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以下はそのあたりを想像し、少しだけ物語してみたいと思います。
「大使殿、一度のみならずもはやこれで三度目、風に恵まれぬは天が今は向かうべきでないと申しているのでしょう、お上に遣唐使の中止を上奏されるべきと思いますが……」
小野篁は遣唐大使の藤原常嗣にそう進言したのだが……
「何を馬鹿なことを申す!神仏のご加護を信ずれば必ず任務は遂げられるのだ!」
「……坊主の祈祷など充てになるものか……」
思わずつぶやいた篁に常嗣は掴みかかる。
「貴様っ!遣唐使の大任を軽んじるばかりか仏罰をも恐れぬのか!」
「何を言うかっ!部下の命のほうが大事だ!」
「な、なんだとっ!」
「ふんっ!やってられるか!」
そう言い放つと顔を真っ赤にして怒る常嗣を後目に退出していった。
……そしてこのトラブル以来、篁は病と称して顔出すことは無くなったのだ。




