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小さな変化

初音視点です

「初音、今日は初音のための1日だからね。目一杯楽しんでくれたら嬉しいな。」

「はい、貴斗さん。貴斗さんと2人でいられるだけでも十分なのに、もう嬉しいです。」


今日はついにクリスマスイヴ。貴斗さんとのデートの日だ。

昼食からおしゃれなイタリアンで、ドキドキしてしまう。こんな理想的なデート、小説の中でもなかなか見ないよ。しかも、相手は貴斗さんだ。これだけで、夢みたいな1日になりそうな予感がする。

今日も変わらず、貴斗さんの完璧なエスコートで席に誘導され、注文を伝える。

料理が来るまで貴斗さんと話していよう。そう思い、私は最近あった面白かったことや気になっていることを次々と貴斗さんに話していった。料理が来てからも、まだまだ話したいことは尽きない。気づけば、ずっと私が一方的に話していて、貴斗さんが聞き役に徹することに、なんてことになっていた。


「あの……すいません、貴斗さん。私ばっかしゃべっちゃってて。その、つまんなくないですか?」


決まり悪く、恥ずかしいと思いながら問うと、貴斗さんはキョトンとした顔を見せた。そして優しい笑みを浮かべ、首を傾げた。


「どうして初音の話を、俺がつまんないなんて思うの?一生懸命に話してる初音はすごくかわいいし、初音の視線を独占できるなんてすごい役得だなって思ってるよ。それに、初音が自分のこと話してくれて、初音のこと知れて、すごく嬉しいんだよ?歓迎こそすれ、つまんないなんて思う要素がないんだもん、気にせずいっぱい話して。……あ、もちろん、俺の話を望んでくれるなら、いくらでもするよ。俺のことも知ってほしいからね。」


貴斗さんからの優しげな目と甘い言葉に、私の顔は真っ赤になってしまう。どぎまぎして視線をさ迷わせ、狼狽えていると、貴斗さんはそれすら嬉しそうに目を細め見てくる。

ほんとにもう!貴斗さんの言動は心臓に悪いよ!

羞恥で赤くなった顔で、恨めしい気持ちのまま貴斗さんを睨み付けた。


「ふふっ。初音かーわいい。ほら、続き話して。俺にも初音の好きなもの教えてほしーな。」


ニマニマとからかっているような顔で、貴斗さんは話の先を促してくる。ほんとに意地悪だ。

そう思いながらも、ポツポツと話を進めていく。貴斗さんが話してほしいと言ってくれたのだ。貴斗さんの望みに逆らってまで黙っても仕方ない。私だって、貴斗さんと話したいのは本当だもん。

食事を進めながらもあれこれと話ながら、ふと貴斗さんの顔に目を合わせると、とても嬉しそうでとても優しい笑みを浮かべ、私の話を聞いていた。


「っ……。」


その表情に、私は思わず息を飲んだ。胸がキューっと締められたように苦しくなり、持っていたカトラリーをぎゅっと強く握った。

今までにも、貴斗さんの嬉しそうな顔も、優しい笑みも、数えきれないほどいっぱい見てきた。私といると、貴斗さんはたくさん笑ってくれるから。でも、その時にはこんな苦しくなることなんてなかった。……なんの変化だろう。


「?初音、どうかした?」

「え、あ……いえ!なんでもありませんよ。そうだ、私が今ハマってるのでこんなのがあって……」


私は一旦胸の苦しさを無視し、話を続けた。分からないものに気を取られるよりも、今は貴斗さんとのデートを楽しみたい。

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