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それが出回っていると知ったのは、ずいぶん後になってからだった。
私が海や陸とキスをしている写真や動画。
暗かったのもあってブレブレの動画は殆どちゃんと映っておらず、私がタンカを切る声だけがしっかり録れていた。それに写真は海と陸の方がそうかなとわかる程度で、私はほぼ陰になっていて顔が映ってはいなかったので、写真と動画の音声がセットで拡散されていたみたい。
考えてみればあのとき、撮り放題ではあったわけだよね。
そんなこと思いつきもしなかったので、あのとき私も相当頭に血が上っていたようだ。
それで今度は、親には内緒で海が依頼人になって弁護士さんを通じて調査会社に調査を依頼した。実は海と陸もこっそりとあの時、彼女たちを追いかけた時点から動画を携帯で撮っていた。こっちは暗視モードだったのでけっこうはっきり相手の顔も撮れていたし、何より私へのものすごい罵詈雑言がすべて録音されていた。しかも私はずっと黙ったままなので、一方的にものすごく酷いことを言われているみたいだった(実際そうなんだけど)。でも本当はあのとき、いいぞもっとやれ、とか不謹慎にも面白がりながら参戦していたんだよね、ちょっと一方的な被害者とは違うような、と言ったら、それを言うとややこしくなるから黙ってろ、と二人に言われた。
まあ、何というか、二人の撮っていた動画は初めこそあまりしっかり撮れてはいなかったけれども、海と陸が私の前にポジショニングをした際にばっちりとアングルも決まっていて、多少動きでぶれてはいるものの喚いている彼女たちの顔も声もしっかり録れていたので、
「すぐ犯人もわかるでしょう」
と弁護士さんは請け負った。
ただ拡散してしまったものを回収するのはほぼ不可能とのことだった。それに対して厳しく責任をとらせることはできるので、徹底的にやった方がいい、とのことだったので海はその方向で正式に依頼したようだ。ただそうなると、さすがに海や陸の両親にもうちの両親にもばれるので、先手を打った海と陸が動画を見せて(私が一方的に侮辱言葉の罵詈雑言を浴びせられ続けているところ)、どうしようもないので仕方なく演技で相手を驚かせて黙らせただけだった、と説明した。本当にはキスなんてしていないし、ふりだけだったのに、それが思いの外うまくいっただけ。そしてその説明は拍子抜けするほどあっさり通った。それで費用は海と陸の両親がもってくれるとまで話がついた。この双子を敵にはまわしたくないな、私は改めて心からそう思ったのだった。
「なんだか今の子たちってすごいのね、もう戦争だわね」
あきれたように母がそう言っていた。
私は葉月と仲良くなったのとほぼ同時期に、咲良という、葉月とはタイプが違うけれど独立不羈さに関してはいい勝負な女の子とも仲良くなった。咲良は私のひとつ上の先輩だった。彼女はとても可愛らしく、そんなに背は高い方ではないけれど、出るとこはちゃんと出てコンパクトにきゅっと引きしまった、かなりいいスタイルで、当然ものすごくもてた。異性関係に奔放であっけらかんとしていて、しかも中身はけっこう男前という、ものすごく魅力的な女の子だった。彼女はとにかく自由気ままで、学校を休んで2週間も行方不明になったと思ったら海外で好きなだけ遊んでて、けろっとして帰って来るとか、とにかくかなり突き抜けた感じだった。校内で私を見かけると彼女のほうからフレンドリーに話しかけてきたりしたので、なんか仲良くなった。
面白いことに彼女はうちの学校にある古めかしい石造りの礼拝堂が大のお気に入りで、授業をさぼって礼拝堂で居眠りしていたり、ものすごく難しそうな哲学書とか宗教学の本をまじめに読んでいたりという、ばちあたりなのか敬虔なのかさっぱりわからないことをよくしていた。それで、たまに私も彼女に誘われて、保健室に行くといっては授業をさぼって彼女のところに行った。そうしてひそひそと声を潜めても何故か響きわたる礼拝堂でたわいないおしゃべりをして過ごしたりしたのだ。
咲良はものすごく頭がよくて、一回見たり聞いたりすれば覚えてしまうので、しょっちゅう授業をさぼっていてもかなり成績がよく、授業はつまらないので自分の好きな難しそうな本をよく読んでいた。彼女が何かを食べているというところはあまり見なかったが、いつも何かしら飲み物は飲んでいた。自販機のパックのジュースとかお茶とか、自分のマイボトルからとか。いつも美味しそうに何か飲み物を飲んでいるイメージだ。
礼拝堂の奥には小部屋があって神父様が常駐していたと思うけれど、たまに祭壇の手入れに来たりすることはあってもあまり出てこないし、出て来ても私たちがさぼっていても何も言わずに好きにさせてくれたので、私はこの老神父様がけっこう好きだった。いつもにこにこして穏やかな好々爺って感じ。
咲良は旅行やマリンスポーツが好きで、その話をよくしてくれた。一人でも仲間とでもどんどん自分のしたいことをして行きたいところに行ってしまう彼女は、小さな妖精の姿をしたエネルギーの塊みたいで、ただ一緒にいるだけでもなんか元気をくれるような、楽しい気分になる不思議な魅力のある女の子だった。当然上から下まであらゆる年齢層の男性が彼女に惹かれて言い寄って来るのでトラブルも絶えなかったみたいだけれど、本人は至ってあっけらかんとしていて、変に深刻ぶったり悲劇のヒロインぶることもなく、からっとして明るかった。なんでも冗談にして笑い飛ばしてしまう。なんかそこがよかった。情念どろどろ系ではなく、ぱっと情熱を大胆に発散させる感じ?
とにかく彼女の存在はある意味で私にとって新しいエネルギーの補給、チアアップガールみたいなものだったと思う。そして、自分で思うよりも本当はずっと疲れていたりした私の心を力づけ助けてくれた、元気いっぱいの可愛らしい優しいマリア様でもあった。
もしかしたら、天使やマリア様はときどきこうして人の姿を借りて、迷える子羊を導いてくれたり元気づけてくれるのかもしれない。悪魔や天使やマリア様とも仲良くなった(?)私はこうして次の世界へと新しい扉を開くのだった。




