は駆け出した。

 自宅に保管してある鞭刀『玉簾』を持ち出し、久々に振り上げる。

 手の中でカシャン、カシャンと音が鳴り、あの頃を思い出させた。

 あれは異世界で椿姫との決着をつけた時だ。

 そんな彼女との関係性が百年以上も続く伴侶同然となったのは自分でも驚きだった。



「天環・久遠回廊!」


 天上へと伸びる鞭刀『玉簾』は何も無い空間の"道"となった。

 こうして、横並びになって螺旋階段を昇りきった二人は巨大な鳥に詰め寄られる嶺を見つけたのだった。



―――

――


「それで?貴女は私達に何をして欲しくて、ここへ来る為の"力"と"刀"を与えていたの?」


「椿姫さん。そんな、いきなり」


「良い。オレは…」


「私達を利用したでしょ?」


 椿姫の挑発的な瞳が光る。

 水を得た魚のように活き活きとしている彼女を見るのはいつぶりだろうか。



「そうだ。あーしは家族を利用した。コナタは救われたかった」


「ほらね、私の言った通りだったでしょ。結局、雛罌粟さんを含め、私達も都合の良い駒だった訳ね」


 椿姫は自分達を見下ろす霊鳥へ視線を移し、指を差しながら声を張り上げた。



「ちょっと貴方!私達のおばあちゃんを解放してちょうだい!眼は戻ったのでしょ!!」


「口のきき方を習わなかったのか小娘。わたしはお前達の祖先でもあるのだぞ」


 霊鳥の子を生ませる為に身を捧げたファン 甜満テンマの娘が嶺であれば、その子孫に当たる椿姫と蓮もまた霊鳥の血を継ぐ者達という事になる。



「やめましょう」


 静かに呟いた蓮は椿姫の隣に並び、巨大な霊鳥を見上げた。



「貴方にとっても僕達は必要な存在の筈です。嶺様を鳳凰眼の呪いから解放しない限り、愛の鳳凰眼は貴方の眼窩には戻らない。そして、それが出来るのは僕だけだ」


 霊鳥の巨大なくちばしが開き、風圧で飛ばされる程の笑い声が上がった。



「よかろう。愚かにもわたしの眼を奪った一族の末裔よ。我が娘から眼を奪い、わたしに返してみろ」


 嶺は不安気に蓮を見つめ、唇を結んだ。



「…蓮ちゃん、椿姫ちゃん」


「大丈夫です。僕達を信じて下さい」


 二人はそれぞれ紅爛鳳凰眼と梦幻鳳凰眼を開いた。

 あの頃と変わらない曇りの無い瞳で嶺を捉えた二人は息を合わせる。

 既にお互いの事が手に取るように分かる関係性の彼らに無駄な言葉は不要だった。



 蓮は迷わず凰花 嶺の未来を消滅させた。

 一瞬にして嶺の存在は跡形も無く消え去り、同時に嶺の眼が霊鳥の眼窩に返還された。



 頭上では霊鳥が高笑いを続けている。



 始まりの姫である凰花 嶺の存在がこの世から消滅する事は凰花一族が消滅する事と同義である。

 嶺が鳳凰眼の呪いから解放された瞬間に全ての鳳凰眼所有者が消滅し、全ての眼が霊鳥の眼窩に収まる手筈になっている。



 霊鳥の笑いは止まらなかった。

 凰花一族、正確にはファン一族を末代まで呪い殺すという目的を達した事で悦に浸っていた。



 だから気付かなかった。

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