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日常を変える決意

景介視点です

「……ふぅ。」


まだ慣れないスーツに着られながら、俺は貴斗のいる病室の前で、緊張しながら立っていた。

あの日から2週間。やっと目通りの許可が出た。最低限の礼儀を叩き込まれ、見られるようにされた。まぁそれも、俺が貴斗の隣に立つためだ。仕方ない。

この2週間、今まで俺が、どれだけ貴斗に守られていたかを知った。思い返してみれば、ただの喧嘩にしてはおかしな怪我をしてたこともあったかもしれない。あれはきっと、俺を何者かから守るために無茶した末にできたものもあるんだろう。

俺は、どれほど貴斗の身の危険と引き換えの安寧を享受していたんだろう。その事実に目眩がしたし、それでも笑って俺と友人でいてくれてた貴斗に、畏敬の念さえ持った。あいつは、俺の人生で一番の恩人だ。

俺は一生涯をかけて、その恩を返したい。何より、貴斗の側で共に戦えるように、貴斗に守られるばかりではなく、肩を並べられるようになりたい。その俺の願いを叶えられる道は、これだけだ。

ドアを3回ノックし、中の貴斗に入室許可を請う。中からの返答を聞き、ようやく入室だ。


「……貴斗。」

「あぁ、景介。……何その格好。めかしこんで。」

「ちょっとな……。傷はどう?」


なんとなく普段より覇気のない様子に違和感を感じながらも、俺は順調に回復しているらしい貴斗に、内心安堵した。

軽く互いの近況を話し合い、俺は話をしようと息を吸った。


「たか」

「景介、もう俺には近づかないでよ。」

「……は?」


俺の言葉に被せるように言われた貴斗の台詞に、周りの音が消え、耳鳴りの音が頭を埋め尽くした。


「……な、に……言ってんだよ……。」


心臓が嫌になるほど大きく鼓動し、真っ白になった頭は血が昇ったような、逆に血の気が引いたような、おかしな感覚だ。

今、貴斗は、何を言った?


「景介こそ、何言ってんの?あんな目に遭っといてさ。」

「……で、でも、それは……。お、俺は……。」

「怖かったでしょ?それ、俺の隣にいるからだって。」

「っ!」


事も無げに、でも少し寂しげな顔をしながら貴斗は言った。

怖かった。当然だ。貴斗の腹に刃物が刺さって、血も止まらなくて。襲われたことも怖かったけど、それよりも、俺は……。


「……だいたいさぁ、もう疲れたんだよね。」

「え……。」


俺が息を飲みながらも、まだ納得しきれていないのを見ると、一瞬眉を潜め、わざとらしいほど呆れた表情で言った。


「ずーっと景介守ってるのも。おじさんからの紹介だったから、友達として俺が守んないとって思ってたけど。正直、やってらんないよ。いつまでもさ、大人相手にして。怪我だってするし、時間も取られるし。」

「……。」

「いつまでも、景介のお守りなんてしてらんないってことだよ。まだ分かんないの?」


いつにない貴斗の冷たく馬鹿にした声に、情けなくも体がビクリと震えた。

迷惑だって……言われてるってことか?俺が側にいるのは……。


「……貴斗、は……、俺が隣にいるのは、迷惑?」

「……っ。……そう、だね……。隣にいれば危ない目に遭うんだもん。いない方が、安心だよ。」


自分から言ったくせに、傷ついたように顔を強張らせた貴斗を見て、俺ははっと目が覚めたように思い出した。

貴斗は、他人のために自分を犠牲にできる奴だ。今までだってそうだったじゃないか。自分も傷つく嘘をついて、俺を危険から遠ざけようとしてるのかもしれない。


「そう、かよ……。分かったよ、貴斗。じゃあな。」

「あ……、……うん。ばいばい、景介。」


名残惜しそうな、心細そうなか細い声を漏らした貴斗は、それでもやはり目を反らし、俺の退室を見送った。引き留めることもない。

最後まで嘘を撤回することのなかった貴斗に、俺はだんだんムカついてきた。人の話も聞かずに、あんな悲しそうな顔をしておきながら、俺をその世界から追い出したんだ。


「……絶対、後悔するくらい有能になってやる……。貴斗だって倒せるくらい強くなって、貴斗より賢くなって、貴斗より……貴斗より友達思いで、優しくて……。貴斗が切り捨てられないくらいの、完璧な補佐役に……。」

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