思わぬ言葉
貴斗視点です
俺はどうやら、浮かれきってるようだ。
初音の方を見て一番に思ったのはそれだった。空耳かと思ったし、直前に思ってたことだって、”このきれいなイルミネーションの前でもっかい好きだとか言ったら、初音絆されてくれないかな”だった。……こうして思い返すと、この期に及んで絆すってのも最低だな。
って、そんなことどうでもよくって……!
「……は、初音……今、なんて……?」
「……は、恥ずかしい、です……。」
俯き目を逸らして顔赤くする初音……まじかわいい……。……違う、そうじゃない。初音がかわいいのは不変の真理だけど、そうじゃない。くそ、脳が正常に作動しない。パニクって現実逃避してるのか?真面目に働け。
呆けてる脳を無理矢理に動かし、俺は初音の手を引き、その場を離れた。目的地なんて頭に浮かんでもなかったけど、とにかく初音と2人きりで落ち着いて話のできる人目のないところ、と園内を歩き探した。
「た、貴斗さっ……ま、待って……待ってください……!」
「あ……ご、ごめん初音。足痛いよね?靴擦れとか、してない?あぁ、何やってんだ俺……!ごめんね、初音。」
初音の制止の声に、我に帰った。そして、無遠慮に初音を引き連れ回していたことに気づいた。
これは男として失格過ぎるだろ……。エスコートもロクにできないなんて……、最悪だ。まったくもってカッコ悪い。デートの時くらいちゃんと余裕持てよ俺……!
慌てて近くのベンチに初音を座らせて、足元に跪き、初音の手を握る。できれば初音の履いてるブーツを脱がせて状態を確認したいけど、イヴの夕方だ。裸足は寒いだろう。
まじパニックになりすぎだって俺……!全然かっこつかない。
しっかりへこんでる俺に、初音は驚いたように目をパチパチと瞬かせ、次第に口元を緩ませ、クスクスと笑い声を上げ始めた。
「……は、初音?」
「ふふっ……。あ、ごめんなさい、貴斗さん。その……貴斗さんがそんなに慌ててるの、初めて見たので。足も、大丈夫ですよ。痛くありません。」
「……慌てもするよ。大切な女の子のことだもん。大事にしたいからね。」
「貴斗さんは、優しいです。」
俺の情けない顔を見て、初音が嬉しそうに笑っている。
現金なことだ、その笑顔を見ただけで、俺は少し肩の力が抜けた。
「……ねぇ、初音。さっき言ったこと……もっかい、言ってほしいな。」
「……ここじゃ、恥ずかしい、です。それに、……こんな、人がいっぱいいるとこは、嫌です。」
「……そっか。……ううん。当然だよね。2人きりになれたら、言ってくれる?」
「……う、うまく……言えないかも、しれませんよ?」
「そんなの、気にならない。初音の口から、直接、初音の気持ちを聞きたいんだ。大事な、一生ものの言葉になるかもしれないんだ。俺に、聞かせて。」
俺の必死の懇願に、初音は小さくコクンと頷いた。
初音の返事に、俺は園内マップを脳内で開いた。園内で、2人きりになれて、人目のない、落ち着いて話せる、可能なら個室。その中で1番近いのは……
「……よし。初音、こっち。2人きりになれる場所、あったよ。」
「ど、どこですか?」
「観覧車。」
驚きで目を丸くした初音の手を、今度こそ丁寧に引いていく。
目の前にある大きな観覧車、そろそろパレードの方に人が流れるこの時間なら、並んでいる人も少ないだろう。観覧車は、扉さえ閉まれば各ゴンドラ同士も距離があり、会話も聞こえない、完全な個室空間だ。今この瞬間、これほど絶好の場所もないだろう。
観覧車は目論み通り、人もあまりおらず、すぐに乗り込むことができた。これで1周約12分。短いけど、俺と初音だけの空間だ。
ソワソワと落ち着かない気持ちで対峙し、そろそろ10時の位置に来るかと思ったとき、初音が口を開いた。
「……その、さっきの……言いますね。」




