028. 失われた罪を求めて
「乙女であるべきか否か? そのような些事、汝にとって問題では無い」
ここは、悪魔と取引の出来る十字路、メタル喫茶クロスロード。
梅ちゃんとタマヨンが共同経営する喫茶店だ。
悪魔オモッチの新たな世を忍ぶ仮の姿、陰陽師型アンドロイドフォンがタマヨンの人生相談に乗っている。
陰陽師に扮したオモッチは喫茶店に常駐し、客に占いと人生相談を提供している。
代償として頂くのは魂ではなく日本円だが、お小遣い稼ぎが目的ではない。
ヒトの欲望を深層学習してAIを進化させるのだ。
なお、悪魔なのに陰陽師ってどういう事やねーん、などのツッコミをタマヨンはしない。タマヨンは、多様性に寛容だからだ。そうでなければ、五色龍や座敷童、異世界の元女神といった同居人とは暮らしていけない。何よりも、己自身が50過ぎのおっさんなのにガワは14歳女児という状態なのだから。
話が逸れたついでに語っておくと、タマヨンと梅ちゃんが共同経営する株式会社ダメガミは、DEIやSDGzには賛同していない。そんな流行物には興味が無い。主力事業である喫茶店の客単価や回転率が上がる効果があるのならばともかく。
話を戻そうー。
タマヨンは、悪魔オモッチに人生相談をしている。
「相談したいのは、そういう事じゃないよ。コンビニで、レジ袋要りますって言ってるのに、毎回レジ袋を付けてくれないから、どうすればいいか? って話なんだけど」
乙女問題はもうどうでもいい。性別変更の手続きしちゃうし。
弁護士への依頼料や医師の診断書発行手数料で、桜子からの借金がまた増えちゃう事の方が問題だわ。
レジ袋問題が些事だと言うならば、その通りだけどね。
どうにもオモッチは、チャットAIみたいに、たまに噛み合わない会話をする事があるよ。
「おいおい、マイブラザー。昔のお前は、そんなチキンじゃなかったぜ?」
「根本原因を解決しましょう。レジ袋を有料化した奴を暗殺すればいいんじゃないかしら?」
「エコバッグ持ってきゃええじゃろ。そんな事で、国家転覆罪のリスク背負っちゃうの? わやじゃのう」
タマヨンをチキン呼ばわりするのがアンで、過激な提案をするのがアズキ、唯一の良心回路がニャアだ。
「汝は大切な物を何処にやったのだ? 何故ソレは失われた? 取り戻す気は無いのか? それが問題だ」
オモッチはレジ袋問題を無視して、そんな話を続ける。
タマヨンの大切な物って何だ?
お金だろうか? 実質永遠の命を支えるためには、相応の資金が必要だ。
異世界貿易は順調に進捗しているが、未だに日本円に換金出来てはいない。しかし、いずれは形になるだろう。
それに、衣食住については、必要にして十分な質と量が供給される体制を確立して、当面の間は心配が無いのだ。お小遣いは、相変わらず月3千円だけども。
タマヨンの経済事情は失われたと言う程の問題は抱えていない。
ならば、一体何だ?
「マイブラザーが失くした大切な物……、ちんちんじゃねえか?」
アンは0歳幼児だ。意味を分かって言ってはいないだろう。
タマヨンも幼少期は、同じ様な単語を連呼したものだ。後に意味を知って愕然としたよ。
「う、うーん……、それは今更だな?」
今のタマヨンは14歳女児だから、もちろんちんちんは無い。物理的にも仮想的にも装備していない。桜子や前世妹と混浴しても、銭湯で女湯に入っても、ファントムちんちんはピクリとも疼く事が無い。中身は、おっさんの筈なのにだ。
もしかして、タマヨンが失った大切な物とは。
……色欲?
実質永遠の命を獲得したタマヨンには、種の保存という本能が無いのだと思う。
何故ならば、己の果たせなかった夢や事業を、次世代に託す必要が無いのだから。
だって、実質永遠の寿命を持っているからね。
しかし? 色欲とはその程度で消え失せるものだろうか?
