知った痛みの意味
初音視点です
食事を終え、ショッピングをしている時にも、貴斗さんは私の言動をすごく嬉しそうに見つめてきた。そして、それを目にする度、私の胸はキューっとなり苦しくなる。
なんなんだろう。まったくデートに集中できない。貴斗さんに相談しようか。……ううん。心配性な貴斗さんに話したら、デートを中止しかねない。今までだって、私が危ない目に遭わないように気を配ってくれていた。貴斗さんなら、中止にするだろう。……それは悲しい。
「……大丈夫だよ、うん。デート、楽しみたいもん。」
貴斗さんと離れた化粧室の鏡の前で呟いた。
幸い、耐えられないほどではない。少しだけ、キューっとなるだけだ。大丈夫。
もう一度、よし、と気合いを入れ直し、貴斗さんの元へ戻る。貴斗さんが待っててくれてるのだ。あんまり待たせるのも嫌だし、早く戻らないと。
「貴斗さ……あ……。」
貴斗さんの後ろ姿を見つけ、声をかけようとした時、貴斗さんの向こうに女の人の姿が見えた。
すごくきれいな人2人だ。こうしてパッと見ても、貴斗さんと並んでいても遜色ないように見える。……自分のことが子供っぽくて、ちんちくりんに思えてくる。
……やだ、な。貴斗さんはすごい人だ。私よりももっとお似合いの人なんて、きっといっぱいいる。私以外の、それこそどんな人でも選り取り見取りなんだ。……私のこと、好きだって言ってくれてたのに。
「……初音?あぁ、戻ってたんだね。どうしたの?」
「……いえ……。」
「……何かあったんなら、俺に言ってね。初音の願いを叶えるのは、いつだって俺でありたいんだから。」
不審な私の様子に、貴斗さんは気にしながらも追及せずにいてくれた。そのことに、少しだけささくれ立っていた私の気持ちは落ち着いた。
そうだよ、貴斗さんはこんなにも私に優しい。私にだけ優しい。だって、あんなに言葉を尽くして好意を伝えてくれた。貴斗さんの好意は、私のものだ。
そこまで思ったところで、自然にそう考えたことに自分で驚いた。私だけのって……ありえない。どうしてそんな、貴斗さんの気持ちを独り占めしたいみたいに……。……貴斗さんの気持ち、独り占めしたいのかな……。どうして、そう思うんだろ……。
「そろそろかな……。初音、そろそろ最後の目的地に行こっか。」
「あ、はい!最後はイルミネーションなんですよね。すごくきれいだって聞いたことがあるので、とっても楽しみです。」
「17時点灯だから……着く頃には始まってるね。こっちだよ。」
貴斗さんの案内で遊園地内のイルミネーション会場まで行く。貴斗さんは本当に色々調べてくれていたらしい。迷いのない足取りに、貴斗さんも今日のデートを楽しみにしてくれていたことを感じ、嬉しくなった。
「……あれ、東口から入るんですね。北口の方がメインゲートなのに。」
「うん。景介がね、こっちの方がきれいに見えるからって。」
「そうなんですか!楽しみです。」
イルミネーションの設置されている中央広場まで歩くと、装飾のされたクリスマスツリーが見えてきた。
「わぁ……!貴斗さん、すごくきれいですね!」
「ふふっ。ほんとだ、きれいだね。」
東口からだときれいだという会長の話の通り、まっすぐ伸びた道の向こうにツリーが見える。北口では、建物に阻まれて、こうは見えなかっただろう。
「すごいですねぇ。ロマンチックです。」
「喜んでもらえてよかった。計画を練って片っ端から調べた甲斐があったよ。……うん。本当にきれいだね。」
そう言った貴斗さんは、私ではなく、ツリーを見つめている。
「あ……。」
その横顔がすごくきれいで、私は思わず貴斗さんに見とれた。
私のことを見ていないのに、私に向ける優しい笑みじゃないのに。なぜか目を離せなくて、私は唐突に今日感じていたあの痛みの意味を知った。
「好きです……。」
「……え?」
私、貴斗さんのことが好きだったんだ。
次話から貴斗視点が始まります




