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あなたの使い魔は、天使ですか悪魔ですか、それともおっさんですか?  作者: へるきち


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007. 使い魔のサラダボウル

「ふたつある穴は、みっつある」

「そんな格言は知らん」

 アズキが言ってるのは魔界の格言だろうか。

 穴がどうかは知らんが。

 セカンドが居るって事は、サードだって居る可能性は高い。

 そして、可能性で言えば、俺の様な奴だって居るワケだ。

 スーパーで突然話しかけて来た、神経質そうなツラをした男。

 こいつも俺と同じ、アンやアズキが見える者なのだろう。

「ああ、失礼。こういう者だ」

 ぺらっとした名刺を、ぺらっとしたスーツの懐から取り出す。ぺらっとした男。

「内務省特別調査室広報課課長代理の、一文字タルオ?」

 チュウニかな?

 ぼくのかんがえたさいきょうのかたがき。

 個人事業主なら、屋号は自由だもんな。

 きっと、実家は平安時代から続く名家、という設定なんだろう。

 名前は、偽名だろうな。

 名刺には、メールアドレスも電話番号も無かった。

 QRコードはあったので、ソレをスマホで読み取る。

 SNSのアカウントが表示されたので、フォローしてみる。

 名刺は再利用するらしく、再び男の懐に戻された。

 余計な事を言うと「欧米ではこれが常識」とか言い出しそう。 

「ふむ、タマヨンか。追って連絡する」

 ぺらっとした態度で、ぺらっとしたタルオは、すたすたと何処かへ去った。

 使い魔らしき女児が、とてとてと後をついて行く。

 前髪パッツンおかっぱの黒髪に、和装の女児。

 脱走した座敷童みたいだな。

「何アレ?」

「さあ? 剥くのに失敗したギョニソみたいな奴だったな」

 何ソレ?

 何処でギョニソ男に目を付けられたのだろうか。

 偶然、このスーパーに居合わせた感じでは無かった。

 銭湯から尾行されていたのかも知れない。

 俺の背中のイラストを見れば、異常性はすぐ分かるもんなあ。

 おかしなイラスト、おかしなエフェクト、おかしな会話。

 これだけ揃えば「ああ、こいつも俺と同じなのか」と確信出来よう。

 俺だって、そんなの見かけたら、思わず声をかけるかも知れん。

「あいつも使い魔なら、何か役に立つ事もあるのかもな」

 交流を持てれば、有意義な情報交換だって出来るかも知れない。

 もしかしたら、使い魔に最適な仕事を紹介してくれるかも知れない。

 それは、都合の良過ぎる想像だろうか?

「そんな事よりも重要な選択だ、ブラザー。キノコとタケノコどっちがいいと思う?」

「どっちも買えばいいよ」

「やったー!」

 たまに、素の幼女っぽくなるアン。

 見た目通りの幼女なんだろうか。

 ふふんふーん、そっぽこ~、と鼻歌を歌いながら、買い物カゴにおやつをどさどさ放り込むアン。

 その様を、じーっと見つめる姿があった。

 黄色と黒のヨコシマパンツを履いた、アンと同サイズ程度の幼女。

 ブロンドの髪には、まるで触覚みたいなアホ毛が2本、肌の色は褐色。

 手には、小さな槍のオモチャ。

 怪人ミツバチ幼女?

 俺と目が合うと、ビクッと身を震わせ、はわはわ~と去って行った。

 俺の脳内で、大量の怪人ミツバチ幼女が、熱殺蜂球を繰り出す。

 蒸し殺されているのは、俺だろうか。

「何アレ?」

「さあ? メイプルシロップかと思ってたら、ハチミツでしたー、ちきしょー! って感じの奴だな」

 ソレ、何も問題なくない?


 キッチンでは、アンとアズキが、晩御飯の準備をしている。

 さっき買った総菜を、レンジで温めてるだけだが。

 使い魔だから、俺のために働いているのだろうか?

 子供に労働を強制するのは、労働基準法違反、児童福祉法違反、国際的にも重罪だ。

 俺は、罪を重ねているというのか?

 アンとアズキが、見た目通りの年齢なのかは不明だが。

 しかし、世間一般は見た目で判断するしな。

 いや? 見た目?

 見た目で言えば、この悪魔達は、他人からは見えないのだから。

 つまり、本件は立件不可! 俺は無罪!

