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「本来はもっと豊潤な指標であるはずのものがバラバラに分裂や疎外をさせられて、短絡的な対称表象の中に無理やり押し込まれて対立構造を強いられている、っていうの、人類の歴史のかなり古い時代からのものだったんじゃないかな。そのくらい、そうした矮小化されて短絡化された対立構造に落とし込まれている対称性の表象は思想哲学の主流だし、古くからの宗教の中にもあるよね」
私がそう言うと、海は「確かに。何となく、これは人類にとってものすごく根が深いものなのかな、って気がする」と言った。そうして続けて、淡々とした口調で言った。
「でも、ユングや曼荼羅を描いた人たちもいたわけで。彼等にはより本質に近い力の表象も見えていたはずなんだよね。心の目みたいなものでそれを見ているから、それを描けたわけだし。そしてそれを智慧の伝統として引き継いで共有していた人々もいたわけだし。主流ではないにしてもそうした人々もいたわけだから、人類の認識力や把握力に何か欠陥があって、とかではないと思う。やっぱり、何らかの意図的な操作があったのではないかと思うなあ」
「それって、人類史が戦争に次ぐ戦争の歴史なのと関係があったりする?」
「多分」
「古代から現代までの物語なんか見ると、争いや闘い、戦争は英雄の基本的な設定条件みたいなところがあるよね。それくらい、本来は対立構造ですらないものが対立する対称表象として、基本設定として刷り込まれているという事になるのではないの?」
「多分、そうだと思う。そうした争いや闘い、戦争は必然なものとして常に惹き起こしておきたい勢力がいたんじゃないかな、と思う。人類の智慧の伝統が始まる本当に初期の頃から。多分、そうした意図的な、政治的な操作があったんじゃないかな。
全体性に常に接している人々はそもそも争いや闘いに意味を見出さないし、それよりもバランスや調和を尊ぶ。自律性も早くから確立してしまうし、支配したり操作したい側からしたら、都合が悪かったんだろう。俺らの元居た惑星でもそれは同じだったし。
ただ俺達の居た星ではここまで思想哲学の統制のようなものが徹底されてはいなかったから、やっぱり驚く。記憶を取り戻した今からすると、不思議に思ってしまう、どうしても。本質に近いビジョンや夢、心の目でそれらを捉えている人々もいたし、それを伝統的な智慧として受け継いでもいるのに、どうしてここまでそれ(矮小化され短絡化された還元的な対立構造の虚偽)が浸透してしまっているのか、智慧に優れた人々もたくさんいたのに、基本として刷り込まれてきた対称性の対立構造のそれ(虚偽)を疑うことすら殆どないのは何故なのか」
「宗教の教義が根底にあるからではないの?」
「そんなもの。信じていない人が沢山いるだろう。それに、研究や探究の分野で何かに行き詰まったら前提から疑うのも見直すのも、多くの人々が共有している当然の手法だし」
私は腕組みをして考え込んでしまう。何か考えていそうな賢そうなポーズをとってみても、何も浮かばなかったけれど。
「でも、ほら、そう言う海だって、(前世というものがあるとしたらだけれど)以前の記憶を取り戻したからそう思うわけで、以前はそんな事、考えもしなかったんじゃない?」
海は、「確かに」と言った。私は海に、というよりも、自分の中に在るものを吐き出すように言った。
「それに、闘いや争う事自体が好きだという人もいるでしょう。バランスよりも調和の崩れたものを好む人も。基本的に力の崇拝の段階の世界観に居る人々はそうだし。力のあるものが闘いや争いに勝って、負けたもの弱い立場に置かれたものから収奪や搾取を正当化できる、これは当人にはとっても甘い、甘すぎる蜜でしょう。調和やバランスなんか壊しても、それを勝ち取って何が悪い? それが世界の破滅を牽引することになろうと知った事か、自分達が生きている間さえそれがあればいい、後の事は知った事か、こうした人の在り方もある意味、主流にあるよ?
