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先パイが欲した存在

駿弥視点です

会長は一度ため息をつき、俺の方に目を向けた。


「貴斗はさ、慣れざるを得なかったんだよ。極道っていう特殊な家の長男に生まれて、常に言動が注目されて、命狙われて。そのせいで小学校のころは、偏見とかもあって、あいつの友達なんて、俺くらいだったんだよ。」

「……子供の偏見は怖いですからね。容赦がない。」


良きにしろ、悪しきにしろ。目立てば、すぐにその対象となる。


「本当に。貴斗は、それにも慣れた。”俺は影響力があるから、あんま近づきすぎない方がいいんだよ”って。小3が言うか?ってことまで普通に言うんだよ。良くも悪くも賢いし、聡かった。周囲のための最善を選べたんだ。」

「……とことん特殊であることを受け入れてたんですね。」

「そういう奴なんだよ。なんていうか、アンダーグラウンドの世界の住人であることを後ろめたく思ってる……んん、しっくり来ないな。自分はこのオーバーグラウンドの人より、劣後に置かれるべきって考えてる節があるっていうか。」

「言われてみれば、分かりますね。」


先日の発言からも読み取れたことだ。俺は会長の言葉に同意した。

会長は少し寂しそうな顔をして、困ったように言った。


「でしょ?ある意味、社会に虐げられてることに慣れてたんだろうな。だから、形あるものを自分に入れたがんないんだよ、あいつ。友達だって、幼馴染みの俺は例外として、増やそうとしないし、お気に入りとかも極力作らなかった。狙われて、壊されるからって。」

「……そういうの。聞くと、壮絶ですね。……宇咲さんは?恋人、なんですよね?」


周りへの影響を考えて友人も作らなかったという先パイが、恋人なんて作るだろうか。どう考えても、友人より恋人の方が危ないだろうに。

今も仲良さげに会話している2人の姿を目に入れながら、会長に聞く。会長は、俺の疑問に嬉しそうな声で答えた。


「初音ちゃんはね、特別なんだ。8年間、ずっと貴斗が焦がれ続けた初恋の子でね。彼女のおかげで貴斗は道踏み外さずに済んだっていうか。彼女にふさわしい人間でありたいって思いから、必死に力を磨き続けてきたんだよ。初音ちゃんが、貴斗のすべてって言って間違いない。」

「……聞いた限りの先パイの動きから見ると、そんな大切な存在である宇咲さんを巻き込んだのは、少々迂闊なように感じるんですが。」

「まぁ、ね。今まで貴斗は、アンダーグラウンドとオーバーグラウンドの区別ははっきりつけてたし、両者が不必要に干渉し合うのを忌避してたから。貴斗も、それを分かってやったとは思うけど、初音ちゃんは大きな隙になるだろうね。」


会長の言葉に胸がざわつき、思わず目線を落とした。

確かに、先パイはすごく強いんだろう。俺もこの目で見たことだ、否定する要素はない。でも、宇咲さんは普通の子だ。特別な何かなんてない。そんな子が、学生相手に銃を向けるような奴がいる世界で、恋愛感情なんかでやっていけるんだろうか。


「でも俺は、あの貴斗が弱点になるのを承知で手を伸ばした初音ちゃんとは、仲良くやってほしいって思ってる。俺はどうやったって貴斗寄りだから、貴斗には、今までの分も幸せになってほしい。そのための助力は惜しまないよ。」

「……。」

「過保護かもしれないけど、アドバイスやサポートを頼まれたら全力を尽くすつもりだし、2人の仲を引き裂こうとする奴がいたら許さない。」

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