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不可視属性の魔法少女と夢見る使い魔  作者: へるきち
タマヨンをめぐる冒険

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031. 異世界怪獣大決戦

「あー、もう終わっちゃった? タマにゃんとカグヤにゃんの怪獣大決戦があるって、数子にゃんから聞いたんだけど!」


 ここは、戦国異世界にあるソバ屋。

 タマヨン達が座敷で女子会をしている最中へ、桜子が湯上りほこほこで駆け込んで来た。

 異世界ゲートの露天風呂で検疫を受けるのに時間がかかったのだろう。タマヨンとカグヤの決戦を見逃してしまったと残念そうにしている。

 カグヤとは、タマヨンが付与した座敷童の新しい名前。梅ちゃんビルに付いてるから、梅と来たら竹か松だな? 竹ならかぐや姫だな。アレも確か神の一種だし、拾って育てたじいさんとばあさんの家を繁栄させたからね。それって、座敷童と同じじゃん。という実に適切あんいなネーミングである。命名根拠を、基本設計書に明記してもいい。

 それはそうと、いま桜子はとても気になる事を言ったよ?


「数子から聞いたって何? どうやって通信してんの? 魔法? それとも、ゆんゆん電波? それ電波法違反じゃないの?」

 数子が戦国異世界に、桜子は川崎に居た。

 どうやって次元の壁を越えて通信したというのか?

「へ? チャットだけど?」

「は? ここはドコモもKDDIもカバーしてないけど?」

 人口カバー率が100パーセント近い通信キャリアでも、異世界は範囲外。

 衛星通信だって無理だ。

 わざわざ説明するのが虚しいくらいに明らかな事実だ。

「え? ここワイファイの電波あるじゃん」

 なんだって?

 ここの文化レベルはともかくとして、どうやって次元の壁をイーサネットが越えての? パケット交換方式でも無理だよ。

「ワシがやった。異世界ゲートにケーブル敷設して、こっちにアクセスポイント置いた」

 ニャアの仕事だった。え? 異世界ゲートの床下って配管埋まってんの? 壁の中の立管かも知れんけど。

 まさかそんな事が可能だとは思ってないから、気付かなかった。外出中はスマホ触らないし。だって、歩きスマホどころか、いくさスマホなんて危険過ぎるでしょ。

「すげえな。もしかして、ヨミランドにもアクセスポイントあんの?」

「いんや、あそこは時差が大き過ぎて無理じゃった。証明書が無効になってしまうけえの」

 へえ、ほんとに時差があったんだ。という事は、戦国異世界は川崎と時刻同期出来てるんだ? UTC+9くらい? だいたい同じ時間帯っぽいからね。

「ここだって時差あるでしょ? 千年程度みたいだけど」

「ほうじゃけど、ここは魔導粒子があるけえ。メディコンかませたらいけたんよ」

 それ、どんなメディアコンバーターなの? メディア以外にも変換してない?

「エーテル変換かな? イーサネットの語源ってエーテルだし、親和性高そう」

「うん。変換ロジックは単純なもんじゃの」

 どうやら、アンには理解出来ているらしい。エーテルってOSIの第何層なの?

 もうITインフラの整備でも、ニャアとアンには敵わないなあ。

 タマヨンはもうシステムエンジニアは廃業だ。これが、我が子に事業を託すという事か。こんなに嬉しい事は無い。すっぽこ娘達に養ってもらおう。


「わいはいはどうでもいいから。勝負はどうなったの。どんな勝負したの? 飲み比べ?」

 桜子は帰国子女だがおばあちゃんなので、21世紀になってから普及した単語は発音があやしい。相当に世代のギャップがあるはずだが、桜子と前世妹は随分と仲良くやっている。

 そんな桜子と前世妹は板わさをつまみながら日本酒を飲んでいる。ソバ屋で酒を飲むのは、由緒正しい大人の嗜みだからね。タマヨンも、ここでは飲みたくなってしまう。14歳女児の体だから、飲まないけど。

 なお、ふたりが飲んでいるのは、この地方の地酒だ。戦国異世界の食文化は、ソバもそうだけど、川崎と大きな差異がない。

 このソバ屋は、地元のソバ打ち名人を店長に起用して営業してもらってる。ギョニソは、この名人に弟子入りをして修行中。建物は、これも地元の工務店に発注した。ソバ屋だけでなく温泉旅館も併設して、地元住民をスタッフとして雇用した。地産地消というやつだね。タマヨンは、この地の天下人として、ちゃんと治世を行っているのだ。気分は完全に、第六天魔王。本人と違って、天下布武を成し遂げちゃった。

 で、カグヤとの勝負だけど。


「じゃんけん?」

 そう、じゃんけん勝負だ。

 勝ったらハリセンで相手を叩き、負けたら洗面器で防御する。

 座敷童の加護とは、選択の最適化である。時には、豪運をも引き寄せる。そんなの相手に、じゃんけんで勝てるワケないじゃん。魔法関係なくない?

