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「智也さんと和也君のお母さんの妹さんが瑠偉ちゃんのお母さん」
私が反芻するとみんなは頷いた。
「智ちゃんと和也と私がいとこ」
瑠偉ちゃんがそう言って、沙羅が笑って続ける。
「私の父と智ちゃんと和也のお父さんが兄弟。それで私と瑠偉が友達」
なるほど。それで瑠偉ちゃんも智也さんちの家族ぐるみで馴染んでいたのか。改めて納得した私はすっきりした気分で答えた。
「そうだったんだ。智也さんと和也君は沙羅と瑠偉ちゃんのどちらともいとこ同士だったんだ」
智也さんのお家が代々管理している神社のある御山の中にある先祖代々のお墓へとみんなでお墓詣りに行った事で、「去年の夏に行ったおじいさんのお墓はお寺にあったけれど、二つあるの?」と私が尋ねた事から分かった事だった。お寺に在るのは智也さんと和也君の母方のご先祖様のお墓で、瑠偉ちゃんにとっても母方ご先祖様のお墓。今回一緒に行った御山にある御先祖様のお墓は、智也さんと和也君、沙羅にとっての父方のご先祖様のお墓という事だった。
「ご先祖様のお墓もあるし、御山自体がご神体でもあるから、ここは絶対に護らないといけないって昔から親父に言われ続けて来たけれど、やっぱりそれは大切な事なんだろうなと思うよ。和也の案は、その意味でもすごくいいと思う」
智也さんがそう言って、和也君の計画書に目を通しながら言った。和也君は嬉しそうだ。
「山の管理って結構大変なんだよ」
そう沙羅が私に教えてくれる。瑠偉ちゃんも頷いて言った。
「古くからある神社仏閣が不審火で消失したり、土地が開発業者に売られてしまっていたり、海外資本が参入していたり、何かと不穏な事が国内で続いているし」
和也君も頷いた。
「海外のやくざみたいなのが休眠中の宗教団体を買い取ったり、田舎にある神社仏閣の土地を勝手に自分達のものにしていたり、自然保護区としても大切にすべき土地が開発されてしまったり、今は国内もかなり物騒になってきているんだ」
「海外からもそうしたニュースは時々チェックしていたけれど、表に出ていない色々な問題がありそうだね」智也さんが言って、続けて言った。「ソーラーパネルの設置の問題や、山や森林や湿原を切り拓いてしまう環境汚染の問題なんかも海外にまで伝わっているけれど、国内ではきちんと取り上げられていなかったりするよね。ソーラーパネルは廃棄の問題も含めて重大な環境汚染を惹き起こすのに、全く逆の、環境にいい事として推進されているし」
「本当に、何だかおかしなことばかりだよ。全く逆のことばかり大々的に報道されたり推進されている。山や森林を大切にして環境を護らないから食物がなくて動物たちが人間の居住空間にまで降りて来て獣害が広がっているみたいだけれど、そうした熊や鹿等の獣害は大々的に取り上げている。まるで動物たちが悪者みたいに。本末転倒なんだよ。獣達が山や森から出て来なくても生きて行けるだけの環境を護って育てていかないといけないのに。乱開発には海外資本も参入しているから、このままでは国内の天然資源も市場の手が入ってどんどん滅茶苦茶にされてしまうかもしれないのに、本当に大切な問題はきちんと扱われていないんだよ、何故か」
和也君がそう言って、瑠偉ちゃんも頷いている。
「既得権益の為の情報操作がされているみたいなところもあるよね」
沙羅がそう言ってため息をつく。
「帰国してからそれはずっと思っていた。特にこの国では酷いかもしれない、いろんな分野でそれがあるから」
智也さんが言って、ちょっとため息をついた。そして少し考えてから言った。
「医療分野でも……海外では抗がん剤治療なんて殆ど使わないのに、この国では当然の様にそれを使うし。他にも……海外ではとっくに規制対象になっている有害な化学物質が色々な分野で規制されずに使われているし。消費者側が自分で正しい情報を確認しないといけないのはどの国でも同じなんだけれど……」
それから少し黙ってから、彼は言った。
