情報収集者として辣腕を振るおう
景介視点です
今回も拷問についての描写があります。苦手な方はご注意ください。
「いやー、趣味を満喫できるとは、なんて素晴らしいんでしょう。ね、皆さんもそう思われませんか。」
後ろ手に手首を縛られた男たち6人に笑顔でそう言うと、化け物でも見るかのような目で見られた。
まぁ、この反応は想定内、慣れっこだ。逆に平然としていた奴を見たことがない。一度くらい、見てみたくはあるが。
「お、お前は……茶戸のボウズとずっと一緒にいた……!」
「えぇ。はじめまして、ですね。湧洞景介と申します。今から皆さんの取り調べを担当いたしますので、どうぞお見知りおきを。」
「き、聞いたことあるぞ!茶戸家には悪魔がいるって!お、お前のことだろう!や、やめろ、帰してくれ……っ。」
俺のことを噂で聞いたことがあったらしい男が、悲惨な様子で命乞いをしてくる。悪魔だなんて、高く買われたものだ。他より少し、過激な面があるだけというのに。
「まったく、噂というのは、尾ひれが付くものですね。どこかで一度、火消しをした方が後々いいのやも知れない。……あぁ、その要望は聞けそうにありませんね。あなたのいう悪魔は、獲物を前にみすみす見逃してあげるような慈悲深いものなのですか?」
悪魔であることを否定しない口ぶりに、全員顔を青くさせている。
否定はしないが、肯定したつもりもないのだけど、仕方ない。自分の性分や趣味が、正常でないことも、忌むべきものであることも分かっている。悪魔と呼びたい奴は、好きに呼べばいい。
固まってしまった奴等を、まず1人、海老責めに縛る。
うん、きれいに決まった。これは基本型であり、初歩的なものなので、楽に縛れる。こいつはとりあえず放置だな。
その後も、4人を適当に手早く縛りあげ、転がしておく。これで5人完了だ。縛りは手を空けることもできるから、こういう数のいる案件は重宝する。
「さて、最後の1人は……うん。これだな。」
観客のいるときは、インパクトがあるとより恐怖を煽ることができる。こういうときのインパクトとは、破裂音や出血、絶叫だ。今日はブラックジャックを使う。
どんどん高まる興奮のまま、代わる代わる相手をして、6人とも身体中が痣や出血痕だらけだ。そろそろギブを訴える奴が出るかもしれない。
少々の休憩と称して、自ら淹れた紅茶を飲んでいると、3番目に相手した男が口を開いた。
「も……やめ……。」
「おや、どうなさったんです?そんな死にかけの声を出して。まだまだ本番はこれからですよ。」
「言う……言う、から……もうやめてくれ……。」
「ほう、何を言ってくださるんでしょう。事と次第によっては、別室でお話を伺いましょう。」
男が俺の笑みに恐れ戦きながら話す卯次の計画を、頭の中で要不用を振り分けていく。目新しいものは特にないが、証言を取れたのは大事だ。それに一般人の誘拐なんかに駆り出されるような奴だ。下っ端に情報が渡ってなくとも不思議ではない。これは想定内だ。
「ありがとうございます。あなたはひとまず、手当てをさせましょう。少々お待ちくださいね。」
緊縛のみを解き、その男を転がしておく。内線で呼べば、組員の誰かしらがすぐ来るだろう。
内線の受話器に手をかけたところで、再び後ろから声がかかった。他の奴等も、情報を渡せばこの責め苦から解放されると分かったんだろう。口々に卯次の内情やら今後の動きやらを教えてくれる。
「あ、あの女拐って、茶戸家に宣戦布告するつもりだったんだ……!い、今も準備してるはずだ!午法の奴等と頻繁に会合してた、本当だ!」
「……なるほど。ありがとうございます。お疲れさまでした。さ、他の方はいかがです?出せば出すだけ、高く買い取りますよ。」
6人から次々に情報を引き出していく。その中に、どれほど重要なものがあろうと、顔色はけして変えない。茶戸家の情報収集能力を悟られないためにも、どの情報が重要かの判別をつけさせないためにも。
俺は、この茶戸家の情報収集の一端を担っている。その誇りにかけて、俺から情報が漏れるなんてことは許されない。若に失望されるわけにはいかないのだ。




