米の炊き方を覚えようその二
生きてて云々…なんて
言ってる場合では無いけど、今はそれぐらいいいだろう。少しゆっくりする。
「おい!水を半分入れたらどうすんだよ!」
ああ…ゆっくりから抜け出された。そういえば今はごはんを炊いていたんだっけね。
「今は夏でしょ。だから20分ぐらい置いとかないと。」
「20分か…暇だし、腹減ったな。なぁ、外に食べに行かないか?」
俺はふっと笑顔で振り向いた。
「いいね。」
そんなこんなで別荘から歩いているのだが、一体どこの店に行くのか全く検討がつかない。
「綺麗なだけで何もねーな。この街。」
倭斎隗 は古民家が集まった住宅街を見て、そう呟く。
「じゃあ何でもあるけど、汚い街とどっちがいい?」
俺は聞いた。
「ん〜。俺は汚い街でいいや。こんな綺麗な所にいたら、自分を見失いそうだから。」
夜空はきらきらしてる。とてつも無く美しい。
「そうだな……俺も汚い街でいいや。」
雲はご機嫌なのか夜空を隠そうとはしなかった。優しい星空だ。いったいこんな街に俺達は居ていいのだろうか。と錯覚してしまう。
「あ、蕎麦屋がある。蕎麦にしようよ。」
俺は提案した。
「ここまで来て蕎麦かよ……まっいっか。」
そして、蕎麦屋に向かった。青色で瓦屋根のちょっと古い蕎麦屋。その外見はなんだか暖かかった。
「いらっしゃいませ〜。一名様ですね。」
扉を開けるとそんな声が良く響いた。
「お好きな席にどうぞ。」
女性の店員はそう言ったので、倭斎隗 はカウンターの席に座った。そして、俺はカウンターに置かれる。
ぬいぐるみの振りだ。めんどい……
「ご注文はお決まりですか?」店員はお冷を置きながら、聞いた。
「じゃあ、盛り蕎麦を一つと海老の天麩羅を人皿貰えますか?」
「はい。盛り蕎麦に海老天ですね!かしこまりました!」
伝票をさらさらと書くと、パタパタと店員は厨房に入っていった。
周りをこっそり見ると、全然人が居ない。時間が悪かったのだろうか。俺はお冷を一口飲んだ。無味だ。
厨房では店主らしい人物が忙しく調理している。
「そういや、お前を連れ去った奴ってのはどんな人物だったんだ?」
倭斎隗 は半分の水を飲み干して聞いた。連れ去った女、野犬団とか名乗っていた。頭の中であの出来事を思い出す。
「野犬団とか言ってたね。赤犬だの白犬だの。ま、結局、膳鵞尹里寝安が助けてくれたんだけどさ。」
空になったグラスを回して「そうか。」と言った。
それにしてもなぜ膳鵞尹里寝安 が助けてくれたんだろう。分からない……
「お待たせしました。盛り蕎麦と海老天ですね。ごゆっくり〜。」
盛り蕎麦と海老天が運ばれてきた。綺麗な色のつゆと海老天からは脂が垂れている。美味しそうだ。
天麩羅を見えないようにこっそりかじってみる。う、うまい……! さくさくとしてるけど、海老がぷりぷりとしてるのが最高に良い。しかし、倭斎隗 はいつも通り顰め面して蕎麦を食べている。美味しくないのだろうか?いや、そんな訳は無い。「ねぇ?蕎麦美味しい?」と聞いた。
「うん。すごく美味いよ。」と答えた。
ま、それなら良しか。結局、蕎麦湯まで入れて蕎麦を堪能した。
「あ、米大丈夫かな?」倭斎隗 は帰り道そう言った
俺は肩で腕を組みながら笑った。こんな子なら美味しいだろうな。とさっきの蕎麦をやっぱり食べたかったなと思った。
「じゃあ早く帰ろう。」俺はそう言った。倭斎隗 は走った。流し撮りの様に星空が見える。
ただ、掴まってるのは大変だったが……