 もちろん勝負はうやむやにして、女子会に持ち込んだ。だから、勝負はまだ始まってもいない。

 

 少し話が逸れるがー。

 選択の最適化とは、投資の手法に通ずる。買いか売りか? どの銘柄にするのか? 最も重要なのは利益確定と損切りのタイミングだ。そういった選択を最適化すれば利益となる。

 家の繁栄もまた同じ。ひたすら働くのか、それとも将来に備えて勉強を優先するのか、出世のために打って出るのか、守りを固めるのか、そういった選択を最適化するのは投資と同じ、いや投資そのもの。

 桜子が、破産寸前まで堕ちかけたのは、座敷童の加護と悪魔の預言が衝突したから。どっちも似た様なモノだからね。相乗効果を発揮するのではなく、相殺しちゃってた。だから、梅ちゃんビルから桜子が撤退した事で破産の危機を脱した。


 話を戻そう。

 タマヨンvsカグヤの怪獣大決戦を如何にして回避するかだ。


「この機に乗じてカグヤにぶっ殺されそうだし、勝負なんてやだよ」

 ハリセンでタマヨンヘッドを砕くとか、武闘派のカグヤなら余裕そうじゃん。右脳が損傷しちゃったら、悪魔の湯でも治せないんだぞ。

「この機とは? わらわ、タマヨンに恨みとか一切持っておらぬが。むしろ気に入っておる。なんかイイ匂いするからの」

 カグヤの回答が腑に落ちない。

 なんでイイ匂いすんの? 精霊の召喚した体に、加護までくらってるのに。

 そりゃ確かに、14歳女児はラクトンという芳香成分を分泌する機能があるからね。我ながら布団とかイイ匂いすんなあ、とは思ってるけど。

 乙女の力は、精霊のクサクサ成分にも勝ると言うのだろうか?

 仮想妹と桜子の30歳女児達は、もう乙女力が無いんだろうけどさ。

「あれ? だって、この体って精霊が召喚したやつじゃん。加護だってくらってるし。座敷童的には、クッサイんじゃないの?」

「ああ、そういう事か。それらはすべて、すっぽこ逆鱗の代償であろ? すっぽこクサさに勝てるものなど、どの世界にも存在せぬ」

「そうなの? あれ? もしかしてタマヨンって、ほぼドラゴン?」

「うむ。伝説のストラトドラゴンになっておらぬか? 知らんけど」

 何ソレ? タマヨンの謎仕様が追加で判明してしまった。

「すっぽこクサさという言い草はともかく。タマヨンの体は私達の逆鱗を代償にしてるからね。あいつストラトドラゴンの素体を召喚しちゃったのかもね? それに、くらったのは加護じゃないわ。生殖機能を削除されちゃっただけよ」

「そうかー。姉ちゃんはストラトドラゴンかー、アンもそんな気がしてた」

「ワシの逆鱗も使っちょるもんなあ。最上位ドラゴンの逆鱗を3色も混ぜれば、ほらあストラトドラゴンにもなるじゃろう」

 生殖機能の削除は、だけよ、で済まされる行為では無いと思うが?

 それはともかく。

 すっぽこ娘達まで、タマヨン=ストラトドラゴン説を肯定する様な事を言ってる。

 伝説のストラトドラゴンってどういう事!? ストラトドラゴンって何?

 タマヨンは、一体どうなっちゃうの~?


 理解出来ない事で騒ぐのは時間の無駄だ。

 この課題は保留にして、ソバを食べようじゃないか。ここはソバ屋なのだから。


「どうだ? 吾輩の打ったソバは」

 ギョニソが打ったソバを食べる。丁稚の腕前を確認するのも、店舗オーナーの仕事だろう。飲食店の経営なんてしてると、太っちゃうのでは?