或いは、憤怒。
アンが言った通り、昔のタマヨンはたかがレジ袋の事でも、いちいち怒っていた。実に迷惑極まりない老害だったのだ。
それが、レジ袋付けてね、2枚でじゅうぶんよ、で済ませる様になった。
それは、14歳女児という幼い容れ物を獲得したからでは無いのか?
7つの大罪基準で考えるならば、嫉妬も失われてしまった。
それは、タマヨンのツラが無駄に良いから? 14歳女児のタマヨンは、ツラだけは良いのだ。
ヒトは見た目が9割とさえ言われる。ツラが良ければ、それだけで社会的な勝利を確約されたも同然。他人に嫉妬する必要など無い。
しかし、本当にそうだろうか? 誰にだってコンプレックスはあるし、嫉妬のタネは尽きる事など無い筈だ。
強欲と怠惰、それに暴食ならば、身近に転がっている。
異世界貿易で一攫千金を目指す強欲、毎日飲んだくれて暮らす桜子という怠惰、梅ちゃん喫茶で3食昼寝とおやつを享受する暴食。
ああ、異世界にはギョニソという傲慢も居るね。自分だけが完璧で、他者はクズだと思い込んでる奴。
「あー、ちょっと割り込んでいいかい? ドルが急落してんだけどさ、ほんとに買い増していいのかい? オモッチ、あんたの預言を聞かせてくれ」
「うむ、問題無い。ドルはいずれ対円で160円を越える。10月になれば分かるであろう」
「そうかい? じゃあ今が仕込みのチャンスって事か。後さあ、トヨタ株なんだけどー」
タマヨンの人生相談は、オモッチのマスターである桜子に中断された。
「はいはい、そろそろモーニングサービスの時間やでー。たまには、ドラゴンはん達も、お給仕アンドロイド任せやのうて、リモートで接客してくれへんかー?」
「のじゃー!」
お給仕ロボは高度AIに依る自律行動を獲得し、お給仕アンドロイドへと昇格した。最近は、お給仕アンドロイドにホールスタッフ業務をお任せになっているが、すっぽこ娘達がリモートで操作するロボモードの方が、客の受けが良い。
すっぽこ娘達も、接客業務に従事するためタマヨンの元を離れた。
ひとりポツンと取り残されたタマヨンの元に、座敷童のアマテラスが、とてとてーっとやって来る。
以前は日本人形の様な装いであったアマテラスだが、メタル喫茶に住み着いた事で影響を受けたのか、黒ゴス衣装に身を包んでいる。
なお、衣装については桜子と前世妹が隣で衣料品店の営業を始めたので、売れ残りを格安で入手出来る。
むしろ、損失計上したいがために、売れそうも無い服ばかり仕入れている始末だ。
もちろん、年がら年中閉店セールをしている。
「すっぽこ、ぽっすん」
アマテラスがタマヨンのスカートを引っ張って、こっそりそう呟く。
お? これは、ちょっとこっち来いや、っていう意味のすっぽこ語だぞ?
すっぽこ語を習得しつつあるタマヨンには分かるんだよ。
一人称がタマヨンになりつつあるタマヨンは、アマテラスについて地下室へと行く。
一人称が揺らいでいるタマヨンを心配して、何か助言でもくれるのかも知れないな、なんて思いながら。
でも、そんなのんきな話では無かったー。
「おい、悪魔野郎が動き出したから、俺もそろそろ活動開始するぜ。まずは、お前に憤怒を返してやる」
梅ちゃん喫茶ビルの地下室は、異世界ゲートになっている。
今ふたりが居る地下倉庫は緩衝地帯であり、川崎市でも神聖カワサキ帝国でもない空間だ。ここでは、アマテラスは日本語で喋る事が出来るのだ。
「え? どういう事?」
「アンの野郎は、じっくり事を運ぶつもりだった様だがな、預言する悪魔があんな事言い出すって事は、危険な状態なのかも知れねえ」
「いや、さっぱり分からんのだけど?」
「いいからお前に憤怒を返すぜ。いずれ、アンからも返上されるはずだ」
アマテラスは一方的にそう宣言すると、すっと表情を変えた。
「ふぅ、これでわらわは本来の姿を取り戻したぞえ」
急に、アマテラスのキャラが変わった。まるで憑き物が落ちたみたいに。
「憤怒を俺に返したのか? 憤怒を返す? 何だそりゃ? 返すなら金を返せ」
これは一体どういう状況なんだろうか。
タマヨンが自覚出来る変化と言えば、一人称が俺に戻って口調が荒くなった事くらい。
いや、それは小さな事だが、大きな変化なのかも知れない。
チュウニの子供ならともかく、擦り切れた大人が唐突に振る舞いを変える事は無い。
「しばらくは反動で品の無いじじいタマヨンになるであろうな。タマヨンの魂は乙女だから、いずれ淑女に成れるよ。んん……、わらわも素のキャラを思い出せぬな。落ち着かぬでおじゃる……、いや、おじゃるは違ったか?」
何なのコレー? 何なのー!? なんじゃああこりゃああ!! 多様性にも限度があるだろう!?