「特に帰国して先ず驚くのは、有害な人工香料のきつい臭いがあちこちでする事かもしれない。この国で洗剤や柔軟剤や化粧品、消臭剤、芳香剤に使用されている化学物質は、海外ではとっくの昔に規制されているもので、低濃度でも神経系に影響を及ぼす可能性が指摘されているんだ。脳や発達への影響も指摘されているし。小学生の子供がそうした人工香料等の化学物質に反応して救急搬送されて危険な状態に陥った※とか、そうした化学物質に敏感に反応して日常生活に支障をきたしている子供達が増えているという情報も確認しているし」
「香害とか、化学物質過敏症?」
私がそう言うと、智也さんが頷いた。
「患者は子供に限らず、神経系や消化器系、呼吸器系、皮膚やその他に色々な症状が出る。神経系や頭部だと、頭痛、頭重感、偏頭痛、めまい、集中力や記憶力の低下(ブレインフォグ)、不眠、不安や鬱症状、意欲の低下なんかが主かな」
「他にはどんな症状があるの?」
瑠偉ちゃんが尋ねると、智也さんがみんなに教えてくれた。
「消化器系だと、吐き気・嘔吐、腹痛、下痢・便秘、食欲不振。
吸器系だと、息切れ、のどの痛み・違和感、鼻炎・鼻水、目の刺激・充血・かゆみ、喘息様症状や発作。
皮膚やその他だと、紅斑、動悸、倦怠感・疲労感、筋肉痛・関節痛、発汗異常、手足の冷え。
これらが、主に言われているかな。
治療法は確立されていなくて、原因物質の回避、換気や無香料製品の使用、公共の場での配慮等の対症療法しかないんだけれど、これだと患者は社会的アクセスが困難になるし根本的な解決にならない。元々が規制すべき有害物質が原因だし、負担を患者のみに背負わせるよりも、他の人々や子供達の将来の健康リスクや、他の生物への影響や環境汚染防止の観点からも、特に食物連鎖の累積暴露リスクがあるから、こうした有害物質の規制を早期に整備していく方が建設的だと俺は思うけれど」
それまで黙って聴いていた沙羅が口を開く。
「国内の調査では、小中学生の約8〜10%が人工的な香りによる体調不良を経験していて、学年が上がるにつれて割合が高くなる傾向があるんだよね。大人も子供も、重症例だと学校や職場へのアクセスが困難になるし、学業や業績不振や不登校、社会的孤立にもつながる深刻な問題でもある、と言うところまでは一般的な知識として私も知っている。でも脳や発達に影響がある、っていうのは知らないから、知りたい」
「俺も知りたい」
そう和也君も言って、智也さんはちょっと考えてから私達に簡単に説明してくれた。
「嗅覚経路は直接脳に信号を送るから、一部の分子は血液脳関門を通過して神経活動に影響を与える可能性があるんだ。不快な匂いは前頭前野などの活動に変化を与える研究もあるんだよね。
発達への影響では、特に胎児や子供の場合で言うと、母親が妊娠中に曝露することで神経伝達物質代謝や甲状腺ホルモンに影響して、新生児の脳発達に関連する可能性がある。
思春期早発や神経毒性・行動への影響を指摘する研究もあって、子どもの香害症状が学年とともに増加する傾向は、累積曝露や感受性の変化を示唆しているから、長期的に色々な影響を及ぼしていく可能性があって、先に挙げた症状の重症化や併発リスクも上がることになる」
私は閉口したまま冷や汗が流れるのを感じていた。何故なら、カルトによるテロリストがそうした症状を意図的に作為的に被害者に創り出している事もよく知っていたから。改めてその重大な犯罪性や悪質性にめまいがしそうだった。
患者さんの中にどれだけのカルトテロによる健康加害テロの被害者がいるのかわからないけれど──何てことをしているんだろう、本当に──カルトテロリズム実践者やマフィア等が告発者潰しや、世界・社会的に本当に有益な活動や研究を潰す為、加害者の罪や過失を被害者に責任転嫁する為などに健康加害テロを行なっているのも、化学物質過敏症や香害を意図的に作為的に負わせている事も知ってはいたけれど、知れば知る程に、そうした人間や集団がどれだけ危険で有害なのかに、本当に驚かされる。生理的な嫌悪感と吐き気にめまいがする。
「これだけ多岐にわたる有害な影響があるのに……きちんと規制されていないのも問題だし、累積暴露の事を考えたら、今は症状が出ていない場合でも将来の学業・職業能力発揮に対しても重大なリスクだよね」
沙羅がそう言うと、智也さんは頷いた。