言葉ではそれより上位の倫理や世界観を語ったとしても、それをパフォーマンスとして社会で表現していたとしても、本質的な重心がここ(力の崇拝)にあるのは、テロリズムのサイコグラフでもそのように、その他の人においても似たり寄ったりなんだよ。潜在的なナチやテロリスト、その加担者がそれだけ沢山いるのは現実なんだから。
自分の築き上げた立場や名声、財、大切なものを失うとしても、真摯に自らの犯した過ちや犯罪について正直に認めたり償うこと、責任を取る事のできる人がどれくらいいると思う? 素晴らしい倫理や世界観、宗教的理想を語ったり、それを実践しているように見える人々であっても、一皮むけば、自分が隠れてしてきたことをばらされたくない、暴かれたくない、責任を取る事も取らされる事もしたくない、それくらいなら、証拠や証人を消してしまおう、そう考えて傷害や殺人、そうした犯罪すら実行してしまう人が沢山いるんだよ。
それは彼等の重心が、パフォーマンスとして見せている上位の段階よりもずっと低い段階に在るからであって、倫理的なレベルも本当は、本人たちが語るような段階までは全然発達していないという事を厳密に示しているのだから。
自らが隠してしていることの責任問題などを暴露する証人や証拠はどんな手を使ってでも潰し、隠滅することやその責任の全てを被害者や犠牲者に被せることは正しい事だ、騙される方、罠にかかる方が悪い。犠牲にされる方が悪い。たとえいじめや嫌がらせ、虐待などで被害者が自殺をしたとしても──おまえが弱いのだから悪い、ざまあみろ、自分達はおまえとは違う、たとえ犯罪を犯しても許されるのだ、何故なら自分達は優秀で強く、選ばれた人間だから──力の崇拝の段階に重心がある人の本質はこれだからだよ」
海は黙って聴いていた。それから、ため息をついた。
「涼子さんの家族や周囲にいた人達のこと?」
「そう。これが紛れもない現実なんだよ」
「神奈は、人間というものの未来や可能性に対しても悲観的なんだ?」
「むしろ、海の方がそうだったのではないの?」
海は肩をすくめた。やれやれ、とういようなその態度に何となくかちんときた私は、
「世界観や倫理観の発達が彼等よりも上位にある人達は、どれだけそんなような人たちが次々と惹き起こす問題に巻き込まれたり絡まれ続けなければならないの? 囲い込まれて犠牲を押し付けられたりしなければならないの? 本当はそんなレベルにもないくせに善人や徳の有るようなふりが上手で嘘つきで強欲で身勝手な人たちが自分達の愛するものや大切なものを傷つけたり、弄んだり、破壊し続けていくのを、どれだけ見続けなければならないの? 悲観的というよりも、もう本当にうんざりなの。私はずっとそれらを見続けて来た。自分が無力で、彼等を止めることも何もできなかったからもあるけれど、何度も何度も生まれかわり死にかわりしても、それは呆れるほどに繰り返される。本当にいつまでこんなことを繰り返さないといけないのか、どれだけ時間や機会を与えられてきたと思っているのか。それでもまだ性懲りもなく繰り返している。もう本当にいい加減にしろよ、甘ったれんな、と言いたくなるのは当然なんじゃない?」
「でも彼等彼女等が破壊を牽引していくのに任せれば、否応なく愛するものや大切なものも巻き込まれていくんだよ? 全体的な機能不全へと導かれていくのに任せるのは、そういう事なんじゃないの」
「当り前じゃない。そんなの、わかっているよ。私が言いたいのは、すべての可能性や未来を諦めることではないよ。そうではなくて、もういい加減、ばかばかしい期待や時間と力の無駄な消耗はやめる必要があるってことだよ。どこかで厳格な線引きが必要だって事。どれだけ時間や機会を与えられてもそこに耽溺していたい人達は、自分達でその選択の責任を取るのが当然だし、それを下手にかばいだてしたり、免責や免罪をしたりして救い上げようとしてはいけないって事だよ。ここをはっきりさせないと、同じことの繰り返しだもの。
