新たな日常の始まり
景介視点です
「……景介、本当にやる気なのか?」
「もちろんだよ、父さん。これくらいしなきゃ、分からず屋は理解しないみたいだからね。……もし、玉砕したら……その時は、骨、拾っといてね。」
「……バカ言え。坊っちゃんの補佐役たるもの、失敗するなどありえない。」
呆れたように俺を見た後、信頼しているとでもいうかのような目でそう言った父さんに、俺はそりゃそうだ、と笑った。
今日は貴斗がリハビリを終え、復帰する日だ。もう30分もしない内に帰ってくるだろう。
と同時に、俺の決戦の日でもある。あいつに俺を認めさせてやらなければ、あの日の屈辱、雪辱を晴らすことはできない。
父さんやおじさん……いや、親父の協力の元、俺は貴斗への復讐劇を果たす。
「……坊っちゃんの誘導は、こちらに任せておけ。お前は準備でもしておいたらどうだ。」
「うん。そうするよ。貴斗、ここにちゃんと連れてきてね。」
父さんに貴斗のことを任せ、俺は奥にある練武場へと赴いた。ここは親父が個人的に体を動かすために作ったという、道場とジムが併設された施設だ。広く、多少暴れても問題のない場所。今日の俺の目的に、これほど合致した場所は、他にない。
軽く体を動かし、これからに備える。相手はあの貴斗だ。油断なんて、できるわけがない。
「ふぅ……。そろそろ、か。」
体が温まったところで時計を見れば、もう貴斗が到着する時間になっていた。入り口の方へ目をやれば、案の定、ざわざわと騒がしくなってきた。いよいよだ。
「ちょ、おじさん何。一応俺、病み上がりなんだけど。」
「坊っちゃんに用のある者が、こちらで待っておりますので。さぁ、中へどうぞ。」
父さんはちゃんと貴斗を連れてきてくれたようだ。これから自分がすることに、緊張と興奮でドキドキと鼓動が早まった。
「久しぶりだね、貴斗。待ってたよ。」
「……け、いすけ……?なんで……。」
俺を見て、驚きで目を見張っている貴斗に、俺は平然と声をかけ笑った。
気まずそうに目を反らす貴斗の態度を無視して、これまでと同じように話しかけながら、俺は内心溜飲の下がった思いをしていた。
自分勝手な考えで俺を遠ざけようとするから、そんな思いするんだ。ざまぁみろ。
「……その……俺に何か用?」
「もちろん。俺ね、将来の進路を決めたんだ。」
「……は?……え、あ、うん。」
「この前貴斗が怪我したの見て、それまでずーっと守られてたんだって知って、俺は貴斗に甘えてたのを知ったよ。それで、俺は貴斗に守られてるだけじゃなくて、貴斗と一緒に戦いたいって、隣に立ちたいって思った。」
俺が自分の心情を吐露していくと、貴斗は呆然と俺を見つめ、嘘でしょ、と呟いた。
俺が貴斗から離れたいだなんて思ってないこと、そんなに信じられないのか。あの程度で俺が親友から逃げ出す薄情者だと、本当に思われてるのか。心の底から、心外だ。
「でも、俺がそう言ったところで、どうせ貴斗は信じないんでしょ?今までずっと守られてきた奴がなんかほざいてる、程度だもんね。」
「……。」
「だからね、貴斗。優しい俺が、貴斗の土俵まで這い上がってあげるよ。」
「……は?え、なんて?」
「力でお前に、認めさせてやる……っ!」
呆気に取られて微動だにしない貴斗に、俺は渾身の力で殴りかかった。不意打ちだけど、まぁこれくらいハンデだろう。
きれいに貴斗の左頬に入ったストレートに、俺は笑みを浮かべた。
「俺とタイマンだ!絶対お前に、補佐になってください景介様って言わせてやるからな!」
これで景介の過去話は終了です




