051. 不思議の国のアズキ:Q
All hung geek and pain armed call,would mine.
Per pit call ?
Would mine !
ANK ! ANK ! ANK !
即興メタルナンバー「おはぎあんぱんあんこうまい」をシャウトする。
コールアンドレスポンスもコーラスも、アンがおらんとつまらんっちゃ。
ドラヤキは、ずっと寝ちょるし。
ワシは、ニャア。
修行中の魔女じゃけ。
わずかな金と明日のパンツだけをリュックに詰め、畳を飛ばして。
この街にやって来たばかり。
ちょっぴりホームシック。
なんでワシ、修行の旅になんか出たんじゃろか?
ほんとは13歳じゃのうて1歳児じゃし。
もう帰ろうかいの?
じゃって、親分がピンチじゃし。
生体反応が切れてしもうたんは、インターネットの繋がらん世界に行ったからじゃろう。
じゃがー。
『WANTED
タマヨン
スケ番堕女神
罪状:釘バットの不法所持
こいつを捕まえた者に賞金100万女神ドル
生死を問わず
ダメガミシティ』
なんで、指名手配されちょるん?
釘バットは、異世界間条約で禁止されちょる武器じゃけどのう。
親分のは釘じゃのうて、きのこの山なんじゃけどなあ。
食品衛生法に引っかかってしもうたんかのう。
100万女神ドルって、日本円じゃとなんぼなんかのう。
ダメガミシティの通貨は、価値がよう分からん。
銀河鉄道の無限パスが、旅行雑誌の付録じゃからー、フェルミ推定でー……。
やっぱり分からん。
もうええじゃろ。
魔女の修行は、おしまい!
そもそもワシ、魔女じゃのうてインフラエンジニアじゃしの。
本業は、ゴールデンすっぽこじゃし。
おうちかえろ。
この日記も、親分に返す。
^^) _旦~~
アズキとふたり、道に迷って途方に暮れていると。
ウサギオブゴールドがウロウロしているのが見えた。
図書館に不可視属性のバニーガールが居る程度かと思ってたのに。
やべえ、この不思議の国、不思議が過ぎる。
どんなマッドティーパーティやんのよ。
お茶ドゾー、じゃねえんだよ。
なろう・異世界系かよ。
KADOKAWAに消されんぞ。
「親分! ただいまー」
全身黄金製のうさぎに乗っていたのは、ニャアとドラヤキだった。
近くに居るだろうと思ってはいたが、何だコレ。
「お、おう、もう修行の旅は終わったのか……」
「このロボ、どうしたの?」
「畳をわらしべ長者的に交換したんよ」
畳は訪日外国人に人気だという。
それなりに価値はあるだろう。
しかし、どういう交換の遍歴を辿ればコレになるというのか。
これはまずい。
この世界の異常性は「不思議の国」では済まされない。
もしかして?
左手首のすっぽこうぉっちを見る。
『インターネット接続を確認してください』
とんでもない考慮漏れだ。
オフラインでのスタンドアロン動作が用意されていない。
インターネット接続環境なんて無いのが、異世界スタンダードだというのに。
こいつが使えないなら、髪飾りの方だ。
「タマヨンの髪飾りどうなってる?」
「あ、ドクロの目がイエローに光っちょるっちゃ」
「ここは、サンドボックス環境だったのね」
それも、おそらくは複数の異世界が混ざってしまっている。
メモリリークでも起きてんのかな。
神聖カワサキ帝国になら、巨大うさぎロボが居ても不思議ではない。
隣国には、おっさんのパンツを剥ぐ巨大ロボがあったしね。
でも、ゴミ同然の価値しかないゴールドを外装に使うのはおかしいだろう。
川崎市だと、段ボール製の巨大ロボって感じだよ。
……それはそれでアリか?
いや、そうじゃない。
「なんやねん。ここの実効支配成立まで、あと1日なんやで? なんで逃げなあかんの」
うさぎに乗ってクロスロードに戻ると、梅ちゃんが明らかにおかしい。
こいつはいつもおかしいけど、そういう事じゃない。
「梅ちゃん、ここに何年居たの?」
「せやから20年やで?」
そんなはずはない。
さみしがり屋の梅ちゃんが、たったひとりで20年も居るはずない。
こんな、客がひとりも来ない喫茶店なんかで。
梅ちゃんのメモリーまで汚染されている。
ガベージコレクションなのか?
ガベージコレクションが何なのか、よく知らんけど!
タマヨン、Javaの理解は諦めたから。
「なんじゃこれは。ハイパーバイザのバグかのう? それとも、サイドチャネル攻撃でも受けちょるんか? このサンドボックス環境は、明らかに異常動作しちょる」
「なるほど、そういう事ね」
ニャアがサンドボックス環境で障害が発生している可能性を提示すると、アズキが何処からか取り出した釘バットを大きく振りかぶるとー。
「うがっ! 何すんねん!」
「あら? 元女神って頑丈なのね?」
梅ちゃんの頭頂部をぶん殴ってしまった。
しかし、梅ちゃんは平気だった。
そうか! そういうことか!
「念のため、全員死のう」
「お、おう!? 何言うてんねん!?」
サンドボックス環境からエスケープする確実な手段。
それは、術をかけられた者の死。
文字通りのKillコマンドで、プロセスを停止するのだ。
「ひやひやどきんちょのもーぐたん!」
タマヨンは、禁断の秘術タイムリープコマンドを唱えた。
これを実行すれば、異世界条約違反で全員死ぬ。
アズキが釘バットを行使したのも、条約違反を狙ったのだろう。
「あれ!?」
「タマヨンは、魔法が封印されてるじゃないの」
「あー、そうだったー」
「あ、ワシも魔法は使えんけえの。インフラエンジニアじゃけ」
え? アズキだけじゃなくニャアまでなの?
別に今その事を、責める気はないがー。
初めて異世界転移の魔法を実行した時に「クアッドコアならなんとかなる」って言ってなかった? 実はあの時、デュアルコアだったって事じゃん? 機種選定の段階で致命的なミスをしたままリリースしちゃうなんて、そんな大炎上プロジェクトは、さすがのタマヨンでも初めてなんだけど? システムテストで発覚して、そこから巻き取って鎮火した経験ならある。あれは地獄じゃったわー。何が地獄って、それで某金融機関に火消しのスペシャリストとして認定されてしまった事だね。
「いつものトリップをしてる場合じゃないわよ、タマヨン」
「あ、そうだった」
この場では、ドラヤキだけが魔法を使えるのだけど。
ドラヤキが使えるのは生活魔法と飛行魔法だけだった。
どうする? 上空1万メートルからダイブでもするか?
いやいや、すっぽこといえどもドラゴンだぞ? ストラトドラゴンなんて天空の支配者らしいぞ? 死ねずにもっとヒドイ事になる可能性もある。
どうすればいいのか分からないまま、タマヨン達は旅に出た。
つづく
予告
「俺は、ズンダはアンコとして認めねぇ」
次回 シン・不思議の国のアズキ