 丁稚という身分になって、ギョニソの一人称が吾輩になってしまった。

 この世界には、戦国時代の様に身分制度がある。指揮命令系統と責任の所在を明確にするための制度なので、序列に厳しいわけではない。だから、丁稚が尊大な態度でも打ち首になったりはしないのだけど。何故に、吾輩?

 タマヨンと同じで、ギョニソもコミュ障のチュウニだから、仕方ないね。

 タマヨンの一人称は、タマヨンで定着しつつある。

「うーん…、実にギョニソらしい」

 まったく褒めてはいない。タマヨンはこれでも上の立場だから、言葉を選んでいるのだ。なんと言えばいいのか。敗残兵の引率くらいしかやった事無いからなあ。もしくは大炎上案件のなんちゃってPMとか。あんなのは、メンバーをニンゲン扱いしてる余裕無いし。派遣だった期間が長いタマヨンは、人の上に立った経験が少ないのだ。

「生意気にも十割になんかに拘ってるからよ。何でも理想を求めて完璧にしたいだなんて、傲慢な雑魚ね。精進する余地も無いわ」

 人が言葉を選んでる隙に、アズキがずばっと斬り込んでしまった。この毒ドラゴンはー、正論モンスターか。まるで、タマヨンのそのもの。期間の定めのある契約とはいえ、タマヨンとは一心同体の使い魔契約してるからね。是非もなし。

「ふむ。課題を把握した。後は、対処するのみだ。また食べてくれ」

 傲慢なギョニソは、まったく怯む事無くそう言い放つと、厨房に戻って行った。


「あいつ、ブレんのう。性別が何度も変わったら、並のニンゲンは精神崩壊するもんじゃろ?」

 ニャアが言っている通りで、ギョニソの染色体構造は再びXYに戻った。神聖カワサキ帝国から戦国異世界に転移する過程で、千年以上の時差を越えたからだ。妖精の加護は賞味期限が千年だからね。

 おそらく、タマヨン達みたいに無限の寿命が無いと、異世界ゲート通過時に寿命が尽きて即死しちゃうと思う。今まで気にしてなかったけど、なんて恐ろしいんだ、異世界ゲート。

 アレ? だとするとギョニソはもう神聖カワサキ帝国には戻れないんじゃ? 川崎への里帰りも無理だな。

 まあいいか。この地で人生シーズン2を送って、骨を埋めてくれ。ちゃんとタマヨンが供養してやるよ。おぼえてるうちは。

 あ、女宇宙海賊のミヨちゃんもかな? ミヨちゃんは今、梅ちゃん喫茶に住み込みで料理の修業中だ。調理担当のギョニソが居なくなったからね。さすがに、喫茶ヨミランドの休業を続けるわけにはいかないな、こっちは何とかしないと。

「梅ちゃん喫茶に帰ったら、ミヨちゃんのケアをしないといけないね? 精霊の加護が解けてたらヨミランドに帰れないよ」

「言われてみれば、そうかもね? ただ時間を逆光した形だから、どうなっているのかしら?」

 コレは最優先の課題だ。スマホのカレンダーにタスク登録しとこ。


「これ、話を逸らして、わらわとの勝負を流そうとするでない」

 ありゃ、カグヤに気付かれてしまった。

 仕方ない、この戦いは避けらぬさだめか…。

 乙女は、負けると分かってる戦いはしないんだけどなぁ。


 結論だけを言うと、タマヨンの圧勝だった。 

 それどころか、あやうく希少種である座敷童を滅してしまうところだった。

 悪魔の湯がなければ即死だった。


「親分、わやへるのう」

「どうやら、タマヨンは本当にストラトドラゴンみたいね」

「アン達でも勝てそうにないよ?」

 おかしいな? 最終試験をパスしたはずなのに、まだまだ特訓が必要らしいよ。

 ストラトドラゴン用の特訓が必要なんだってさ。何ソレ?

