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信じられないほどの幸福

貴斗視点です

「……うん。聞かせて。」


初音が小さく呟いた言葉に、俺は暴れだした心臓を抱えながら頷いた。

これまでこんなに緊張したことはない。初めてチャカを持って襲撃してきた奴に対峙した時も、初めて親父抜きで現場に出た時も、抗争に参加するときも、どっかの組を壊滅させに行った時すらも、こんなに緊張しなかったのに。

初音はさ迷わせていた視線を俺に向けると、小さな声で俺に告げた。


「……私……私、貴斗さんの、ことが、す、すき……です。」


辛うじて聞き取れるほどのそれは、しかし俺の耳にしっかりと響き、脳内に大きな衝撃と共に刻み込まれた。

すき……好き、だって。初音が、俺のこと……!


「初音……うれしい……俺、嬉しいよ……。ほんとに?夢じゃない?」

「……好き、です。ほんとです。私、貴斗さんのこと好きなんです。」

「うん、うん……俺も好きだよ……初音……。」


再び言ってくれた初音を、俺は衝動のまま抱き締めた。

8年前から夢見てた結果に到達したんだ。やっと……初音の心も俺のものにすることができた。嬉しくて、俺は力強くギューっと腕の力を強めた。

俺が初音を抱き締めていると、おずおずと初音が俺の背に手を伸ばしてきた。


「っ……。はつ、ね……初音……好き、大好きだよ……。」


初音が俺に手を回してくれたのは初めてだ。感極まって、俺は初音の肩口に顔を埋め、声を震わせた。……初音の髪、ちょーいい香りする……。


「貴斗さん……。……私も、嬉しいです……。貴斗さんの優しさに気づけて、好きになれて……。……貴斗さんが好きなのは、私だけですか……?」

「うん?もちろんだよ?……え、俺疑われること、した?」


嘘でしょ?8年越しの初恋が成就して10秒で浮気疑われることある?

愕然とした気持ちで初音の顔を見ると、眉を下げ、少ししょぼくれた表情をしていた。


「……その、さっき……女の人と……きれいな女の人と話してたから……。」

「きれいな女の人?」

「わ、私が少し離れた時……。す、すごくお似合いで、貴斗さんと並んでてもおかしくないなって……。じ、自分が子供っぽく思えちゃって……。悲しかったんです……。」


泣きそうな顔でそう言い連ねていく初音に、俺の胸は高鳴った。

だって、それって……つまり……


「……やきもち……?」

「へ……?あ……。……そ、その、違くて……!貴斗さんを疑ってるとかじゃ、ないんです!私が自信ないだけで……!」

「……嬉しいよ、初音。そんなかわいいやきもちなら大歓迎。……あぁ、さっき言ってた人たちね。あれは……んー、道を聞かれてただけだよ。俺とはなんの関係もない人だよ。」


初音のささやかでかわいいやきもちに、内心デレながらーー顔に出てるかもしれないけどーーそう返す。……まぁ、ささやかな嘘だ。

あの2人組はただのナンパだった。……うん、顔も思い出せないけど。これはバカ正直に言っても、初音も俺も幸せにならない。黙っててもいいことだ。

俺の言葉に、恥ずかしそうに赤くなった顔を俯かせる初音の頭を髪を梳くように撫でる。……初音の髪サラサラ、触り心地最高。


「ね、初音。恥ずかしがることなんてないんだよ。俺の彼女として、むしろ言ってほしい。言ったでしょ?初音の望むことは俺が全部叶えたいって。思ったことは俺に言って。可能な限り叶えるよ。」


真っ赤な耳にそう言ってやると、ソロソロと顔を上げ、上目遣いに俺を見てきた。その表情はいけない。心臓に悪い。あぁ、顔に血が昇ってきた。


「……なんでも、言っていいんですか?」

「もちろん。」


初音は少し迷ったように目を反らし、小さな消え入りそうな声で言った。


「……あんまり、私を放っといて他の女の人としゃべってるの、見せないでください。」


……は?かわいい。かわいいの化身じゃん……。なにその慎ましすぎるリクエスト。おねだりの内にも入らないよ?……いけない。初音のあまりのかわいさに、呼吸が止まってた。


「……それくらい、もちろん聞き入れるよ。他にはない?あったら、いつでも言っていいからね。」

「……はい。……ふふっ。嬉しい……。貴斗さん……。」

「うん、初音。必ず、大切にするからね。」


俺の大事な、世界で一番大切な女の子。俺のできるすべてで、幸せにしなければ。たとえ、どんな手を使ってでも。

次話から駿弥視点が始まります

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