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夏休みももうすぐ終わりという頃、思わぬところから波紋が広がって新たな波紋を呼び、その余波が思わぬところから返ってきた。
亜実ちゃんが、たまたま私(とみなちゃん)が産婦人科から出てきたところに出くわして(と本人が言っていたそうだ。本当かどうか疑わしいけれど)、それを携帯で写真に撮った。そしてご丁寧にプリントアウトされたその写真を彼女から渡された海が、私に詰問してきた。私は妙な嫌疑をかけられたのだ。
さすがというかなんというか、たまたまみなちゃんが忘れ物をとりに中に戻ったのでそれを病院の出入り口の前で私が一人で待っていたところ、そして病院の看板がしっかり一緒に映っているところをしっかり切り取るように撮っていて、その悪意の健在ぶりに舌を巻いた。
しかもダメ押しに
「こんな遠い場所にある産婦人科にこっそり行くってことは、それなりの事情があるんだよね。心配だったから海君にも一応知らせた方がいいと思って。この病院、人工中絶手術するために遠く離れたところから若い女の子がよく来る病院なんだって」
と、ご丁寧に注釈までつけてくれたそうだ。
友達につきあって行っただけ、と本当のことを話しても、どうしても嘘っぽく聞こえてしまう。
かといってどうやってそれを証明するのかということになるし。
友達のかなり微妙なプライヴァシーに関わることだけにお手上げだった。
しかも折悪しく、キイナや聡子と一緒に行った一泊旅行のときに、二人はそれぞれのボーイフレンドと一緒で、私と聖一さんも参加していたので、本当は三組のカップルの旅行だったのではないかと彼との関係まで疑われて、なんとなくぎくしゃくしていたときだった。だからと言って海や陸のところに行かないと余計に疑われる、という抜き差しならないような奇妙な状況にはまり込んでいたときだったのだ。
すごいなあ。悪いことって本当に重なるんだ──
私はただ唖然としてそう思っていた。
自分が何を言っても信じてもらえない。
状況は全てが疑いの方向を指し示しているようなもので。
事情が入り組んでいて、それを証明したり、立証することが難しい状態で。
だからといって、逃げることも避けることも許されない。
海だけでなく陸までもがそうで、針の筵ってこういうことを言うんだな、となんだか他人事のようにぼんやりと思った。
夕方海と陸の待つ勉強部屋に向かうとき足が重くて重くて、行きたくないけれど行かないと余計に疑われるので、重たい体を引きずるようにして彼らのマンションに通った。バイトはやめようかと思ったけれど、何も考えずに仕事をしているのが唯一のやすらぎでもあったので、やめたくなかった。それで続けていた。
そうして夏休みが終り、新学期が始まっても膠着状態が続いた。
二人は相変わらず放課後交替で迎えに来るし、一緒に勉強したりご飯を作ったりするけれど、ほぼ無口であまり喋らなくなった。でも優しいところはそのままで、気づかないところでフォローしてくれたりはした。手をつないで帰ったり、抱きしめてきたり、キスしたりもするときは態度も和らいで仲良く過ごしたりするけれど、急に不機嫌に黙り込んだりもする。そうしてまた思い出したように詰問される。何度訊かれても私が答えられるのは結局いつもの同じ解答だし、堂々巡りだった。
ひとからあることないことを言われたりいわれのない疑いをかけられるということが、自分の大切な人たちからだとこんなにも辛いものなのか、と初めて知った。
それまでも辛いことはあったけれど、所詮関係ない人たちだったから、どうでもよかった。
でも、今回は違う。
さすがに私も、ふさぎ込んだ。
なんか思い知らされているような気分だった。