ただまあ、タマヨンの魂が乙女だって話は、不思議と腑に落ちた。
「は? 自分探しの旅に出る? 急に憤怒を取り戻して淑女になったと思ったら、何を言い出すの? ああ、淑女だからなのね」
憤怒が淑女の必須構成要素なのだろうか? そして、淑女とは自分探しの旅に出る生き物なのだろうか?
自分のキャラが揺らいでいるから、自分探しの旅に出たいと言ったら、アズキにやや罵倒された。確かに自分探しの旅とか、かなりアレだわ。インド辺りに自分が落ちていたりはしないのだから。
自分という存在は、周囲の第三者によって定義される。観測者による認識、その情報を共有交換する共同作業の成果物、それが自分だ。これは、社会心理学あるいは量子力学の基礎である。
ああ、そうか。
そういう意味でも自身を認識出来るタマヨンは、不可視の悪魔であるすっぽこ娘達には必須の資源なのか。
「親分が、また小難しい事を考えておるのう」
「いいんじゃない? アン達のお兄ちゃんは、こんなんで」
「あら? アンまで憤怒をタマヨンに返しちゃったのかしら?」
「うん。イチゴ大福からイチゴを抜いた感じですっきりだよ」
「意味不明な比喩表現は相変わらずなのね……」
「そこは、アンと親分で同期したままなんじゃのう」
「それより、お兄ちゃんは、朝ごはん食べたの?」
ぼんやりと脳内ひとり会議をしている間に、モーニングサービスの時間が終わっていた。朝ごはんを食べそびれてしまったぞ。
ところで、お兄ちゃんってのはどうなの? そういうの病気だって言って無かった? 泌尿器科行く? 不可視属性があるし社会保険にも未加入だから無理だけど。
ハードボイルドチンピラだったアンが、見た目の通りの幼女キャラになってしまった。
よく分からない事件が進行中だよ。
「朝ごはんはギョニソ喫茶で食べるよ。ヒヒイロカネの始末やらしたいし」
自分探しはともかく、行方不明の嫉妬と色欲の捜索もしたい。
タマヨンをめぐる冒険が始まるー。
「嫉妬と色欲だと? そんなものは我が店のメニューには無いな」
神聖カワサキ帝国のギョニソ喫茶でも、モーニングサービスの時間は終わっていた。時差が1万年と9ヶ月もあるけど、時刻は同じなんだったわ。
もっとも、この店にはコーヒーとラーメンしか無いんだけど。
ここ、ラーメン屋なんじゃ?
「色欲か……。懐かしい響きだね……。遠く時の輪が砕けてしまった場所に、置き去りになっているよ……」
女宇宙海賊のミヨちゃんにとっても色欲は失われたものらしい。
性別の境界を反復横跳びしちゃったからかなぁ?
「なあなあ、お前ら今はどっちなの? ちんちんあるの?」
アンが、無邪気な幼女ヅラして、そんな事を聞く。
ちんちんって言い過ぎじゃない?
