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◆3 かつては私の付人、そして今は私の主人となった、金髪碧眼の聖女見習い

 前世の私、大聖女イニティウムの付人であり、聖女見習いでもあったオリガは、高位貴族家の令嬢であった。

 しかも我が帝国の筆頭貴族家ゴルトムント公爵家の三女である。

 長女マルチフは、このネビール帝国の皇太子妃となっており、次女リリアは隣国レベア王国の王弟妃だ。

 そして三女のオリガーー二人の姉と同様、美しい金髪と碧色の瞳持つ彼女は、早々に帝都中央修道院に放り込まれた修道女だった。


 ちなみに前世において、十一年後の神暦八三五年の五月に両親が亡くなってしまい、私はお葬式に出席するために領国へ帰ったところ、教会の司教様と一緒に悪神による襲撃を受けた。

 その際、私の聖なる力が発現し、私は大聖女イニティウムとして覚醒した。

 それ以来、修道院で生活することになり、その際の部屋割りで同室となったのがオリガ・ゴルトムントであった。


 オリガは聖女見習いながら、何も出来なかった。

 幼い頃から聖女候補と期待され続けていたのに、どうしようもないくらいポンコツだったのだ。

 結局、私、大聖女イニティウムが、悪神の襲来に対抗しつつ、オリガの面倒を見る羽目になった。

 彼女、オリガは幼少時から修道院に入れられたために貴族の礼儀作法に疎(うと)く、それでいて修道院でも筆頭貴族家の出であることを良いことに修練をサボりまくり、その結果、平民女同然の無作法な女となってしまったのだ。


 私、大聖女イニティウムがオリガの教育係となった結果、前世の私はオリガに懐かれ、「聖女様」だの、「お姉様」だのと呼ばれるようになった。


 だが、そんな彼女との付き合いは嫌なものではなかった。

 彼女の気性がサッパリしていて、明るいからだ。

 悪神の襲来が相次ぎ、とかく気分が塞ぎ込むような酷い事件が多発していたので、彼女の存在は癒しだった。

 オリガと会話をするだけで、大いに気が休まったものだ。


 オリガとは共に行動することが多かったが、その結果、彼女は案に反して便利な存在となっていった。

 神々の来襲に対抗するため、私は大聖女として騎士団や魔法師団と連携を密にすることになるのだが、その際にオリガは欠かすことが出来ない存在となった。

 なにせ彼女は筆頭貴族家であるゴルトムント公爵家のご令嬢だったし、フェルトン皇太子の義妹にあたる。

 皇宮に出入りするのもフリーパス状態だった。

 その縁故に、前世の私、イニティウムも預かることができた。


 思い返してもれば、前世でも、すんなりと私に「大聖女」としての権限が与えられたわけではなかった。

 事件現場で突然、発現した聖女に対する信頼は薄く、私が聖女になって初めの一、二年は、聖女としてよりも、滅びたワルトチェル伯爵家の忘形見として遇されていたように思う。

 おかげで作戦の決定権を持つお偉方に面通しするだけでえらく手間取った。

 私の実家が悪神の一柱に潰されてから二年を経て、数多くの領土が侵され、幾つもの高位貴族家の領土と都市が潰された。

 それからようやく、私は正真正銘の大聖女として認識されるようになり、オリガのコネなくして顔パスとなり、皇宮の中庭にある教会が出仕先となった。

 ところがその頃には、三柱の神々が同時に顕現して暴れ廻っており、もはや殆ど打つ手がなくなっていた。


 前世での失敗の轍を踏むわけにはいかない。

 滅びが十五年後にやって来ることを、今の私は知っているのだ。


 だが、問題があった。

 今世の私フィーニスは農村娘という低い身分なだけでなく、魔力がまったくなかったのだ。

 高位貴族ほど所有する魔力量が多く、その一方で、下層民は魔力量が極端に乏しいとは聞いていた。

 その事実が改めて証明された格好だった。

 幾ら時間を遡って転生してきても、今の私では「聖女」どころか、「魔法使い」にすらなれない。


(どうすれば良いの!?)


 平民娘のフィーニスは頭を抱えてしまった。

 読んでくださって、ありがとうございます。

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