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第15話 本陣強襲

 進軍を開始した連合軍は拓いた場所に辿り着いた。眼前には分厚い門が立ち塞がる関所のような場所である。この門を三つ越えると於軍と皇帝軍の領土に辿り着くという訳だ。

 遙か前方では雄叫びと共に砂塵が舞っていた。前線は九条 幾斗という日本人が居る伊軍が受け持っていた。椿達、阿軍は後方へ配置された為、今のところ出番はない。

 大門が開き、敵が押し寄せてくる。椿は馬の上に立ち、見える限りで前線の状況を鏡華に伝えた。

 敵武将が伊軍の武将と一騎打ちしている。その他の兵は各所で戦い合いバタバタと人が倒れていくのが見えた。

 自軍の伝令兵がさらに細かい情報を伝え、鏡華は状況を把握していった。軍師が指示を出し、さらに伝令兵が走る。やはり情報が肝なのだが、現代と異なり伝達方法が非効率的だと感じる椿だった。



 伊軍と於軍の将の一騎打ちは終わりを迎えようとしていた。

 入り乱れ過ぎて、視認する事はできないが、伝令兵からの報告で顛末を知った。

 結果、伊軍の将が勝ったのだが、捕縛しただけで討ち取らなかったようだ。その結果に鏡華は腕を組み息をつく。



「甘いわね。流石、天の国の人間だわ」

 

 その発言には椿も当てはまるのだが、鏡華には実際にそういう意図もあったのだろう。椿は知らん顔をして聞き流した。

 伊軍、江軍に続き、三番目に関所を通過した阿軍。

 二つ目に構える大門の中にはさらに強い将が居ると聞き、椿も気を引き締め直した。



 開門と同時に二つの旗が立った。

 阿軍も部隊を展開し、前線の伊軍に加勢しているが、依然として椿は鏡華の隣に陣取っていた。

 空璃、海璃、明峰の部隊は交戦を開始、椿部隊は本陣の護衛となっている。

 伊軍は敵将の部隊と交戦中。江軍は側面から進軍を開始したところだった。

 前線が崩れない限り、この場に敵が来る事はない。前回の戦と似たような情報だが、今回は仕込みはなしだ。

 一人の兵士が焦って走って来る。躓きながら必死の形相で駆け寄った兵は絶叫したのだった。



「伝令!何者かが、もの凄い勢いでこちらに向かって来ます!」


 すぐに馬の上に立ち上がり、とんでもない速さで砂埃が舞っている事を視認した椿は馬から飛び降り、瑞竜を構えて鏡華の前に立つ。

 椿率いる遊撃部隊も息を呑んだ。



「確かに何か居る。直に来るぞ」


 それはあっという間の出来事だった。

 先程まで目の前にいた隊員が吹っ飛ばされ、砂埃の中から少女が勢いよく現れた。

 突っ込んで来た少女は、鏡華を目掛けて武器を振り下ろした。

 轟音を響かせ、少女の武器と椿の大剣がぶつかる。

 とんでもなく速く、重い一撃を受け止める椿は明らかに力負けしていた。



「私は阿軍の大将、鏡華。貴様は何者か?」



我夏葉ガナハ


 椿の後ろで腕を組み、動じない声を発する鏡華に対して返答した少女――我夏葉は皇帝軍、最強と言われる人物だ。

 椿も予め情報を共有しているが、まさか単機で本陣に突入するとは想像もつかなかった。



「ここに何の用だ?」


「女を出せ」


 一歩後ろに引いた我夏葉は、手に持つ細長い剣を椿に向けた。そこに威圧感は無く、ただ純粋な要求だと見て取れた。



「今は居ない」


「…呼べ」


「断る」


「なら…殺す」


 刹那、椿の目の前には我夏葉が居て、首を目掛けて武器を突き出していた。

 その動きを視線で追う事が出来ていかなった。誰かの叫び声が聞こえたが、椿の首は繋がっている。

 横を見ると、何故か瑞竜が我夏葉の剣を受け流していた。剣は首の横を通過し、また引き戻される。

 我夏葉が剣で突いた瞬間、椿の身体が反射的に動き、窮地を脱する事が出来たのだ。

 瑞竜を薙ぎ払い、間合いを取る。



 椿部隊の兵達も我夏葉に攻撃を仕掛けるが、全てをいなされて地面に伏していった。

 隊長を守るように合間に入った椿と瑠捺の剣撃も見事に捌かれた。我夏葉の横薙ぎを瑞竜で受け止めたが、持ち堪えられず柄から手を離した椿は茂みに吹っ飛ばされた。

 間も無くして瑠捺も飛ばされてきた。鏡華を守れる人物は隊長を除いて誰も居ない。



「めちゃくちゃ強いな、あいつ」


「皇帝軍最強ですからね。椿様、お怪我は?」


「これくらいなら大丈夫だ。…椿姫でいく」


 フードを脱ぎ、ローブのボタンを外し脱いでいく。服の袖と裾を捲り、通された麻の紐を絞り切る。

 瑠捺は布を取り出し、椿の負った切り傷を覆うように巻いていた。

 この岩陰から出ていくと不審がられると考え、木の上から飛び降りる事にした。

 隊長は椿の瑞竜を地面に刺し、壁として使用しながら奮闘したが今は地に伏している。

 我夏葉は鏡華に迫ろうとしていた。



「ふふん」


 フワッと風が舞い、広がった黒髪が一方向に収まる。

 音もなく、地面に刺さったままの瑞竜の柄の上に着地した椿姫が我夏葉を見下ろしていた。



「私をお探しなのでしょう?初めまして、疾風の我夏葉さん」

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