最終話 シン・タマヨン
「なあ? 誰が火災女やと思う? ワイは、タマヨンはんやと思う」
「そんな、雨女の亜種みたいに、言われてもなあ」
しかし、梅ちゃんがそんな事を言い出すのも無理は無い。
目の前で、ごうごうと燃え盛る小豆畑。
明日から収穫しようね、なんて言ってた矢先の大惨事。
なんで、燃えてんの?
タマヨン達が1年以上かけて、何も無い荒野を開墾するところから苦労して来たのに。
毎朝、日の出と共に起きて、農作業をし、みんなでちょっと宴会をしたら、天然の露天風呂に浸かり、日が暮れたら眠る。
そんな生活を毎日毎日、ずっとずっと続けて来て、やっとなのに。
不思議の国から旅に出て、辿り着いたのは、魔法少女が村長として治めている村だった。
魔法少女は前世がシステムエンジニアだったそうだ。
OJTのノリで魔法大戦の異世界で魔法をおぼえて、この国に死に戻りして来た。
魔法のチートパワーでワイバーンを討伐。
ドラゴン爵という爵位を得て、村長に成り上がった。
日本と違って、食品衛生法なんてないこの世界では、ワイバーン肉で村おこしが出来たし、順調に発展しているのだとか。
もっとも、タマヨン達が来た時には、村長は不在。
「何処行ったのか知らないけど、まあどっかで魔王でもやってんじゃないの?」
今は、村長の里親だというバンパイヤのお姉さんが、村長代理として統治している。
バンパイヤのお姉さんは定食屋を経営しているので、「うちでお給仕のバイトを住み込みでやりなよ」って言ってくれたけども。
接客業務に向いてないタマヨンは、お断りをした。
「だったら、村のハズレを好きにしていいから、小豆の栽培でもしなよ」
ってことで、現在に至る。
村には銀河鉄道の駅があったので、数子と桜子、アンも途中から合流した。
惑星エーテルで、食っちゃ寝生活をしていた3人は、随分とだらけきっていたけれど。
そんなポンコツに足を引っ張られながらも、過酷な開拓生活は存外悪くなかった。
いや、むしろ楽しかった。
ここには、孤独死は無い。
過労死もきっと無い。
きっと、ここがずっと何かを探していた冒険の最終目的地。
約束の地なのだ。
そう思ったんだけどなあ。
ごうごうと燃える炎が、すべてを奪ってしまった。
ちなみに。
タマヨン達が閉じ込められたサンドボックス環境は、いつの間にか解除されていた。
死んだ覚えも無ければ、どこかに巻き戻った様子すら無いというのに。
冤罪でダメガミシティに指名手配されていたらしいから、あそこの連中の仕業なんだとは思うけども。
全ては、夢か幻だったのか?
公園で拾った魔法少女なんて居なかったのかも知れない。
全てをやり直そうー。
そう思って、禁断の秘術タイムリープ魔法を実行した瞬間。
俺は、川崎市多摩区の公園で、ひとり月を見上げていた。
いや?
俺?
俺じゃない。
14歳乙女のままだぞ?
「ちょっと、タマヨン何をやっているのよ」
「兄者ー、迷子にならないでよー」
「親分は、すぐ迷子になるけえのう」
「タマヨンはん、もっとワイらを頼らなアカンで」
「そうだよ。お姉ちゃんが、異世界鉄道の無限パスを売って資金作ったから、子供食堂でもやって暮らして行こう。もちろん、本業は投資で爆益の、節税対策だよ」
「姐御―、あっしらも子供食堂で雇って下さいよー」
「出所したっていうのにー。どこも雇ってくれなくってー」
「それな。マジつらたん」
「宇宙海賊も再就職先に困ってるんだけど」
「しょうがねえなあ。うちもその子供食堂に居着いてやるよー」
「ニャー」
「おい、月がキレイなんだろ? さっさと立てよマイブラザー」
「ああ、そうだな」
もう異世界へ行く事も、魔法を使う事も無い。
でもね。
孤独死だけは無い。
それでいいじゃん。
完
アナザーバージョンを、アルファポリスで連載しています。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/768763641/101058137