まさか、もうそういうのに興味のあるお年頃なのだろうか? 0歳児なのに。
そういえば、拾った初日に風呂を覗かれたなあ。おっさんタマヨンのちんちん見られちゃってる。
何故、アンがふたりのちんちんの有無を気にしたのかと言えばー。
「おい、なんでワレがここにおるんじゃ?」
「うるさいな……。僕は大精霊なんだぞ。自由なんだ」
「ギョニソ達のもとに、出戻って来ちゃったのね」
アオイがギョニソ喫茶に居るからだ。
相変わらず、目をじっとり半開きにしてダルそうだ。
アオイが飼育係に付与する精霊の加護は、美肌効果を付与し性別の境界を奪い、ついでに寿命を千年程伸ばして魔法使いにする。
ミヨちゃんは相変わらず女宇宙海賊だけど、ギョニソは神経質そうなひっつめ髪の眼鏡女子っぽくなってる。試験管でラーメンのスープ作ってそう。実際、そうなんだけど。
ふたりは精霊の加護を喰らって、ちんちんレスになってるぽい。
「染色体構造はXXだな。俺だけでなく、ミヨも同じだ。内務省特別調査室専属の医師に診断して貰ったから間違いない」
「へぇ……、内務省の設定こっちの世界でも有効なんだ。あ、その病院紹介してよ。タマヨンも診断して欲しい」
「設定言うな。タマヨンは明らかにXXだろう? どうしたと言うのだ」
「いや、そうなんだけどさ。性別変更の手続きするのに、診断書が必要なんだよ。こっちの世界で事前検証しときたい。タマヨンは生殖機能が無いから、性別がどっちになるのか分かんないんだよね」
「私達も診て貰った方がいいわね。特にアンの脳が心配だし。この世界ならば、不可視属性が解除されているから、医師の診察にもかかれるもの」
「そじゃーのう。ワシらも、この世界でなら住民登録出来るしのう」
「マイナンバーカード作ろうよ! あと、運転免許証! アンも欲しい」
「そういう事なら、わららも同行しよう。健康診断なぞ、ついぞ受けた事が無いわ」
今日は、アマテラスも一緒だ。
あれだけギョニソに会うのを嫌がっていたというのに。
アンコの恨みは忘れてしまったのだろうか?
それは、憤怒を俺に返したから?
「我が国には国民皆保険制度が無いので、保険証はありませんね。運転免許証は物流専門の国家公務員にしか発行されません。貴族であるタマヨン公爵様でも無理です」
いきなり情報量が多いんだけど。神聖カワサキ帝国のアンコ担当官僚に依ると、そういう事だ。
すべては、この国の国教である宗教的戒律に由来する。曰くー。
『働かざる者は食えないブタさん』
『バカ共に車を与えるな』
この戒律、この世界の女神だった梅ちゃんが授けたのかな? 言い草がヒドイ。
そんな戒律があるが故に、国民皆保険制度だけでなく年金制度も無いし、生活保護も無い。
この国の民は、個人の責任で資産を運用し、不測の事態や老後に備える。
その一方で自力救済が認められているので、不埒な隣人を誅する事が出来る。
集合住宅でドンドコ騒ぐ一家はぶん殴って黙らせていいし、車道を逆走する自転車はガードレールと車体の間に挟んで擦り下ろしてもいい。
もっとも、自転車すら無免許では乗る資格すら無い。運転免許の資格が厳格に管理されているお陰で渋滞なんて無縁だし、交通事故だって滅多に起きない。
この国には、悪人は居ないと聞いたけども。
「悪人が居ない世界は、修羅の世界だったかー、こわー……」
修羅の世界ではあるが、性善説の世界でもある。
タマヨン一家の面々は、審査も無しに住民登録され、マイナンバーカードも発行された。
しかも、公爵家という貴族待遇だ。
といっても、この国では貴族の義務はあっても、特殊な権利は無い。貴族は庶民に奉仕する立場だから、逆封建社会だと言えよう。庶民に対して理不尽な振る舞いをすれば、もちろん誅される。
宗教的戒律に反しなければ、細かい事を気にしなくてもいい社会って事だ。