真理や概念や表象がどうこう以前に、人は自分の選んだ事に対して責任を取る事が必要だって事。特に、単に過ちや罪を犯すだけではなく、その自らの犯した過ちや罪の責任から逃れる為に、それを隠蔽する為に、いじめや嫌がらせ、健康加害テロや傷害、殺人なんかに手を染めてしまうような人達や、それを利用したり加担している様な人達には、徹底的に断固とした厳しい対処と本人にその責任を取らせることが必要なんだよ。
私、以前、全く姿かたちは別人だけれど、その人は亜美ちゃんだと認識している若い男性が、大勢の人を引き連れて破滅や死を象徴するような場所へと煽動していく夢を見たことがあったの。その人達は、殆ど争いや血を流すことなく大きな問題を解決した後に、それでは納得が出来なくて、行き場のない嫉妬や怒りや復讐の衝動をぶつけたがって犠牲の血に飢えていた。亜美ちゃんはそうした人たちの期待や希望を読み取って、うまくそこに希望を持たせていたの。そこにいた人々が亜美ちゃんにそうしたカリスマ性の様なものを与えていた。そうして自分達が見たいもの、叶えたいものを彼等は信じた。結果的にそれは破滅や死へと続く道だったのだけれど、でも、それをその人達は自分達で選んだの。それって、支配する側、操作したり煽動する側だけの問題ではないでしょう? むしろ、それは共同作業の様なものだよ。互いに力を出し合い、補い合い、それを創出した。これが真実だよ」
海は黙って私を見つめていたけれど、少し考えるようにしてから言った。
「もう、十分役目は果たした。責任も果たした。大切な多くのものを犠牲にしてまでも時間も機会も十分すぎるくらい与えて見守った、だからもう、次の段階へ行くべき時期が来ているんだ、そういう事を言いたいんだよね」
「そうよ。その通りだよ」
「徹底的に厳しくする必要がある事は、認めるよ。でも力の使い方には気を付けないと、それには本当に慎重にならないと、あっという間に暴走してしまう危険性もあるんだから。それは自分自身というよりも、自分が放った力が他の人達に与えていく影響の方でだよ」
海がそう言うのは、本当にそれをよく知っているから、自分でそれを身をもって識っているからだと、それを私自身もよく知っているから、私は黙った。それから尋ねた。
「私は、感情的に暴走しそうになっている? 過ぎたことを言ったり、したりしている?」
「いや、よく自分でそれを扱っていると思うし、とてもよくやっていると思う」
少しほっとした自分がいた。それも事実だった。
「なら、私が道を外れそうになったら、教えて。海の言う事なら私も聴くと思うから」
「もちろんそうするつもりだし、そうするよ」
私がそのまま沈黙し続けていると、海はこんなことを私に言って聞かせた。
「抑えて抑えて、抑えきれなくなったときに、そうして放たれる力が討つべきものを討つ正当な時と大きな意味を持つんだよ。それがたとえこの世界の善悪の概念で悪の方に布置されている力であったとしても、それは、正しい時と場所、そして使い方をされるのであれば、自然の理から外れないし、使ってはいけなというものではない。ただそれらは使い方や時と場所を間違えてはいけない、本当に慎重に扱わなければならない力だというだけで、本来善悪もないから。
発達段階や倫理観が上位に在るという事は、そうした責任を本当に何度も何度も学んだりする必要があるからで、諸刃の剣を扱うには、それだけの経験や智慧や慈悲の修養が必要だからでもあるんだよ。それが課題だから。そういうものなんだ。だからと言って、必ずしも過ちや失敗を犯さないという事ではないけれど、責任がそれだけ重いんだって事はよくよく心して、常に自分自身を省みていく必要があるんだよ」
そう言ってから、ちょっと息をついて、淡々とした口調で続けた。
「俺が味方に紛れ込んでいたスパイやテロリストを次々に皆殺しにして行った時の話、聞きたい?」
私は少し躊躇ったけれど、頷いた。それはいつかは聴かなければいけないと思っていた事でもあったからだった。海は私を少しの間、黙って見つめていた。それから静かな口調で淡々と話し出した。
