先パイと会長の不思議な関係性
駿弥視点です
静かな目で2人を見つめる会長の言葉に、俺の心臓が一拍、大きく跳ねた気がした。
牽制、された?いや、そんなはず……。会長だって、話の流れで純粋に言っただけのはずだ。含意もなにも、ないに決まってる。会長は、知らないはずなんだから。当事者である俺でさえ、最近気づいたばかりなんだから。
俺は、内心の動揺を外に出さないように、平静を装いながら会長を見た。
「……会長は、やけに先パイ贔屓ですよね。」
「ん?……まぁね。貴斗には、大きな大きな……一生かかっても返せないほどの恩があるからね。だから、例え世界が貴斗の敵になって背を向けようとも、俺だけは貴斗の味方でいたいと思ってるんだよ。」
「恩、ですか。」
しかも、一生かかっても返しきれないほどの。先パイは何をしたんだ。
意外な答えに目を瞬かせていると、前から先パイが声をかけてきた。
「景介、駿弥くん。遅いよ。何話してんの?」
「貴斗がいい男だよなって話。」
「はぁ?景介、お前駿弥くんにまで何言ってんの?」
呆れた様子で会長を見やる先パイに、会長はにこりと笑顔を向けた。それを見て、先パイはなぜか警戒心を見せている。
「俺の大事な親友の、すごいいいところ自慢して何が悪いんだよ。」
「お前のそれは実情に即してないことが多々あるから問題だって言ってんの。駿弥くん、こいつの言うことは無視していいよ。どうせ、8割方拡大解釈による誇大表現に過ぎないんだから。」
「……いえ。会長の意見には、共感すべき点も多くありましたので、問題はないかと。」
「……まじか。」
俺の返答に、先パイは信じられないものを見る目で俺を見つめた。
先パイは自己評価が低いのか?少なくとも、会長から聞いた話が過ぎたものだとは、俺は思わなかった。嘘を言われているとは感じなかった。
そう思った俺は、唖然としている先パイに平然と頷いて返した。
「会長の話が誇大表現だとは、俺は思いませんでしたよ。」
「……はぁぁぁぁ。もー、景介さぁ……。マインドコントローラーめ……。油断も隙もあったもんじゃないね。駿弥くん、まじで気を付けてね。景介のそれは、まともに聞かない方が、ほんとに身のためだから。」
「……さすがに言い過ぎでは?」
会長の賛辞が気恥ずかしいってレベルではない先パイの言葉に、思わずそう言っていた。
会長の言っていたことにだって、闇雲に同意したわけではなくて、俺の見てきた先パイの姿に、そうだと思わせる信憑性があったからこそ共感したのだ。
会長の言う通り、親友のいいところを自慢しただけというだけで、そこまで言うのも、さすがに会長がかわいそうに思える。
しかし、そう言った俺に、会長が笑いながら首を振った。
「いいんだよ、駿弥くん。このやりとり、いつものことだし。俺としては、駿弥くんが共感してくれたことが大きな収穫だからさ。」
「余計なお世話だよ、まったく。ほら、行くよ景介。駿弥くん、またね。」
「はい。」
「駿弥くん、また来週学校でね。新しいお話聞けるの、楽しみにしてるね。」
「……うん、また学校で、宇咲さん。」
小さくヒラヒラと手を振り、宇咲さんは先パイたちとともに去っていった。
3人の後ろ姿を少しだけ名残惜しく見送り、俺も帰宅の徒についた。
次話から貴斗視点が始まります




