茶戸家・首脳会議
景介視点です
全員から情報を搾り取った俺は、内線で呼び出した組員に後を任せ、若の元へと向かった。
「若、今よろしいでしょうか。」
「入ってー。」
「失礼いたします。若、6名の取り調べが終了いたしましたので、ご報告に上がりました。情報がいくらか取れましたので、親父とご同席の上、お聞きいただきたいと思います。」
「あ、なんかすごいのでも取れた?オッケー、すぐ行こ。どーせこの時間、親父は母さんといちゃついてるだけで暇なんだし。」
若とともに親父の執務室へ向かう。
この時間なら、少なくとも父も執務室の近くにはいるはずだ。なんせ、今からの時間こそ仕事の佳境なのだから。親父の補佐である父が、親父の側から離れるとは考えられない。いてくれれば一気に説明できるため、いてほしいところだ。
親父の執務室には、やはり父もいた。手間が省けてなによりだ。
「では、ご報告します。卯次は午法と手を組んでいるようです。複数回会合を行っていると聞けました。会合内容に関しましては今後調べて参りますが、今回のお嬢の件を皮切りに、茶戸家へ宣戦布告をすると言っていたので、それに類するものかと思われます。」
「ふーん、初音をねぇ……。ほーんとふざけてる。ナメられたもんだよ。それで?他は?」
「はい。江飛の中でも内部分裂は確実なようで、最近は子方と午法が江徒の指揮権を巡り、睨み合いが続いていると。この件に関しては、先日上げた報告の裏付けとしてください。」
俺の話に、親父と父が少し言葉を交わした。新たな敵対組織の情報に、変わる情勢もあるのだろう。敵対組織の動向は、重要な情報だ。
江徒同盟は、十二支になぞらえた組織の集合体だ。弱小組織がこの権力社会で生き残るために群れたものが始まりとなる。だが、30年ほど前から違法取引が盛んになり、業界内でも力を付け始めた。そして、身の程知らずにも茶戸家と肩を並べたかのように振る舞い、トップに躍り出ようとしている。
今懸念されているのは、この江徒同盟が引き起こす抗争だ。ただ、事は単純な話ではなく、茶戸分家や傘下にも及んでいる。江徒同盟の混乱に乗じて、茶戸家の覇権を奪おうと画策している奴もいる。さすがにそれほどの規模の抗争を始まってから無傷で止めるのは難しく、事前にその動きを細かく知っている必要がある。今は情報収集と分析が、上層部の主な仕事だ。
「また現在、卯次の武器庫に運び込まれるものが約2か月前から増えており、抗争に向けた準備が行われているようです。」
「そっか。オッケー、ありがと。詳しいことは後で紙でね。さ、親父。あいつら早く潰しに行こうよ。」
「黙れバカ。殺気ウゼェ、しまえ。」
「しまえって言われてもさぁ、俺の初音に手ぇ出したんだよ?存在する価値どころか、権利すらないでしょ。俺の初音を傷つけた無価値の奴等に、どうやって殺気抑えるの?」
若はニコニコしながらもイライラした様子で親父に詰め寄っている。お嬢のお心を得るために俺と若が画策したこととはいえ、今回の卯次は反乱予備軍だ。俺たちが情報を流さずとも、近い将来、お嬢を狙って一般人宅へ襲撃していたのは、考えるに易い。
そんな奴等を野放しにしておくのは許容できない。若はそう仰っているのだ。単にお嬢が腕を痛められただけではないはずだ……たぶん。
「お前なぁ……。貴斗、今すぐは無理だ。奴等潰すより先に、あの子の安全を完璧に確保しろ。」
「……分かってるよ。今、警備体制考えてる。通学中、校内、下校中、帰宅後、休日でね。組員何人か借りるね。」
「好きにしろ。で、反応はどうだったんだ。こんな大芝居打って、ノーリアクションなんてこたねぇんだろ?」
「上々。やー、もうゴールは近いね。初音、俺とのこと前向きに考えてくれるんだって。あぁ、かわいーなぁ。初音、まじ俺の天使。」
「けっ。ポンコツが。景介、俺にも報告書回してくれ。」
目尻を下げ、蕩けたような顔でお嬢のことを思い浮かべているだろう若を、呆れた目で見ながら、親父が俺に指示を出す。もちろん、組の中で共有すべき情報だ。言われずとも親父、若、父には回す予定でいた。
「承知しました。」
「景介、取り調べの状況は。そいつらは今どうなってる。」
「11人中10人は手当てを受けてる。残りの1人は現場責任者。そいつはこれから夜通し付き合ってもらう予定だよ。父さんも来る?」
「……いい。全任する。確実に歌わせれば何も言わん。」
父の言葉に、笑みを返す。言われるまでもない。言っちゃ悪いが、俺はこの道のプロ同然の腕を持っていると自負している。父に心配されるような腕ではない。
若干顔を引きつらせている気もする父に首を傾げつつ、若と親父に向き直る。報告は終わった。これで解散になるだろう。そしたら俺は、また取り調べ室にとんぼ返りだ。今から興奮してくる。
「んじゃ親父。江徒の方は一旦任せたよ。俺は初音を守る方にシフトするから。何かあったら言って。」
「あぁ。景介も、他はいいか?」
「はい。本日これから、最後の1人を取り調べた後、書類にて報告を、親父、若へいたします。」
「おぅ。」
親父の部屋を出て、若とも別れ、再び取調室へ舞い戻る。残る1人は責任者とされていた奴だ。少なくとも、先の10人よりは情報を取れるだろう。
意気揚々と愛用品を手に、俺は取調室の扉を閉めた。
次話から初音視点となります