 なお、ストラトドラゴンは、宇宙と同等の寿命をもつらしい……。

 もうええじゃろ? そういう荒唐無稽なファンタジーは求めてないんよ。

 この物語は、擦り切れた老害じじいタマヨンのハードボイルド純文学のはず…。


「そういうわけでー、梅ちゃん喫茶の地下に温泉をひきます」

「何が、そういうわけなのよ。中間の工程をは省かないでちょうだいって、いつも言っているじゃないの」

 いつもの我が家のやりとりなワケだけど、これはミヨちゃん問題の暫定対処でもあるが、何よりも異世界ゲートの安全性向上のために必要である。この課題の優先度は最上位のランクSだ。

「異世界ゲートって、使うたびに時差の分だけ寿命削られるじゃん?」

「そうね。加速劣化試験が捗るわよね。1万年と9ヶ月も一瞬で経過するんだから」

「ん-? じゃとするとアンコや小豆が腐らんかったのは何でじゃ? ゴールドやヒヒイロカネなら問題無いじゃろうけど」

 おやー? いきなり前提が覆されそうだぞ? ブラックボックステストで実証しようじゃないか。

「時間経過を正確に計測する方法は無いかな? 異世界間の正確な時差を知りたいんだけど」

「そうじゃのう。炭素14あたりの放射線半減周期を計測するとええじゃろ」

 こういう科学的な分野は、ニャアが詳しいからすぐに回答が返って来る。

 いつの間に、そんなに学習してるんだろうか?

 怠惰なタマヨンとは大違い。

「その計測機器っていくらすんの?」

「ん-? 精度に依るけど、フェラーリ1台分くらい?」

「そんなお金があったら、アッガイ買お?」

「アッガイは売ってたとしても、フェラーリ百台分くらいはするんじゃないの?」

 うーん、フェラーリ1台分のお金だって無いよ。地下にお風呂を作る工事費用だってあるかどうか。

「お主ら、あほか? よくもまあ仕様の分からぬものを平然と使っておるなあ? アンコは、わらわが防御結界で包んだのだ。他にも分からぬ事は、まずは物知りお姉さんに聞くとよい」

 そういうウィキペディアに頼るみたいな方法は、システムエンジニアの矜持にかかわるんだが、話が進まないからそれでいいか。


「異世界ゲートの事なら、座敷童と五色龍の得意分野ちゃうんか?」

 物知りお姉さんこと梅ちゃんに聞いたら、打ち返されてしまった。

 有識者に質問したら別の有識者を紹介され、たらい回しで元に戻って来る。よくある話だ。誰だよ、設計書も残さずに勘定系の基幹システム作ったやつ。どうやって更改すんのー? みたいな事で、どれだけ社内行脚をした事か。

「まあ、ワイの作った異世界ゲートは、五色龍とはちゃうかも知れんな。重要なのは非武装地帯の露天風呂や。喫茶ヨミランドにもなあ、温泉引いた方がええんやけどなあ。あの辺、源泉が無いんよ。あっても寿命を伸ばす様な効能はあらへんし」

「あら、そういう事なら、私の設計と同じよ」

「そやろか? 自分らの作ったゲート、時刻同期の機能ないやん。死ぬかと思たで」

「わらわ達にとって、1万年程度は誤差であるからなあ」

「元女神にとっては、2度寝して遅刻するくらいの時間やで?」

「それも、じゅうぶん誤差の範囲だと思うけど?」

「まあ、それはもうええわ。今から同期させると、ミヨちゃんが元の世界に戻れへんし。せやから温泉が要るんや」

「寿命が伸びる温泉なんて何処にあるのよ? それって比喩じゃなくて本物の効能なんでしょ? あー、寿命が伸びるわーって、タマヨンがよくお風呂で言ってるけど」

「あるやろ。悪魔の湯って知らへんの? アレはほんまに寿命が伸びる。半年くらい湯治しとったら不老不死になるくらいやで」

「ああ、そういう事? タマヨンの言ってた事って正解だったんだ」

「親分には、ロジック抜きで最終回答に辿り着く異能でもあるんじゃろか?」

 歴戦のシステムエンジニアは、障害の根本原因を瞬時に見抜く事が出来る。

 これは決して異能などではない。過去の経験から、似た様な障害に思い当たるからだ。ヒトは同じ過ちを繰り返すものだからね。その能力は、ITインフラ以外にも応用できるものなのだ。

「アン達の姉ちゃんは、ニュータイプなのかな?」

 人類の革新どころか、もはやヒトじゃない生物になっちゃってるけどね。

 