 勝訴! の文字をささげ持った妖精が、俺の頭の中の草原を駆け回った。

「タマヨンは、どういう状態なの?」

「ああ、たまにこうなる。気にしないでいい」

 俺は、妄想を中断し、食事にとりかかる。

 どうにも一人脳内会議のクセがあるようだな、俺は。

 アンが、やれやれだぜ、と言わんばかりに、じーっと見守っている事が度々あった。

 これからは、そこにアズキも加わるわけだ。

 一人脳内会議は、思い出しムカつきや、勝手に想定した事態にムカつきなどに発展する事がままある。   

 不健全なので程々にしたい。

「そういえば、アズキの契約は、どんな刻印なのかな?」

 ギョニソ男の出現で、聞きそびれてたよ。

 背中にイラストを刻んで、俺を痛車なるぬ痛オヤジにしてくれたアンと違って、暴力的なものはではないらしいが。

 肋骨から指輪を削り出すだけでも、十分暴力的だと思うけどね?

「無いよ。私のは、期間の定めのある契約だから」

「派遣契約の使い魔だったのか」

「三か月単位で自動更新される。解除する場合は、ひと月以上前に意思表示する事。最長で三年間」

「まるっきり派遣契約だった」

 派遣元があるのかは知らんが。

 派遣先の組織名を書類上書き換える事で、最長期間も突破出来たりするんだろうか。

「寿命の分け与えは無い。惑星ひとつ分の寿命は過剰。それ以外の条件は正規契約と一緒、だと思う」

 アズキも惑星と同じだけの寿命があるのか。

 確かに、これ以上の寿命は過剰だろうな。

 過剰な分、若返るとかなら意味もあるだろうけど。 

 もっとも。若返りたいのか、といえば、どうだろうか?

 14歳とか、生きるのつらいもんな。

 チュウニ妄想が常時全開だからな。

 そんな思考の合間に、スーパー銭湯で飲みそびれたビールを飲み、唐揚げをもしゃる。

 そういえば、博多に住んでた頃、近所のスーパーの唐揚げが妙にうまかったな。

 あのスーパー、なんて店名で、何処にあったっけ?

 もう30年前も前の事だから、思い出せないな。

 遥か彼方に来てしまったもんだな。

 関東の食べ物の味には、未だに馴れないものがある。

 そうは言っても、川崎に住んで、もう20年かー。

「だと思うって、なんともフワっとしてるね」

 ふたりは、アニメに夢中で、何の回答も返してくれなかった。

 アンとアズキの生態は謎が多い。

 異世界から来たようだが何故来たのか?

 俺以外には不可視なのは何故なのか?

 いや、俺には見えるのは何故だと言うべきか。

 すっぽこ語から日本語に切り替わるまでの期間も謎だ。

 アンは2週間、アズキは半日程度、その差は誤差というには大きい様な。

 惑星の寿命から見れば、計測不可能なレベルで誤差だろうけども。

 下手な聞き方をすると、姉妹を比べて責めている様になりそうだから、黙っておくか。

 おそらく本人達も、答えを持っていないだろうし。

 ギョニソ男なら、何かを知っているのだろうか?

 他にも、同類は居るのだろうか。

 そいつらは、どうやって暮らしているのだろう。

 俺は、酩酊した脳でそれ以上考えるのは諦め、寝る事にした。

 アンとアズキは、アニメを観続けていた。


「一昨日来てくれ」

 早朝にインターホンを連打して俺を起こしたバカにそう告げると、俺は玄関を閉じた。

「だから、一昨日来たじゃないですかー? おにー! あくまー! おにーちゃんめー!」

 あれ? 待てよ? 今なんか居たぞ?

 俺は、思い直して玄関を再び開ける。

 そこには元同僚の魔女と、だるそうな女児。

 薄い青色をした髪は、ふわふわとしたくせっ毛で肩には届かない程度の長さ。

 瞳の色も青、だるっと瞼が半分閉じている。

 肌の色は、アンとアズキの中間くらい。

 魔女とは似ている部分が無いな。

 娘や妹の可能性は除外していいだろう。

 血縁どころか、生物としての種が違いそう。

 妖精とか精霊? そんな感じだろうか。

 背中に、羽根があっても不思議じゃない。

 という事は?

「すっぽこ」

 すっぽこかー。やっぱりそうかー。 

 俺の身の回りで、すっぽこ族が大量発生の予感。

「ちょっと、この子預かって下さい! それじゃ!」

 職場に、ビールサーバはあっても、託児所は無いのだろうか。

 無いんだろうな。

 魔女は、青すっぽこを置き去りにすると、最寄り駅方面に走り去った。

 我が家が、わくわく幼女ランドになってしまった。


「確かに、おはぎってのはおいしいなっ!」

 青すっぽこは、いきなり日本語を喋った。

 もしかして、アンコを摂取すると、日本語を習得するのだろうか?