「神奈が惨殺された後、その犯人はすぐに捕まえた。粘菌が神奈の記憶を見せてくれたから。それで、他にも紛れている仲間を吐かせるために、見張りをつけてわざと逃がした。こちらの手落ちの様に仕掛けてね。案の定、すぐに仲間の所に犯人は逃げ込んで、こちらの動きを事細かに報告していた。その犯人の動向については想定内だったけれど、想定外だったのは、その犯人の仲間が、俺たちの仲間の中でもかなり力を持ち、信頼されている共同体の全体だったからだった。その人数があまりに多すぎたんだ。
今まで疑ってみたりしたことのない人達だったし、しかもかなりの人員を抱えている大きな共同体でもあったから、それをどうするかについてみんなで話し合うにしてもかなり困ったことになる事が目に見えていた。これだけの人員のスパイやテロリストがいて、その他にも紛れ込んでいないという事はないだろうし、誰が味方か敵なのか判別するのが困難すぎて、これからの対処について話し合いを持つにも、それが難しい状況だったんだ。でも、スパイやテロリストの集団は次の襲撃計画を沢山立てていて、それをその大勢の人員に割り振っていたし、その中には子供もいた。悠長に事を構えている時間もなかった。
星の地図持ちの能力者たちは、対の子同士以外でも夢を通してならテレパシーが使えたから、とりあえず俺は夢見の状態に入って呼び掛けられるだけのみんなに呼び掛けて情報を共有することにしたんだ。レネ達や他の仲間に相談している時間はなかったし、どこにスパイやテロリストが潜んでいるか本当に解らなかったから、相談する事も出来なかった。能力者同士で全て決めるしかないと思ったんだ。そしてその時、夢を通して話し合うことが出来た仲間だけで、即決した。その共同体事始末するしかない。放っておくと被害が拡大するだけだし、そうなったら手に負えなくなる。今ならまだ敵が油断しているから、それが可能だ。そう決まった。
俺達がエネルギーの架け橋を世界中に架けて、能力者以外の人達の共同体に防御壁を作っていたから、それを利用することにした。人工知能を搭載した極小の精密機器が、反戦運動のリーダーシップをとる人達やグループを標的にして攻撃をしていたから、まずその犠牲になってしまった人達のまだ比較的新しい遺体をその共同体内とその防御壁前に、人に見つからないように転移させて、疑似的に生体反応を出すようなエネルギーを籠めた。そうして、その共同体全体の位置を、標的になっていたグループの位置情報に見えるように偽装する幻惑操作をした。機械を欺ける程度でよかったから、そうした信号が出せればよかったので、それらはわりと簡単にできた。そうして、防御壁外に置いた遺体に精密機器が反応してどんどんやって来るのを確かめてから、一気に防御壁を解除したんだ。
それはあっという間で、殲滅対象の共同体として感知するように偽装した幻惑効果は自分達でも驚くほどのものだった。あちこちから攻撃が一斉に始まって、一つの大きな共同体が、あっという間に殲滅されていった。使い方次第で自分達の力がこんなにまで効果的に敵を殺すことができるなんて、そのときまでは俺も知らなかったから、自分でも驚いたし、作戦に加わったみんなもそれは同じだった。怖いというよりも、奇妙な興奮状態にあって、そうしてみんなでこれは使える、と確信した。
後は粘菌を使って、いくつかの遺体から記憶を引き出して、世界中に架けていたエネルギーの架け橋を使い、味方に紛れ込んでいるスパイやテロリストをどんどん見つけ出していった。夢を通して情報の共有化が出来たから、それは世界中で可能だった。粘菌も増殖していたから現地にどんどん転移させることが出来たし、比較的最近に対の子を亡くした星の地図持ちがいれば、その対の子を粘菌が摂り込むことで、俺の様に直接粘菌から情報を引き出すことが出来たし、本当にそれはごく短期間のうちに、あっという間に進展していった。その効率の良さ、成功率の高さに、俺をはじめ、みんな驚いていた。本当にこんなに一度に沢山の、敵とはいえ人を殺していっていいのか、それは誰もが感じていたし、殲滅対象には子供もいたから、それについても罪悪感を持たずにはいられなかった。