 実に有意義な会議だった。会議とはこうありたいものだね。

 部署間の縄張り争いだとか、責任の押し付け合いに終始して、時間だけ過ぎていく会議のなんと多い事か。

 我々は運命共同体だから、そういうのが一切無くていい。


「というわけでー、梅ちゃん喫茶の地下に温泉をひきます」

「振り出しに戻ったわね」

 いいんだよ、ちゃんと合意が取れたんだから、先に進んでるよ。

「まあ、ここに悪魔の湯を引き込んでくれるんなら、喫茶ヨミランドにはワイが繋げたるけど。地下に風呂って、なんかなあ? やっぱ露天風呂やろ」

「そうは言っても、このビル容積率いっぱいなんでしょ? 屋上だとヨミランドに抜ける空間を確保するための小屋が増設出来ないじゃん。庭も無いしさ」

「そうなんよなー。建て替えた方が早いくらいやで。そうや! 建て替えてまお! このビル、ええ加減寿命やし。昭和の設計やから、断熱性能皆無やしな」

「何て豪胆な。隣のビルと繋げたらいいんじゃないの?」

「それはアカンやろ。また桜子はんが破産するで?」

「ああ、そうか分けておかないと、カグヤの加護の対象に入っちゃうのか」

「うむ。わらわ、部分的に加護から外すの無理。めんどくさい」

「建て直しの間、悪魔の湯で湯治しようや、ちょうど半年くらいになるで」

 

 やはり決済権を持った責任者が参加していると、会議の進みが早い。

 じゃあこの件は部長会でお伺いを立ててー、とかやってると話が進みやしないよ。

 最近、そんな思い出しムカつきが多いタマヨンです。もう会社勤めになんて戻れません。経営者は最高です。何もかも自己責任で、ドキドキしちゃう事もあるけどね。


「私は、時の狭間を旅する女。そんな私を人は魔女と呼ぶ……。え? ほんとに魔女になんの?」

 ミヨちゃんには悪魔との契約をしてもらう事になった。

 そうでもしないと、戦国異世界へ湯治に行けないからだ。

 ミヨちゃんからは精霊の加護は消え去っていた。千年加速させるのも、巻き戻すのも、同じく加護の賞味期限切れをもたらすみたい。カグヤに匂いで判定してもらった。アンが、ちんちんの有無で確認しようとしたので、それは止めた。

 だがしかしー。


「あー、ちょっともう契約がいっぱいなんですよねー。タマヨン様との契約を移管すれば空きが出来るんで、もっと上位の悪魔を召喚してもらえます? 本来、魂は格の見合った悪魔に預けるものですし」

 なんだか、腰の低い営業マンみたいになってる悪魔オモッチにそんな事を言われてしまった。魂ってドメインみたいに移管出来るんだ? 上位の悪魔に献上する事が出来るって? へー。

「オモッチが呼べばいいんじゃないの? 上位悪魔の知り合いなんて居ないんだけど」

「いやいやいや! 勘弁して下さいよ。悪魔は、縦社会なんですよ。雑魚が上位悪魔を召喚するなんて無理ですよ!」

「えー? 梅ちゃんは、上位悪魔に知り合い居ないの?」

「あー、せやなあ? 上位悪魔なあ…、おったかなぁ? 上位ドラゴンなら1本知り合いがおるんやけど」

 梅ちゃんにも上位悪魔の知り合いは居ないらしい。

 ところで、ドラゴンって1本2本って数えるの? にょろっとした和風ドラゴンなら、それでいいのか?

「上位悪魔って、どれくらいのクラスが必要なの? っていうか、無理に移管しなくても解約でいいんだけど」

「悪魔の契約は死ぬまで解約出来ませんから。移管に応じて下さい。必要なのはー、そうですねー、ストラトドラゴンですからねぇ…。どうせ釣り合う悪魔なんて限られるんで、この際誰でもいいかも? 適当に騙しちゃえば?」

 悪魔を騙すとか、恐ろし過ぎるんだけど。


「じゃあ、その辺の悪魔をどついてみるか。報復に他の悪魔が来るかも知れん。その内、上位悪魔に辿り着くじゃろ? 特訓にもなるしさ」

「悪魔を討伐しても特訓にはならないんだけど。だいたい、その辺の悪魔って何処に居るのよ? あぁ、オモッチ?」

「ちょっと待つんだタマにゃん。このアンドロイドはオモッチの仮初の姿だ。これを破壊しても、アタシが修理代を請求するだけだよ」

「あぁ、そうかー。ところで、修理代ってどんくらいすんの?」

「フェラーリ1台分くらい」

「結構するんだなぁ」

「お主ら、ほんとにあほだのう? わらわがミヨを防御結界で包めばいいだけであろうが」


 マヌケも7つの大罪に含めるべきだろうか?

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