誘拐事件とビッチ
放課後ににトラブルが起きた。
トラブルと言っても大した騒動では無いのだが……
それは対立だった。生徒二人による対立。
ただ、生徒が生徒だったのだ。
放課後に俺はバックの中でバナナを齧っていた。バナナ一本掴むのも、両手で掴まなければいけないのでめんどくさいな……と思いながら、齧っていた。
そんな時、外で大量の人数が移動している足跡を聞いた。
世紀末かよ。この学校!と思いながら、バナナの皮を置いて、バックの外へ顔を出した。
「な、何?あれ……」
そこから見えたのは大量の男女生徒だった。
「ありゃ、中身を見なくてもわかる。鷲宮薺と玲本 維人だよ。イケメンと美女。」
玲本 維人は分かる。女に俺を渡した奴。だが、鷲宮薺って?
「鷲宮薺ってのは中学時代にファンクラブ作った生簀かね〜ビッチだよ。全く、あんな女のどこがいいんだか。」めんどくさい事に巻き込まれたくないのか、
倭斎隗 はその場から立ち去ろうとしている。俺もバックの中に顔を隠した。めんどくさい事は誰でも嫌いなんだ。
ところが、ドアの目の前に大量の生徒がいる。何人ぐらいかは分からんが、たくさんいるのはわかる。
その生徒の叫び声。倭斎隗が掻き分けて進んでいるのだろう。めちゃくちゃな男だ。
しかし、その足はピタリと止まった。
「なんだよ。倭斎隗!今、この厚化粧野郎を叱ってんだよ。邪魔すんな!」
この声は 維人だ。
「何よ!この、女の敵!」聞いた事の無い声だ。多分、薺かな。ちょっと見てみる。
綺麗に揃った、目鼻に高校生とは思えない肌。そして、キラキラと光る金髪。あれなはファンクラブも出来る筈だ。納得。
ぐぬぬ……と二人は顔を睨みあってる。その隙に端をかき分けて俺たちはさっさと抜けようとしたのだが、
「えい!」っと一人の女子生徒が俺の腕を掴んだ。それに抵抗する訳にもいかず、素直に俺は引っこ抜かれた。
「やったー!遂に手に入れたよ〜!このぬいぐるみ!」女子生徒は両手で俺を掴み、天に掲げた。
「あっ!おい!返しやがれ!」と倭斎隗は取り戻そうとしたのだが、
「パスッ!お願い!白犬ちゃん!」
後ろに投げれて、誰かが掴んだ。
「分かった!赤犬ちゃん!任しといて!」
あっとゆう間にその場から走り去られてしまった。
しばらく走った。どうやら、俺は両手で掴まれているらしい。白犬と呼ばれている彼女の胸が揺れた。漫画ならエロシーンだろうか。だが、それに喜んでいる場合じゃ無いほどの危機なのだ。
「はぁはぁ…もうすぐ学園の外だ。学園の外に出れば、野犬団の勝ちなんだから……」
野犬団……新しい言葉だ。一体俺を捕まえて、何をしようとしているんだ。
「あと……あと少し!」
どうやら、学園の外は近い様だ。だが、その時
「そのぬいぐるみ、返して貰えませんか。」
聞き覚えのある声がした。膳鵞尹里寝安だった。
「支配者に近き存在の一人、膳鵞尹里寝安……けど、アンタなんかに渡すわけにはいかないんだから!」
白犬は走り出したのだが、
「足元がお留守なんですね。白犬さん……」
里寝安は足を掛けて、白犬を転ばした。もちろん、俺までダメージを受ける。痛い……
「早くその、ネコちゃんを渡してくれないと……殺しますよ?ぇえ?」
恐ろしい言葉の響きだった。本当に殺しかねないな。
この言い方だと。
「ふうん。それでも渡さないのですね。あなた、まさか……私が殺さないとでも思っているのですか。」
その時、白犬の叫び声がした。
「痛いっ!痛いっ!やめて!お願いだから、やめて!!辞めてください!お願いしますからっ!」
白犬はそれでも俺を離さなかった。背中を踏みつけられてると言うのに……
「離すまで辞めませんよ。だって、楽しくなっちゃたんですもの。」
その途端、掴んでいた腕が急に離れた。そして、俺は里寝安に抱き抱えられた。
「ぐすっ……覚えていろよ。絶対、野犬団がまた来てやるから……」
白犬の啜り泣く声を後に俺は肩に乗せられて、そこを後にした。
「おーい!何処だ〜!鐘道〜!」
向こうで、倭斎隗が探している。そこへ歩いた。
「はい。ぬいぐるみは無事でした。大切にしましょうね。」
倭斎隗は聞いた。
「なんでお前がこのぬいぐるみを……」
里寝安は俺を地面に置いた。
「理由などありません。ただ、目の前にぬいぐるみを抱えながら走っている女の子から救いたかっただけです。じゃあね。」
そんな事を言って、学園の端っこに消えるように帰っていった。
地面から持ち上げ、撫でられた。
「バレなかったよな。まさか。」
と聞かれたので、
「ああ……」と答える。
いつの間にか時刻は夕方。非常に疲れた俺たちを夕日は励ましてくれている様だった。




