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一個ぼっちの夏
風が強く当たる。都会の幻想を抜け、今こそ夏だと感じる。やはり誰がなんといおうと今、この瞬間こそ夏。それにしても清々しい気分。
で、どこに向かってるんだろう?
コッソリ「ね、これって何処向かってんの?」と聞いた。オープンカーの屋根から入る風は髪をたなびかせていた。
「海に行くらしい。珍しいな、海外じゃないって。で、俺以外は先に行ってるらしい。」
ああなるほど。と引き続き窓を見る。どうりで、風が気持ちいい訳だ。俺は青空に向かって、「空さ〜ん何か不安だけど、静かに見守ってくださ〜い。」と聞こえない様に言った。空は何も応えず、ただ雲を流していた。雨は降らなそうだ。
「着きました。」車は浜辺で止まった。
水平線が見える。綺麗だ。
「あ〜海はいいな。で、お袋と矢藺菜はどこへ?」
倭斎隗は聞いた。すると、運転手は
「モルディブに。」と言った。
倭斎隗と俺は目を丸くした。
「お母様からの命令でございまして、倭斎隗は家に甘え過ぎて弱い男になっているから、一人で過ごせ。
との事です。ちなみに迎えは五日後、この浜辺で来ます。それじゃあ5日後に。」
そう言って、運転手の男はさっさとその場から去った
「マジか……俺、チェックインの仕方知らんぞ。」
こうして、一人の男とぬいぐるみは置いてかれた。