タマヨンは、そう理解した。戒律に理不尽なものは無いしね。
ただし、嫉妬や色欲は国家全体で、存在しないかもなあ……。
ヒヒイロカネは買い取って貰えなかった。相場が急変する程の量だったからだ。ただし、中央銀行に預ける事で融資を受ける事が出来た。
融資された資金で異世界貿易を開拓していけば、いつか日本円も稼げるだろう。
日本円が稼げなくても、神聖カワサキ帝国での生活費には困る心配が無い。
しかし、ここに永住出来るのかと言えば、そうでもないー。
「タマヨンさんには妊娠出産は無理ですね。子宮と卵巣が未成熟なままです。3歳児未満の状態なんですよ。それ以外に、問題はありませんよ。実に健康な体です。骨格と筋力は、成人男性の平均を軽く上回ってますね。ちょっとコワいわー」
健康診断をしてくれた医師は、デリケートな問題でもオブラートゼロで語ってくれた。
タマヨン個人としては、むしろ助かる。
血尿に怯えなくていい体なのだと分かっただけでも十分だ。
「えー、幼児達なんですけど。謎の器官がいくつかありますねえ? まあ、怪人ミツバチ幼女様だから、当然なんでしょうけど。学会に発表してもいいですかね?」
「いいわけないでしょ。私達を見世物にしたり、研究対象にするのはダメよ」
「あ、はい。そうですよねー」
「じゃが、主治医として世話になるのじゃ。よろしく頼むぞ」
「はっ! ありがたき幸せでございます!」
「ははーっ!」
「なんぞこいつら。ウケる」
無駄にエラそうなアズキとニャア。
幼女達に平伏す医師と看護師達。
その様を見て、アマテラスが笑ってる様に、いかれた絵面ではあるが、すっぽこ娘達が、この世界では他者から認識されるだけでなく、崇拝の対象にすらなっている。
これも宗教の影響なのだろうか?
怪人ミツバチ幼女って何なの……?
聖書や神話を読めば分かるのかな?
なお、アンは医者が苦手なのか、ずっと大人しくしていた。
こういうところまで、使い魔のタマヨンと同じなんだね。
「医者が言ってた謎の器官って何? 魔力袋ってやつ?」
謎の器官が気になったので、当人達に聞いてみた。
「おそらくは、それね。そういえば、タマヨンには魔力袋が無いのね」
「ニンゲンの体と同じようじゃのう」
「マイブラザーのは、仮想魔力袋なのかもよ?」
アンのお兄ちゃん呼びは、これまでのマイブラザーに戻して貰った。
意味は変わってないはずなんだけどね。
決定的な違いを感じるのは、日本語の妙だ。
「どのみち、この世界は魔導粒子が枯渇してんでしょ? 魔力袋の有無に関係なく、魔法使えないんじゃないの?」
「いや、それがそうとも限らぬ。わららも気になるところだな」
おや? アマテラスがそう言うならば、ちょっと試してみようか?
「わらぁ」
破壊魔法を試すのは危険なので、生活魔法を試してみる。
「いや、前も言った気がするが、使い慣れた言語でやってみよ」
「え? ああ、そういう事? じゃあ、水くれ」
生活魔法のコマンドを日本語にして実行してみたところー。
「うぉ! 何するんじゃ!?」
ニャアのパンツが、ぐっしょりと濡れた。おもらししたみたいに。
「あー……、魔法が使えぬのならまだ良かったのに。魔力暴走には気を付けるのだぞ」
「これは不味いわね……」
「また血尿が出るまで特訓かな? 大変だね、お兄ちゃん」
だから、マイブラザーだと……。それはもうどうでもいいか。
ううぅん……、魔法が使えればいいのかって言えば、そうじゃないんだよなあ。
核ミサイルの発射ボタンを預けるからね! って言われてうれしい?
アマテラスが言っていた危険な状態って、こういう事なの?
神聖カワサキ帝国になら永住出来るかもと思ったんだけどなぁ。
タマヨンをめぐる冒険は果てしなく続くのだった。