「ブレインフォグや意欲の低下も主な症状だから、その人が本来なら発揮できるはずの能力や才能に対して有害な邪魔になるだろうし、その他の症状についても重大な健康被害や社会的被害や損害を被る可能性が高いものだからね」
「ブレインフォグって何だったけ?」
和也君が訊くと智也さんは
「集中力や記憶力等の低下」
「ちょっとわかる。私も普段から無香料か天然ハーブの石鹸や洗剤を使うから、人口香料や抗菌剤って苦手なんだ。あまり匂いが強いと悪酔いしたみたいに気分が悪くなることもあるし。こないだも試験の時に隣の人の香料がきつくて、なかなか集中できなかったくらいだし。きちんと規制すべきものをきちんと規制せずに野放しにしているなんて、まるで子供達や人々の能力を故意に発揮させない様にしているみたいなものだよね」
瑠偉ちゃんが言って、沙羅も頷いた。
「私も智ちゃんからあまり健康にいい影響がないって事は聞いていたから、何年も前に無香料か天然ハーブのものしか使わなくなった事で、その違いには敏感になったかも。自然の香りとは違うのは何となくわかる。そこまで苦手というわけでもないけれど、いい匂いだけれど、ちょっと気分が悪くなる、とかあまり体によくないだろうな、っていうのも何となく分かる様になったんだよね。そう言えば、神奈も人工香料の類を使わないよね」
「うん。家は昔から。母と海と陸のお母さんが親しいんだけれど、二人とも天然ハーブの石鹸とか、化粧水、無農薬有機栽培の野菜や玄米とかが好きで、自宅でハーブや野菜も育てているし、手作りのハーブ石鹸や化粧水とかもよく作ったり交換したりしているんだよ」
「ええ、いいなあ、それ!」
沙羅と瑠偉ちゃんが声を合わせて言ったので、私は笑って
「じゃあ、今度持ってくるよ。いっぱいあるし。瑠偉ちゃんには送るね」
「やった、ありがとう!」
「ありがとう、楽しみ」
素直に喜んでくれるので、私も嬉しくなる。
「よもぎとか紫蘇とかも使ったものがあるんだけど、西洋ハーブ以外のものもいる?」
「うん! でも、ただで頂くのは悪いから、売ってもらう方がいいな」
「そうだね、そうしよう」
「売り物になる程のものではないから、いいよ」
「そうはいかないよ」
「そうだよ」
「うーん、じゃあ、沙羅も一緒に家で一緒に作ってみない? それで、一緒に作った物も一緒に瑠偉ちゃんにもプレゼントするの」
私がそう言うと、沙羅は「え、それ、いいね! やる!!」と飛びついた。「いいなー」と瑠偉ちゃんが言ったので、
「瑠偉ちゃんもいつか遊びに来てよ。それで沙羅と一緒に家に泊まりにくればいいじゃん。そうしたら一緒に石鹸も化粧水も作れるよ」
「ええ、いいの!? 絶対行く!!」
「うん、遊びに来て」
「家にも二人とも泊りに来てよ。ねえ、いつにする?」
「じゃあ、来月! お気に入りのバンドのライブツアーがあるから行きたかったんだ」
「やった、また一緒にすぐに遊べる!」
「ライブも一緒に行かない?」
「行く!」
「私も!!」
そんな私達をにこにこして智也さんは見ていて、和也君は「あのライブツアーに行くなら俺も行きたいな……いいなー」とぼそっと言った。それを聞き逃さなかった私は、
「じゃあ、和也君も泊まりにくれば?」
和也君は「ええ!? いいの!?」と驚いている。
「瑠偉ちゃんと沙羅が私の部屋に泊まって、客間を和也君が使えばいいよ。あ、今うちには犬がいるんだけれど、二人とも犬がいても大丈夫?」」
「大丈夫!」(瑠偉ちゃん)
「むしろ犬好きだし!! 一緒に遊んでもいい?」(和也君)
「いいよ」(私)
「散歩に行っても?」(和也君)
「いいよ」(私)
「やったー!」(和也君)
大喜びする和也君にちょっとびっくりしていたら、智也さんがこそっと教えてくれた。
「家の母親は犬が大の苦手で、和也は昔から犬が飼いたいって言っては反対されていたんだ」
※
柔軟剤の香りで救急搬送・一時は危険な状態に、小5で発症した「化学物質過敏症」…コロナ対策の消毒原因か?絶たれた学校生活と今抱く夢
https://www.yomiuri.co.jp/local/kansai/news/20251211-GYO1T00135/