けれど、事がどんどん明らかになるにつれて、そのスパイやテロリストたちがどれだけ非情な事をしてきていたか、味方がどれだけ惨い犠牲になってきていたか、それもかなりの長期に亘って巧妙に隠されてそれらは続けられて来ていた事や、そこには一番疑われにくくて同情も買いやすい子供達が多く関わっている事までわかってくると、もう今更この計画を止めるわけにもいかなかった。
自分達が信じる倫理観と現実から実際に要請される決断や行動の間で、俺も、たぶん他のみんなも、感情や意志や倫理観や自分たちが信じてきた事や、スパイやテロリストと知らずに彼等彼女等と過ごしてきた事や、それによって味方を傷つけたり殺させる手助けを自分達がしてきてしまっていた事やなんかが、ばらばらに断片化されて、内面化するにはあまりにも大きな負担がかかったのもあって、自分自身の部分としてそれぞれが分割され、疎外され、そうすることで自分自身を護るような働きが起きて来たんだ。倫理観や信じてきた事、罪の意識、今の選択や決断にとって手枷や足枷になるような部分については疎外され隔離し保存されたまま、障害になるものを省き、より効率よく目の前のタスクをこなせる様な部分が機能するように、それは自己を自動的に最適化するように、それぞれの内面の中で静かに素早く行われていった。
抑圧している部分が大きくなればなるほどに、それを抑えるために力を必要とするし、自分の内面についてそれをよく解っていた俺は、それをそのまま的確に効率よく敵を殲滅するエネルギーへと躊躇なく変換していった。別にみんなにそれを背負わせるつもりはなくて、自分一人でそれをやり切るつもりだったんだ。その為に、誤った力の使い方で、過ぎた使い方だと解っていて、敢えてそうしていた。一旦それが自動化されるように回転し始めると、それはもうただより効率的に選択と行動ができるよう最適化された自分が出来上がっていって、より冷酷に決断も選択も行動も素早く下せるようになった。
全部がスローモーションみたいに見えた。自分の中での処理速度が限界まで上がっていて、ただそこで、目の前の目的を達成する事のみに集中していくのは、どんなに外から見て狂っているように、残酷で冷酷に怒りや復讐心に駆られている様に見えていたとしても、俺自身の内面は本当にとても静かなものだった。何も余計な事を考えないし、感じない。極度の集中状態に入っていた。無駄なものは全部遮断して、目的それのみに集中している状態で、静謐さのみがあったと言ってもいいくらいの波の無さ、静けさだった。あれほど外的な自分の姿や行動と、内面の自分とが乖離した状態にあったのは、後にも先にもあの頃だけだったけれど、それは、決して嫌な不快な体験なんかではなかった。むしろ、ずっとそうしていたいし、いられるくらいの静けさと平安さの中に、俺は居たんだよ。実際の情け容赦のない攻撃行動も、冷酷で残酷な振る舞いも、何もかもが夢の中の出来事みたいで現実感がなかったし、驚くほどそれらは、俺の中で何の抵抗もない自然なもの、当然のものだったんだ。
全ての殲滅対象の敵の共同体を破壊して、味方に紛れ込んでいる殆どのスパイやテロリストを始末して、そうして気づいた時には、肉体的にはとっくに限界を迎えていた。疲労感すらその最中には感じる事が無かったから、どれだけ心身を酷使していたのか自分でもわからないけれど、たぶんこのまま自分はもう廃人になるんじゃないかと思っていたし、それでも別によかったんだ。目的はほぼ果たした。でも自分でも予想外だったのは、そんな俺の完全に狂ったような姿やその力の使い方がある種の強い牽引力を持ち、他の星の地図持ちの人達に強い影響を及ぼしてしまっていた事だった」