 俺も、一緒になって朝食代わりに、おはぎを食べている。

 飲み物は、いつもの雑に淹れたコーヒー。

「僕はアオイ。おはぎのお礼に、君に精霊の恩恵を授けようじゃあないかっ!」

 既に名前があったか。魔女が付けたのかな? 青いからアオイ? 安直だな。

 どうやら、契約が増える心配は無さそうだ。

 悪魔じゃなくて精霊らしいけど。

「俺はタマヨン。こっちの黒いのはアン、白いのはアズキ」

「ピクミンみたいに言うなよ。我を、あんな小さき生物と一緒にするとは、やれやれだぜ」

 アンは、たまに尊大な物言いになるな。

 アオイは、そんなアンに怯えたのか、ビクッとした。

 なお、黒ピクミンは硬くて攻撃力が高い、白ピクミンには毒がある。

「怯える必要は無い。精霊なんて眼中に無い。皆、等しく雑魚」

 毒あったなあ、うちの白ピクミン。

 初対面の相手を、いきなり雑魚呼ばわりだよ。

「お、おう? 精霊だって群れると、強いんだけどな?」

 まさに、ピクミン。

 いや、ピクミンじゃなくて精霊なのかー。そうかー。

「アオイは、何が出来るんだ?」

 おはぎのお礼に何かしてくれるらしいが、何が出来るんだろうか。

「召喚魔法で、何でも呼び出せるよ」

「へえ、何でも?」

「お、おう? 何でもだっ! 死者だって召喚出来るんだからな! 五色龍の鱗が代償に必要だけどっ!」

「ごしきりゅう? ドラゴンって事か?」

 この世界には居ないんだけどな。

 じゃあ、実質何でもじゃないな。

「そう。黒と白と、ゴールデンと、あとなんだっけな? 赤とー? 草?」

 なんとも、あやふなアオイの説明を、アズキが補足してくれる。

「草じゃなくて枯れ葉。それと、ストラトブルーと、ピンク、プラチナ、クリスタル」

「五色以上ない?」

「何色居るのかは、僕も良く知らない。そのうち五色分あればいいよ。逆鱗なら一枚でもいい」

 逆鱗を手に入れるのは、難易度高そうだな。

 そもそも、ドラゴン居ないけど。

「逆鱗って、とれたら死んじゃうだろ?」

「アンは、とれた事無いの? すごく痛いけど死なない。半年は歩けないくらい痛い」

 逆鱗って足の生爪みたいなものなの?

 そりゃ、剥がれたら痛いだろうなあ。

「逆鱗って、けつの上ら辺にある固いのじゃないの?」

「それ、角質じゃない?」

 けつの上か、ちょっと見せてってワケにはいかんなー。

「なんか俺、ドラゴンが目の前に居る気がして来たんだけど」

「だから提案してるんだよ。黒と白なら、欠片でもいいかも。最上位のドラゴンだからさ」

 そうかー、うちに居ついたの、最上位のドラゴンだったかー。

 惑星と同じ寿命持ってるはずだわー。

「じゃあ、ちょっと風呂場で、削って来るわ」

「だから、そこじゃなくて、足の爪だってば」

 爪も鱗の一種みたいなもんか?

 半分けつを出したアンが、俺に足を差し出してくる。

 妙なプレイにも見えるが、幼女だからな。

 アンの足の爪を、爪切りで、ぷちんぷちんと切る。

 アズキの足の爪も、切っておく。

 猫の世話と変わらんな?

「ほい。これを代償に、召喚してよ」

 切った爪、いや、最上位ドラゴンの鱗の欠片をアオイに渡す。

 こういうのってさー、過酷な旅と戦いの末に、命がけで集めるものじゃないの?

 幼女の世話するついでに、あっさりゲットしちゃったぞ。

 貴重な欠片、何枚かどっかに飛んでっちゃったし。

「何を? 死んだ毛根? それは無理かなー」

 だと思った。

 まだ何もリクエストしていないのに、勝手に決めつけているのはどうかと思うが。

「うーん、そうだなー。代わりに、コレでどうだー!」

 俺を魔法陣エフェクトが包む。

 ぐるぐるゆらゆらと、それはしばらく続き、そしてー。

「おい、これ何を召喚したんだ?」

「14歳女児」

 何してくれちゃってんの?

 俺の体が、リアルチュウニの女児になっていた。

 え? 召喚魔法ってそういうの?

 おはぎの返礼が、こんななの!?

「これで一緒に風呂に入れるな! ブラザー!」

「悪人ヅラよりは、活動しやすいかな?」

 なんでそんなに、あっさり受け入れとるんだコイツらは。

 俺も、異常事態に馴れつつはあるが。

 チュウニに転生って何だよ。

 せめて成人にして欲しかったよ。

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